前座あま夏さんの「雑俳」に追記。
「山王の桜に三猿三下がり 合いの手と手と手々と手と手と」を言えない八っつぁんが隠居にもうつってしまい、隠居も言えなくなっちゃう。
それを八っつぁんが隠居に教えてやる逆転。
こんなサゲは初めて聴いた。しかも、面白い。
披露目の後ろ幕は「春風亭一門」。仲入り後には「東海大学落語研究会」に代わっていた。
その、東海大の先輩の春風亭柳雀師。最近はもう、メガネで高座に上がる。
東海大のことは言わずに、昇吾師を含めた二人の新真打について語る。私も鯉昇の弟子で、同じ一門ですと。
私のときは昇進の1年前に骨折してしまい大変でした。
本編、どこから入ったのだったか疝気の虫。
医者がうつらうつらしながら虫と会話する。虫は、殺されちゃかなわないので内輪の秘密を語る。
急に疝気が出た患者のために往診に出かける医者は、さっそく夢の内容を実践してみる。
ムダがない展開で、聴いていて実に気持ちいい。そして、展開にムリがない。
もともと無理な噺だからこそ、この自然さに感服。
柳雀師は披露目にも来たし、もともと期待の人だったけども、また新たな味が付け加わっている。
疝気の虫が全身の筋肉引っ張る際のフレーズというか掛け声、なんだっけか。古典落語に頻出なのに忘れてしまった。
ただ、唐辛子が上からやってきた際の別荘(避難場所)のフレーズは覚えている。
「うんきんだらりん かんちんちくりん」
熱いとだらりん、寒いとちんちくりん。
「たらちね」に出てくる「うんきんだらりんかんちくりん」の謎が完全に解けた。そういう意味じゃないかとは思っていたのだけど。
患者のおかみさんがのんびりしていて、薬味をつけずにおいしくおそばをいただく。この造形好き。
虫たちはそばの香りを求めて、口から口に飛び移る。
たちまち苦しみだすおかみさん。旦那は完治。医者は奥さんに唐辛子の水を飲ます。
別荘を探す虫たち。柳雀師、立ち上がって高座をまず上手にうろうろ、そして今度は下手にうろうろ。そのままハケる。
勘のいい客は、すぐ拍手。
昔むかし、志ん生が「別荘~」と客席を抜けてそのまま出ていったという伝説がある。
客席は抜けていかなかったが、演者がうろうろして出ていく形は初めて見た。
続いては昇々師、かと思ったら前座さんがメクリを差し替える。「羽光」とある。
以前は落語協会の席でだけ当日刷りの番組が配られていた。最近は芸協でも配るようになったみたい。
この番組表にも昇々とあるのだけど、急遽の代演。
最近あまり聴けてないので、笑福亭羽光師が出てきてちょっと嬉しい。
羽光師、橋本で会をずいぶんやっている印象。橋本は遠い。
今の人(柳雀)、56歳ですよ。よくやりますよね。そんな私は53です。
今日は昇々さんが出てくる予定だったんですけど、無理に出させてもらいました。
もちろんそんなことはなかろうが。
私は弟子がひとりおりまして(羽太郎)。これがよく楽屋でしくじりまして。
楽屋では、前座がお茶こぼしたりしてしくじると、師匠方はすぐ「てめえ、誰の弟子だ!」とこう来ます。
羽光の弟子ですと言うと、「あいつついこないだ昇進したばかりなのに生意気に弟子取りやがって」とこうなるわけです。
弟子が昇也の着物をいい加減に畳んだときは、昇也に言われました。「アニさんのところでは弟子にどんな教育をしてるんですか」。
酔うとこんなことを言う男です。
なので弟子には言い聞かせます。
「誰の弟子だ!」と訊かれたら、「桂宮治の弟子です」と答えろと。
そうすると、「まあ、仕方ねえか」になります。
羽光師の自虐は世界一面白いと思う。ただのすべらない話ではなくて、哀愁に満ちている。
羽光師だってNHK獲ってる偉い人なんだけど。
ちょっとメタな噺をします。わからない人はXで質問してくださったら答えますので。
といって、ペラペラ王国と同じ構造を持った「俳優」へ。
検索すると私の記事が二つ出る。ああ、二回も聴いてるんだなと。
演題は今でもこのままでしょうか? 代わってそうな気がするけど…
なにせ骨格が楽しいので、二度聴いていてもまったく新鮮である。
毎度おなじみ中村好夫と「田中」が話をしている。
親父との関係がよくない中村。役者の卵の田中に、親父と話す練習させてくれ。
役に入って、べろべろに酔っぱらう田中。ヨシオが親父に語る。
親父。今度部長に宴会の出し物の相談をするんや。その相談の練習したいから相手になってくれ。
ちょっと待て。
どうした親父。
親父やない。田中や。これ、最初から部長に相談する練習でええんやないの? 親父いらんやろ。
でも俺は、親父に、部長に相談する練習の相談をしたいんや。
改めて部長に相談すると、中村はなぜか部長、一緒にコンビを組みましょうと。つきましてはコンビニ強盗のネタを書いてきました。
ちょっと待て。
部長どうしました。
部長やない。
どうした親父。
親父でもない、田中や。
コンビニ強盗は、金をとらないで「短気なアントニオ猪木」などムチャ振りモノマネを強要する。
三度目の今回でようやく、全体構造がわかった。つまり冒頭の会話も、架空のものであるということ。
実に楽しい。
落語の可能性は無限である。
この高座の最中、携帯鳴ってた。
声を出して怒るお客も。声出すのはいけません。
羽光さん。「出ていただいていいですよ」。
本編入る前に、「切ってください」とちゃんと注意。
前座のときも鳴ってました。
このハコは、事前に注意しないからね。