あかね噺アニメの第4席。現場のレビューをしてたので出すのが遅くなりました。
あかねちゃんは1週間居酒屋バイトをして気働きを覚える(いい気なもんだ)。
気働きを覚えるなんて簡単だ、という話にするとさすがに座りが悪い。
どんな事象からでも、センスのある人ならマスターできるという理解にすれば、まあいいのでは。
老人ホームの慰問に出向く享二アニさんとあかね。
あかねは高座をよく見て、ひとりひとりと接点を持つことを目指す。
実際の噺家のスタイルも、いろいろある。
- どんなお客もまんべんなく見回す(視線をそらさない)
- お客をじっと見ているようで、実はお客のひたいを見ている(目を合わせるのが怖い、または目を合わせるのを失礼に感じる)
- 正面一か所を向いて微動だにしない
- ぼんやりと一点を見ている
近眼なのに、裸眼で出てくる噺家もよくいる。こういう人は、視覚から得られる客の反応を気にしないでやるわけだ。
最近増えたのが、私が萬橘方式と呼んでいるやり方。
高座でメガネを掛け、マクラで客の反応をすみずみまで叩っ込む。しかる後にメガネを外して本編に入る。
客の反応は知りたいのだが、古典落語に入るとメガネが客の没入を妨げることもあるという折衷案。
ちなみに三遊亭萬橘師が始めたスタイルと私は思っているのだが、芸協の若手がよく真似ている印象。
客の顔をひとりひとり眺められる人は、確かにだいぶ印象が上に向く。
ただ最近、もしかしたらそれが唯一の能力じゃないかとちょっと評価に下ブレを生じ出した人もいたりなんかして。
逆に微動だにしない人は、ベテランみたいな綺麗なスタイルであればそれでよし。
そうでないなら、微動だにしないこと自体がひとつのギャグになってないと、ややつらいと思う。
あかねちゃんの出囃子は、「前座の上がり」。実際に前座が上がるときの曲である。
持ち時間15分は、やや長め。
子ほめは中身の詰まった噺だけども、本編だけで15分はちょっとキツイ(噺が早く終わっちゃう)な。
寄席では10分強で前座噺をする。落語会に連れていかれると、師匠から「長くやれ」と命じられることもある。
寄席では自分の身の上話はご法度。享二アニさんも、打ち上げで「気にする師匠もいるから」と語っている。
となると、15分やるためにはマクラ(自分の話ではなくて、古典落語に付属した小噺)を振らないと、間が持たない。
だが子ほめという噺、そんなに付属の小噺がない。振るとなると「世辞愛嬌」なのだけど、この方面の小噺は少ない。
子ほめは寄席で頻繁に聴く噺だが、この本編に入る前に小噺聴いたのは、権助小噺の「お山は火事だんべ」ぐらいである。
この小噺自体はまれにかかるのだが、子ほめの前に振られたので組み合わせに結構びっくりした。なるほど、世辞愛嬌の小噺ではある。
あかねちゃんが、どういう想定で15分乗り切ろうとしていたかはわからない。
ともかく女子高生だと挨拶したら、お客のお婆さんが孫と同じだよとつぶやいている。
この声、エンディングロールで気づいたが、秋に抜擢で真打になる春風亭一花さん。前回出ていた旦那(金原亭馬好)に次いでのちょい役。
確かに、一花さんの作った声だったので笑った。
子ほめは、前座がやらなければ二ツ目・真打でもやることがある名作。
八っつぁんがタダの酒飲ませろとやってくれば子ほめだ。ちゃんと挨拶して上がってくれば道灌とか、つるなど。
柳家さん喬、五街道雲助といった超ベテランも、先に出てなければ子ほめをたまに出している。
演者が、お客さんに好きになってもらわないと始まらないのはその通り。
語りのテンポを合わせるというのもその通り。享二アニさんが驚いてるとおり、結構高度な技術。
子ほめのサゲは、「どう見ても半分でございます」と、「どう見てもタダでございます」とがある。今回は前者。
享二アニさんは、真面目過ぎて面白いという人。
こういう人は、いないことはない。ただ、私の見る限り非常に少ない。
なぜか。
真面目な高座を、演者自身が面白いと思えない限り、客にとっては面白くもなんともないからだ。
これは高座で遊ぶ能力であり、実のところ大変高度なものだ。
享二アニさんは、マジメな自分のもたらす効果をよく知っているから偉いのである。
マジメなだけの人は、自分の高座を楽しむ余裕もない。
この貴重な路線で、マジメっぽさに私が期待してるのは、芸術協会の新二ツ目、桂歌近さんですね(前座の頃はれん児)。
三方一両損は、大岡政談ものの中では、まあまあ聴くほうだと思う。とはいえ寄席ではなかなか掛からないだろう。
珍品感は特にない噺。落語と無関係にこのエピソードを知ってる人も多いはず。
落語会の、仲入り前など向いてるのでは。
カリカチュアされた江戸っ子が楽しい噺。
サゲは出してなかったが、「おおかあ食わねえ」「たった越前」というダジャレです。
説明が面倒だから出さなかったのだろう。説明しないとわからない割に、面白いわけではなく。
前座の子ほめと、三方一両損だけでは、実際の老人ホーム慰問は多分終われない。
享二アニさんの高座は長くても25分ぐらいと思うから、合わせて40分にしかなっていない。
描かれていないが、たぶんもう一席、アニさんが人情噺でもやってると思う。
エンディングのあかね小噺で、「真打の師匠は○○師匠と呼ばないと失礼に当たる場合がある」と享二アニさん。
「場合がある」とは、失礼に当たらない場合もあるわけだ。
ずっとアニさんと呼んでいた先輩が真打に昇進した場合は、引き続きアニさんと呼んでもいいとされる。
ここで師匠と呼ぶと、距離を感じたりするみたい。
アニさんと呼んだことがなければ師匠と呼び始める以外にない。
ではまた。