アニメ「昭和元禄落語心中」の落語(助六再び篇)/第六話

先日黒門亭で柳家小ゑん師匠を聴いてきた。
小ゑん師匠、マクラで、「昭和元禄落語心中」についても触れていた。好意的な扱いではあるのだけど、アラがいろいろ気になると。
ツイッターでつぶやいていた内容に加えて、いろいろ語っていらした。

  • 「時そば」みたいな難しい噺を、初高座でやったら叱られる。
  • 「時そば」の勘定の仕草が変。手を下に向けたらいけない。上に向けて、1枚ずつ出していかないと。
  • 扇子の真ん中を持ってそばをたぐっている。
  • 「錦の袈裟」「反魂香」「居残り佐平次」はみなツく。花魁の噺だから。
  • 歌舞伎座親子会のプログラム、演者でなくて演目を上に書くべき。

「訊けばいいのにねー。監修者のしん平さんがいるんだから。しん平さんに、『あれどうなの』と訊いたら、『ダメなんだよ。絵が先に上がってきちゃって直せないんだ』とのことでした」
「八雲は圓生、先代助六は談志ですね」

ところで、私もこの「昭和元禄落語心中」の雰囲気が好きだが、アラはやはり気にはなる。
今回第六話は、ちょっとアラが目立ったかな。物語自体を壊しかねない程度のアラはご勘弁願いたい。

八雲師匠、亡くならなかったのですね。亡くなる前提で前回、高座を降りて亡くなった噺家に触れてしまった。すみません。

居残り佐平次

八雲師匠が救急車で運ばれる中、高座を務めあげる助六。
なるほど、誰のために落語をやっているのか、これまでにも散々伏線が敷いてある。どんな状況でも、待っている客のため、当然に落語をするのである。
唄い調子の見事な高座。
佐平次の芝居がかりの部分など、こんな様子を高座で聴けたら幸せですね。
これ、ネタおろしなんだよな。
ここがどうも腑に落ちない。歌舞伎座でおろすためには、どこかで事前に数回掛けておくものだろうに。

「おこわにかけられた」「旦那の頭が胡麻塩で」というサゲはあり得ないだろう。
圓生の頃でも、意味がわからないからあらかじめマクラで仕込んでいるのである。
すでに平成に入った時代に、仕込みなくこのサゲは振れない。
それどころか、アニメを視る初心者のファンにも説明がない。

「居残り佐平次」は、第一シーズン第九話で先代が掛けている。
ちょっと見直してみた。
先代、出囃子が「かんかんのう」だ。そうか、だから当代も受け継いでいるのだ。
先代の高座の描写は短い。会長に逆らって教わっていない噺を掛ける、先代の反骨ぶりを描くためなので。
当代は、師匠とも先代とも違う高座を務めた様子をたっぷり描写している。

(2022/4/5追記)

「おこわにかけられた」があり得ないと書きましたが、柳家喬太郎師はこのままやっています
ただ、サゲ間際にかろうじてわかるよう工夫は入れていました。

第七話に続く

作成者: でっち定吉

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