南阿佐ヶ谷すずらん通り落語会(下・古今亭志ん橋「居残り佐平次」)

仲入り休憩を挟んで古今亭志ん橋師の長講1席。うろ覚えだが、50分ぐらいかな。

この会場では、三人会と、扇白さんの独演会を交互にやっています。
三人会のときは、私が毎回トリで。扇白さんは独演会で大ネタやりますから。
で、花いちアニさんは長い噺できないんで。

いいなあ、こういういじり方。
長い噺できないのは本当かもしれない。寄席のトリ2回取っておいてそんなことじゃいけないけど。
吉原を振っておいて、私も廓の噺をします。吉原じゃないんですけど。
と振って、居残り佐平次。

  1. 扇白師が、志ん橋アニさんが居残り佐平次をやると聴いてあえて品川心中を先に出した(シャレ)
  2. 先に品川心中が出たが、品川の廓噺重ねてやれ(シャレ)

どっちだかわからないが、いずれにしてもシャレではある。
しかし品川連発とは。
品川心中の後「付き馬」とか「突落し」とかだったら、それほど被った感はないけれども。
まあ、私はどっちも極めて好きな噺なのです。

強飯と美人局を振る。
若旦那が美人局に引っかかって、高い強飯を食わされたという川柳。
これ、サゲの仕込みだった。居残り佐平次のサゲ(おこわにかけた)はわからないのだけど、こんなところから仕込むとは。
美人局も関係なさそうだが、「詐欺」ということだ。

佐平次が、弟分3人集めての相談から始まる。長い長いバージョンだ。
吉原も飽きた。ひとつ南に繰り出そう。
品川かい。
5円で飲み食いさせてやるよ。
5円? 安すぎるだろ?
大丈夫だ。

悪い相談がまとまって、ぼんやりした若い衆が出迎える大店へ。

ところで師匠の名を継いだ志ん橋師、一皮むけた気がするのだ。
佐平次とは、こんな人。

  • とにかく口が回る。頭の回転が異常に速いので、若い衆に口を開かせない
  • ヨイショの達人。幇間なみ。気働きもできる
  • ヨイショは形だけではない。本当に客を気持ちよくさせる
  • すべての状況を心の底から楽しんでいる

落語世界のスーパーマン。こりゃ難しい。
志ん橋師、すべてをクリアしていた。すごい。
これだけすごければ、もうじき寄席の主任もありそう。真打の多い今、トリを取るのもなかなか大変なことだが。

古典落語というものはストーリーの先を知って聴くわけだが、この居残り佐平次はとにかく場面場面がひたすら楽しい。
佐平次がペラペラと勘定をケムに巻くあたりは、「ほら来た」というより、「なんだこの人間は!」という感動。
ずいぶんと長講なのに、退屈させることはない。
怒っていないが啖呵の一種。スラスラ語って落語の客を高揚させる。実にメロディアス。

佐平次、帰った連中がまたやってくると若い衆をあしらいつつ、最終的にはからっけつであることを白状する。
これも、別についにやむなく白状したわけではなくて、そろそろ本業に掛かる時期だろうという、緻密な計算。
とにかく廓の連中より何枚も上の詐欺師なので。

やってこない花魁を待つ客の勝っつぁん。
座敷に上がり込んでヨイショする佐平次の腕前の見事さ。
あまりパっとしない高座だと、恐らくこうなる。

「ヨイショが上手いことになっている佐平次が、ヨイショに弱い勝っつぁんを喜ばせ、落語の客はその茶番を脇から眺めている」

まあ、ヘタというほどじゃない。普通の高座。別にこれで、不満いっぱいで帰るわけでもないが。
だが凡庸な高座と異なり、志ん橋師はこうだった。

「佐平次が落語の客を一緒にヨイショする。勝っつぁんと落語の客は一体になり、佐平次のヨイショにいい気持ちになる」

みんなこれを目指してるんだろうと思うのだけども、そんなに簡単なことではない。
私は目の前の演者に、ヨイショしてもらって実にいい気持でした。
すでに落語の客は勝っつぁんとシンクロしているので、勝っつぁんが祝儀を出すあたりではもう気持ちが一体。
たぶん、女性のお客でもいい気持ちだと思うのです。

いのどん大活躍から、ラストまでは結構早くなる。
廓の主人が出てきてからはアッという間だった。もちろん、さっさとサゲたいのでしょう。
佐平次が居残りしているおかげで廓が潤ったとか、そういう描写は薄い。まあ、客が指名してるんだから、潤ったには違いない。
主人は仏のような人だけあって、あまり疑わない。
佐平次が弁天小僧で犯罪史を語るあたりはしっかり入ってる。
言われるがままに高飛び費用を出し、結城まで取られている。
結城は主人はできあがっているのを知らなくて(作ったことも知らない)、でも佐平次は袖を通してジャストフィットなのを確かめている。

志ん橋師ももっと聴いていこうと決意しました。

珍しい、品川廓噺連発はいいものでした。

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