2019年正月のTV落語(柳家喬太郎「たいこ腹」など)

珍しく3日の日から黒門亭に行ったりしたが、正月はTVの落語をチェックするのが私の毎年の習慣である。
TBS日本の話芸は計3日間。だが今年の放送分は、すべて放映済み(一部CS)で録画済みだった。
昨年と違い、正月の番組についてはあまり書くことがない。NHKの東西笑いの殿堂だけちょっと。

生放送当日、黒門亭で整理券をもらった後で鈴本演芸場の前に行ったら、TV機材とクルーが多数集まっていたのは面白かった。
このブログでは、爆笑問題太田光の裏口入学事件を取り上げた。
立証されていない事件につき、一方的にこれを事実と捉えたうえで、どうこう言うのはどう考えても公平ではない。
そうなのだが、この報道が私自身に与えたインパクトは非常に大きかった。もともと好意を持っていた爆笑問題だが、報道以降、もう笑えなくなるだろうという予感は的中した。
もう、NHKの中継で悪ふざけをしている太田光について、一切の感情移入ができない。
昨年までだったら笑ったのだが、もうネタを視る角度が違ってしまってダメ。漫才も含めなんだか痛々しい。
もともと彼らが嫌いだという人の気持ちがよくわかってしまう。
来年は、あのポジションにナイツが立っているのではないかな。ナイツの末広亭からの中継、相変わらず面白い。
ナイツは正月引っ張りだこで今年も絶好調ですね。2日のテレ東でも活躍していた。
常に少しずつ変化を続けているところが、他の漫才師と違う。だから毎回、客に感動を与え続けられるし、飽きられることがない。
漫才協会所属の他の漫才師でも、とてもこうはできない。

スタジオで落語を披露する柳家喬太郎師は、昨年は「午後の保健室」で、今年は古典の「たいこ腹」。
間違ってタマでなくポチを出してしまっていたが、ちゃんとギャグにつなげるところはさすがである。
NHKドラマ「昭和元禄落語心中」の監修を務めた師が、昨年に続いて中継に出るのは当然だろう。
ところで、師の爆笑たいこ腹には、若旦那が飼い猫のタマの頭に鍼を刺し、その後タマがパタッと倒れるシーンがある。
このブラックなネタに、公開生放送の客、明らかに引いてた。
私も以前からこの部分、実はかなり気になってたのである。落語って難しい。なまじ、ニャニャニャニャ言ってるキョン師のタマ、可愛いだけに。
客が引いたということは、噺に入り込めなくなったということ。つまり失敗なのだ。
TVでギリギリを攻めるのは立派だし、引かれてもちゃんと取り返しているけども。
代案を考えてみた。鍼を刺されたタマがいきなり「ニャッ!」と叫んで二本の足で立ち上がり、瞳に知性を宿して若旦那を一瞥し、立ち去っていくなんてどうでしょう。
若旦那「利いたね~」。
ところでクレジットには「太鼓腹」と書いてあったけど、この表記は見たことない。「たいこ腹」か「幇間腹」だと思うけど。まあいい。
幇間は「たいこ」とは読まないという説もあるので、「たいこ腹」がいいかな。

高座でマイクボックスを腰から落としてしまい、それをアドリブのギャグにする融通無碍な喬太郎師匠の高座は、やはり素晴らしいものであった。
鍼を打たせるために腹を出す一八になり、自然上を向くので、「NHKの天井ってこうなってるんだ」と描写する見事なメタギャグ。
血だらけになってる一八に悲壮感がかけらもない点見事で、だからこそタマのギャグだけなんとかならないものか。

(追記:タマの扱いのアンサーです。柳家喬太郎「たいこ腹」が変わった

ところで、NHK新人落語大賞枠がなかったけど一体どうしたのかな? 昨年の優勝者、桂三度さんが忙しくて断った?
裏かぶりもしてないし、全国ネットのTVを普通断らないだろうから、なにか裏事情がある。
漫才のほうの大賞枠は生きていたから、来年は落語枠も復活すると思うが。

嬉しかったのは、松竹芸能枠に落語が復活していたこと。新装オープンの心斎橋角座から、笑福亭松喬師が一席務めた。
東京から眺めていると、吉本枠に太刀打ちできる松竹の芸人って、むしろ落語だけじゃないかと思うのだがどうでしょう。
落語協会(鈴本)や芸協(末広亭)で落語を披露する人は毎回違うが、吉本枠はいつも桂文珍師。今年はスタジオから。
文珍師に文句はないけども、吉本枠なら笑福亭仁智師が聴きたかった。
上方落語協会会長に就任した仁智師、NHK日本の話芸などで流れる高座しか聴いたことがないけども、以前から非常に惹かれる人である。
落語の設定は完全に現代のコントなのに、古典落語の香りも漂う不思議な芸。当代桂文枝師の落語には感じない要素だ。
まあ、出てない人について触れても仕方ない。
ところで昨年のように、円楽師や米團治師等、寄席の枠からこぼれてしまう噺家をスタジオで拾っていなくてやや残念。まあ、志らく師出されても嫌だけど。

落語じゃないけど、弱視芸人の濱田祐太郎を初めて視た。
先日、「落語と人権」と題していろいろ書いてみたところでもあり、本物の障害者が演ずる話芸はとても新鮮でした。
「迷ったら笑ってくれ」という発言はすばらしい。
ところで、この人に爆笑太田が、「使いもしねえのに杖持ってるんじゃねえ!」と突っ込んでいた。
これ、かなり勇気ある行動で、障害をセールスポイントにする芸人にとっては大変ありがたいこと。
だが、なにしろ太田氏のネタ自体にもう笑えなくなってしまっているので、一周半廻って、改めて引いてしまった。勇気だけではどうにもならないこともある。
太田が何を言っても、決してウケてやらんぞと決意しているわけでは別にない。

ちなみに2日のテレ東で、昨年と同じく笑点漫談を掛けていたのが林家三平師。
あれ、と思った。ちょっと上手くなってましたね。高座に上がっている自分自身を、袖から見られるようになったみたいだ。
好きにはなれないけども。

作成者: でっち定吉

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