池袋演芸場40 その4(柳家小ゑん「ミステリーな午後」そしてちいかわ出囃子)

なんだか、聴き覚えのある唄入り出囃子が流れている。

♪なんだ、もう朝かと

ちいかわのハチワレが歌う、「ひとりごつ」ではないか。
ああ、柳家あお馬さんから、歌武蔵師が娘さんとちいかわを観にいったと聞いたばかり。
それにしても、端唄小唄のようにちいかわのテーマを歌い上げるお囃子さん、すごい。
楽屋入りするところを見たが、お囃子さん綺麗な方でした。
こみち師のマクラに出てきた「うた」さんだろうか? 落語協会公式でこの席のお囃子さん調べたのだが、別の人の名前(香盤から見て明らかにお婆さん)だった。

ただいまの決まり手についてご説明します。林家あずみさんの三味線漫談でございました。
歌武蔵師は、昼は喬太郎師ともども落語教育委員会だった。
この日は本気なのか、池袋だからか、単に漫談のあとだからか、古典落語へ。相撲漫談も好きですけどね。
「湯がぬるい」小噺。

これがすごい迫力で。
強情灸付属の小噺だけども、もう一席の落語みたい。そのまま浮世風呂とか始まるんじゃないかと思ったぐらい。
「ああーぬるい!」。江戸っ子を一言で言い切ってますね。

本編強情灸も、すごい迫力。二人の鉄火なおアニイさんが意地を張ってるだけなのに、たまらなく面白い。
対抗するほうのアニイが、もぐさを用意する。
もぐさをまとめながら、アニイが歌う。「♪なんだ、もう朝かと」。
まるまる歌う。
どういうことだみたいなやり取りはあったが、結局なんでちいかわが出てきたんだっけ。

お遊びがあっても、その中身は終始楽しい本格派の強情灸。あー冷てえ。
落語の場合、ちょっと頼りなさげな演者でも、話相手を使ってなんとか迫力を出すことができる。
でも、強情灸の場合鉄火なおアニイさんしか出ないので、この手が使えない。
歌武蔵師をして成り立つ噺みたい。過去聴いたすべての強情灸を、この日の歌武蔵師が潰してしまったかもしれない。
先代小さんバージョンの喬太郎師のものは別ですが。

「ぎっちょんちょん」が流れて仲入りは柳家小ゑん師。え、そういうようなわけでございまして。
昭和元禄落語心中など見て勘違いする人もいますが、噺家にいい男はいません。あたしが中の上です。
扇辰はジジイだし、歌武蔵はデブだし。喬太郎はブタだし。
(ちょっと違ったかもしれませんが、意訳ということで)

客席のやたら明るい池袋の話。昔は3階にあった。
階段しかなくて、お客さんは大変。2階の踊り場まで来ると、先代柳朝の色紙で「あともう少し」と書いてあった。
しかしよく考えたら、今だって階段2つ分下りるわけで、一緒だ。エレベーター使っているのは本職のほうが多い。だから大差ない気はする。

あと師匠、小さんの携帯小噺。馬風師から電話があって、「お前、よく俺がここにいるのがわかったなあ」という。
小ゑん師、今じゃみんなこの小噺やってますけど、原典はあたしですからね。
勢朝に喋ったら、ぱあーっと広まっちゃった。今じゃ芸協でもやってます。昇太もやってました。
それどころか上方でもやってます。でも、その状況を目撃したのはあたしだけですからね。
師匠を替えてやる人もいるんですけど、携帯電話が普及しだした頃と時代が合わないことも多いですね。

そこからどう入ったのか、「ミステリーな午後」へ。
ミステリーな午後、当ブログに記録がない。聴いたことはあったが、コロナ禍での配信だったか。
だから現場では初遭遇。
「のり弁シャケ弁コロッケ弁当」のフレーズが楽しい。

主人公が、罪のないみみっちいウソをついてそれがバレる。バレたところでもともとみみっちいのだから別にどうということもなく。
これは、実は古典落語の王道である。小ゑん師はなんの噺であっても、古典落語を一から作り上げるような仕事をしているのである。

鈴木係長は毎日ホカ弁のローテーションで、部下たちにも覚えられている。
豪華海鮮丼を食べに行く部下たちを尻目に、今日も順序よくのり弁。
しかし放置された寿司屋の飯台を発見し、これで見栄を張ることにする。
チェーン寿司屋、地蔵ずしを買ってきて、立派な飯台に移し替え、豪華な食事を見せつける。

ものは器で食わせろとは言ったものだ。このフレーズは入っていないけど。

Xへのご本人の投稿によると、仲入りなので日頃より長くやったそうである。
小ゑん師は時間を計りながら、エピソードを出し入れするのが本当に上手い。

今はもう秋。誰もいないウニ。
トロ遠方より来たる。

これらは、「ぐるんぐるん」にも入っているが、それだけではない。
シャコの海岸物語とか、マコガレイのハワイ航路とか。
しかも客に声を揃えて言わせる。

無人のオフィスでこっそり作り上げた力作の偽高級寿司が、いったん行方不明になるのも楽しい。
これはネタ(寿司だから)がバレるというストーリー展開上必要なくだりだが、それだけではない。みみっちい男のたくらみが失敗しかけるという点、重要な意味を持つと思う。

部下に尊敬されない、セクハラ気味の係長が墓穴を掘った。しかし、意外と楽しそうな職場である。

この日初の新作落語で大盛り上がり。

続きます。

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