国立演芸場寄席@すみだトリフォニーホール(中・柳家小せん「黄金の大黒」)

仲入り休憩後のクイツキは、二ツ目の柳亭市若さん。
あれ、髪の毛が長い!
気が付くと2年お見掛けしてなくて知らなかった。以前はボウズだったのに。
新婚さんいらっしゃい!に出た際もボウズだった。
オランダ生まれと、職質と、師匠に「五反田生まれ」と思われたマクラ。
鉄板の自己紹介があってていいですね。
そしてテンション高いが、高すぎはしない。

本編は堀の内。さりげなく、しかし結構いじっている。
二ツ目さんには、いじりまくっておいて「どうだ!」と自慢げな人もいますからね。そういう、いじっただけの人とは一線を画している。
おかみさんが強い。八っつぁんに、「転んだときはちゃんと手を突くの!」と指導している。
かみさんの指導のおかげで、転んだ際に手を突いて事なきを得る八っつぁん。

そして神信心をどこでするかは、八っつぁんが選んでいた。堀の内が好きなんだって。
出かけるが、道で転んで無事だったその瞬間に、行く場所を忘れてしまう。粗忽でも因果がはっきりしてるんだ。
これは「平林」からヒントを得たんじゃないかと思う。

電車の線路であるとか、浅草まで行ってしまうとか、尋ねた相手に悪態つくとか、いきなりタバコ屋にお参りするとかはない。刈り込む部分は刈り込む。
そして、間違って隣の家に突撃したところでサゲてしまう。
あれ、時間押してたのかな?

あっと言う間にヒザ前、柳家小せん師。
ヒザ前が非常に上手い師匠だが、でもヒザ前の献身的な役割に徹しすぎる気もしている。
トリの師匠を立てるのは寄席の掟だとはいえ。
だが、国立のヒザ前は、時間がたっぷりあるから若干作法が違う気がする。力を入れていい、むしろ入れないわけにいかないヒザ前というのは、この師匠にぴったりなのではと思ったりして。
その想像どおりの見事な一席であった。

待ってました、たっぷりと声が掛かる。
声を掛けていただけるとやる気が出ます。掛からないからやる気ないわけじゃないですが。

長屋というものは今はありませんが、名称が変わっています。
アパート、コーポ、シャトー、レジデンスなど。
シャトーの最上階に来ないかと友人に誘われて、酒瓶をぶらさげて行ってみると、2階建ての2階でした。
雨が降ってきて、傘を貸してくれと言われました。雨漏りがひどいんだそうで。
1階の大家は、長靴履いてました。

大家が呼んでると。店賃に違いないと怯える長屋の連中。
花見の季節ではないので、黄金の大黒。
4月の国立代替、深川でも柳家㐂三郎師が出していたなと。その際もフルバージョンだった。
めでたい披露目で出るイメージの噺だけども、本来的に20分の枠に向いてるみたい。
ただ、中身は微妙に違う。
一番違うのは、羽織を着て口上に出向く2番目の男である。㐂三郎師のだと、「早くやんないと忘れる」ので、みんなが心配してるのを尻目に突撃する。
小せん師の場合、最初にスラスラ口上を述べる吉っつぁんが気に食わないのだ。いつもこういうの上手いから増長しちゃってと。

クスグリの多さに、一度聴いた覚えがある。
落語研究会だろうか?
と思ったら、10年前の文蔵襲名披露で聴いてたのだ。最近は自分のブログも、過去記事を探すのが大変なのだがよく見つかった。
「ギリシャ」で検索したらヒットしたのである。
貧乏長屋は今は昔、現在はギリシャ経済破綻長屋。近隣諸国に迷惑を掛けるだって。
ギリシャはいささか古いけど、「ロシア」とかいうとちょっと生々しいからまあ、仕方ない。

クスグリだけでできているような噺だが、爆笑ものでなく、じわじわ来るのだ。
決してギャグを突出させない小せん師のコントロール技術は素晴らしい。おかげで疲れずずっと楽しめる。
口調の微妙な硬さがこの秘訣。登場人物自身は冗談は言ってない。ただ、その組み合わせで作られる落語のおはなしそのものは、冗談の塊。

羽織の左右の紋が違うとか、そういうのはなかった。
しかし小せん師、羽織と思わせてしるし半纏、ちゃんちゃんこ、この流れだけで本当におかしい。
かと思うと大家の「(息子が)悪さをしたら叱ってくれ」に応じて、「ワルサーも不二子もルパンもねえんすよ」なんて地味に入れてる。
まあ、芸風からしてちょうどいいお遊び。
ぼっちゃんのコルトは55口径。ぶん殴るのは素手でなくて鉄パイプ。

黄金の大黒さまが、小づちを担いだままの姿で歩き出すのが丁寧だ。
大黒さまが呼びにいくのは恵比寿さま。

仲入り(さん遊師)、ヒザ前と20分の高座で満足。いい感じでトリにつなげる。

続きます。

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