浅草演芸ホール7 その2(桂宮治「棒鱈」)

宮治師の棒鱈、どこかで耳にした気がするのだが、現場で聴くのは初めてのはず。
マクラの勢いに乗って非常にスピーディ。というか、マクラで時間使ってるのに、この噺時間に収まるの?
最近聴く棒鱈は、弟分の悪態をマイルドにしてるのが多い。
そりゃそうだ。「早くしろい! バカ!」などの悪態で、いい気分のする客はそうそういないはず。
マイルド化は私も賛同するのだが、まるで逆の道を行く宮治師。
マクラでもって、「悪態を放っても許される人」になってるからだ。
二ツ目の頃は、「悪態を放つ人」だった。この違いはでかい。
許される人の場合、「たちの悪い酔っ払いで腹にはなんにもねえんだ」と勝手に解釈してもらえる。
ちなみに弟分、嫌なことがあったとかではないみたい。お酒大好きの、ただの品のない野郎である。これまた斬新。
よく見ると、好楽師を反映させて、悪態をのっけたようにも見える。
「寅さん」と喋り出すあの感じが、好楽師っぽい。好楽師の高座っぽいってことですがね。

非常に変わってて面白いなと思ったのは、この弟分、隣の座敷の芋侍に悪態つく際には声を張り上げないのだ。
こんなの見たことない。
張り上げないといっても、隣に聞かれて困るからではない。ナチュラル悪態モードだから、聞こえようが聞こえまいがかまわないみたい。

棒鱈というのは、舞台上にふた部屋あって、交互にスポットライトが当たる芝居だと思っている(舞台の隅っこに、階下の料理場もある)。
だから、落語においては「今からこっちの部屋にスポットが当たってる」をはっきりさせなくてはならない。だからみんな声を張り上げ、「酒がまずくなる唄歌うな!」などとセリフを吐く。
でも宮治師は、もう客任せ。仕切りがなくて渾然一体となっている。

となりの座敷も展開が速い。大井大森蒲田のクスグリはなし。
とっとと、モズのくちばしと12か月を歌う。琉球はない。
そして、芸者たちにとってこの唄は、パワハラとして描かれる。
「お前たち笑うんじゃないよ」のセリフは「やだ、もう耐えられない」である。

12か月を聴いた弟分、兄貴の寅さんに向かって「残念なお知らせがあります」。
この唄覚えちゃったから、どうしても歌いたい。
「1がちーはてんてこてん。2がちーはてんてこてん」

隣の座敷を覗きに行って倒れこんで、斬られそうになって啖呵切って、料理人が来てまあ早い。
寅さんが声を荒げたりするシーンはない。
仲居は「くちゅん」とかわいいくしゃみをする。こんなのも似合う人。
スピーディにサゲ。
悪態マシマシなのに、世界一平和な棒鱈。

宮治師は「悪態をつくけどいい人」として笑点をスタートしたのだろう。しかし私にはさらに前、「ひどい悪態をつくとんでもない人」と映った。
今は、「楽しい悪態をつく人」になっている。
長寿番組も本業も、この方法論で行くのでしょう。

続いては芸協会員でないゲスト色物。「オラキオ」。
体操ものまね。なんだそりゃ。
筋肉ムキムキ。
竹千代師匠がお笑い芸人だった頃の事務所の先輩でして。私が10歳上なんです。
真打ですよ、すごいですね。偉くなってもこうして私を呼んでくださって。
私は体操ものまねをずっとやってきてまして。もうここ6年ぐらい、同じネタの使いまわしです。
だんだん体力は落ちてきます。いつまで続けられますかね。
それにしてもね、この出番。笑点の人気者が出たあとですよ。これはつらいです。
もっとほかに出番なかったんですかね(と袖を向く)。
10分から15分やってくれと言われました。10分はがんばります。

舞台の上だから、床運動のマネである。
昔の(誰も覚えてない)外国人体操選手のマネを続ける。
爆笑である。
「明らかに着地に失敗したのをごまかす」と事前に説明しているので、面白い。
細かすぎるモノマネの手法。
女子選手のモノマネも。
いずれにしても、激しく体力は消耗する。
でもまあ、ボンボンブラザース先生なんて83歳だからな。

内村航平は、「着地後、腋毛が長いのを気にして手を上げきらない」モノマネ。
モノマネ4種類のあとは、ショートコント。
赤ちゃんが、親の前で立つぞ立つぞと言われて、逆立ちする。

日頃の寄席空間にはないタイプのお笑いが舞台に出現したが、でもウケてた。
落語協会のウクレレえいじ先生と方向性が同じだから、まるっきりの異物ではないのだ。

続きます。

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