NHK新人落語大賞は観覧を申し込んだのだが、しっかり外れた。
カメラに映る、空席の多いこと。
2名までは入れるとしてあるので、当然こうなる。
その前の、ルネこだいらでの日本の話芸収録「東京落語会」には当たったのだった。
これも2名まで可という方式なので、空席は多かった。まあ、こんなもんだろう。
空いてるなら座らせろと言いたい気持ちもわかるが、中継・収録を維持することが絶対優先事項なわけで。
ちなみに12月9日にも町田で日本の話芸の収録があるが、これには申し込まなかった。もう締め切ってます。
さて、ルネこだいらで収録された3席は、すべて日本の話芸で放映された。
放映後の感想などちょっと。
すでにこの会の、リアルな様子は記した。トリネタ3連発が思いのほかしんどかったということも。
町田に応募していない理由もこれがひとつ。
トップバッター、桃月庵白酒師の「厩火事」は、きっちり25分で降りていたのでカット部分はない(多少はあるかも)。
時間が余っているのでおしまいにも再度登場。
たぶん、ご本人が時間をうっかりしたのだと思うのだけど。マクラで調整すればよかったわけなので。
ただしご本人が高座の外で語る、雲助師から稽古をつけてもらったエピソードは面白い。雲助師が本域でなく、5割減の稽古をつける様子であるとか。
この一席に関してはもちろん、現場で聴いた感想と本放送との間にギャップはない。
浅草演芸ホールで二度、浅草お茶の間寄席の収録に出くわしたのでわかるが、その感覚とおおむね一緒。
寿輔師みたいにしくじり全カットで、やり直した部分だけ流れたものもあるけど。
この一席はかなりいいと思う。
改めて聴くと、マクラもなかなか遠慮がない。白酒師らしい。
本編のクスグリでも、「あたし殺しちゃおうかと思って」「殺しちゃえ殺しちゃえ」なんてやり取りも流す。
毒舌家の描く、面倒なお咲さん、本当に面倒なのに実に魅力的。
その次が、三遊亭竜楽師の「親子酒」。
親子酒本編は短いので、マクラの国際比較こそ肝であるといえる。
タイムキーパーを勝手にしていた私の計測では35分の高座だったので、どこかをカットしているはずである。どこかはわからない。
3年振りに聴いた竜楽師、現場ではその高座、非常に盛り上がっていたのである。
イタリア人はこう、フランス人はこう、と我々日本人にもステレオタイプなイメージはあるわけだが、竜楽師、そのイメージを利用しつつ実際はこうなんだという驚きをぶつけてくる。
イタリア人は酒よりもおしゃべりが好きなんだとか。
なのだが、本放送に収まったのを見たら、なんだろう。あの場での高揚がまるで感じられないのだった。
いや、放送だけ観て、竜楽って面白い噺家だなと思った方の感想を否定するつもりはない。
だが、本当はもっと盛り上がっていたのだ。
ここから、堀井憲一郎氏の言うような、テレビの中には落語はないという結論を導いてもいい。
私の日ごろの見解は違うのだが、堀井氏の主張を否定する気は別にない。現場が一番いいのは確かでしょう。
だが、現に白酒師の一席、ほぼ変わらないことを先に見ているのである。いったいなにが違うのか?
恐らく、カットされた部分に、客に火をつけた部分があったのだ。
放送に乗った、「各国語でやる小噺」こそ、カットせねばならなかったのだ、きっと。
ここが一番ウケたのだろう。でも、肝じゃなかったのだ。
そして最後が柳家権太楼師の「へっつい幽霊」。
これにうんざりしてしまったその感想もすでに書いた。へっつい幽霊自体が苦手らしいと今さらながらに気づいたということも。
その後、現場でもって雷門小助六師からへっつい幽霊を聴きなおし、感激したことも記した。
だが、夢グループのマクラもカットし(予定通り)、綺麗にまとまった放送、意外なぐらいよくてまたしても驚いたのだった。
いや、このことはすでに、現場に行った際の記事でもって予言はしていた。
だが、驚いた。予言以上にしっかりした30分弱の高座だったので。
へっつい幽霊に内在するもたつきは多少あるにしても、現場で実際に感じたもたつきはまるでない。
若旦那が花魁との一夜を思い出し、「つねつねつね」なんてやってるのも、改めて観ると実に効果的。
この一席がやがて、DVDになって発売されるかもしれない。
それは偽物? そうじゃないだろう。
落語は現場にしかないわけじゃない。どうやらこれもまた事実。
それどころか、編集次第で現場をしのぐこともあるのだ。
竜楽師については、少々特殊なマクラであるがゆえにハサミを入れ損ねたのかもしれない。あるいは他に理由があるものか。
カラーで蘇った志ん生のネタは私も書いた。
ところで、あの高座だって、多少はカットされていたのかもしれない。今となっては絶対にわかるまいが。
それでも、これが歴史に残って、いつまでも語り継がれるのである。それでいいのだ。
これを自覚的にやったのが三遊亭圓生で、観客のいないスタジオ録音でもって、切り詰めた圓生百席を残したのだった。これまた、ひとつの遺産。
先日ダウンタウンDXで、松ちゃんが昔収録中、あまりにもしょーもないボケをかまして場が凍り付いたことを暴露されていた。
もちろん、そんなVTRは残しているはずもない。たまたまエピソードとして語られたものの、本来はこの世に存在していないのと同じなのだった。