神田連雀亭ワンコイン寄席76 その1(笑福亭茶光「弁橋アニさん」※マクラです)

日曜はワンコインのハシゴ。
神田連雀亭から、蕨の柳亭市馬独演会へ。
二つ回って1,000円だ。贅沢だ。

木戸銭は安いが蕨なので交通費が掛かる。
こういう際はJR1日券の出番だ。赤羽までは1日券で、残りは差額を。
まず連雀亭。
正直言ってこのところ、この寄席のランダムな顔付けに惹かれることは、非常に少なくなった。
しかしワンコインでも昼席でも、芸術協会メンバーが固まっているときは別。
芸協メンバーは、集団になると個々のときよりずっと強くなる。
落語芸術協会 = 福岡ソフトバンクホークス説。
いや、近藤や柳田、栗原、周東、モイネロ、山本祐大あたりのベテラン勢は、連雀亭にはいない。
でも、柳町や庄子、前田悠伍あたりの他球団が羨む若手人材は結構いると思うのだ。

今日もそんな感じで、集団パワー発揮、期待通りの大満足でした。
芸協以外がひとりいると、この一体感はしぼんでしまう。いや、それがダメってわけじゃないですがね。
さらに芸協メンバーの、今日顔付けされてない名前が、修業時代の思い出として多数登場して。

鈴本の早朝寄席の裏だし、つ離れしない程度かなと予想してたら、なんと25人だって。大盛況だ。
特定の芸人のファンが集結したようには見えない。
今日のお客も、私のような芸協ファンなのだろうか?

田楽喰い 茶光
宮戸川アバズレ編 蛙朝
大工調べ 晴太

 

前説は瀧川蛙朝さん。相変わらず立って、そしてメクリ台にもたれかかって話す。
諸注意です。音の鳴る機器は切るなりしていただいて。
それから飲食禁止です。ですが飲み物だけは、私が上と掛け合って今日はいいことにしました。
ワンコインです。正直スベることもありますが広い気持ちで。
私らだってね、3,000円だったらスベらないですよ。
ふざけてるな。

釈台がすでに出ている。
トップバッターは笑福亭茶光さん。
ここ連雀亭は講談師浪曲師も出るし、釈台はもちろんあるのだ。だが、噺家で釈台使った人を見たことがない。
茶光さんの兄弟子、希光さんも、よそではよく使うのに、連雀亭では使ったのを見たことがない。
ところが、よそであまり釈台使っていない茶光さんがここで使うとは面白い。

茶に光と書いて、笑福亭さこうです。
この連雀亭は若手が出ます。私もイキのいいピチピチの若手ですけど、46になります。
入ったのが遅かったものでして。見習い期間がそこそこあって、楽屋入りしたのが35です。
私のすぐ上の前座が、春風亭弁橋アニさんです。楽屋仕事は必ず、ひとつ上の前座から教わるんですね。
基本的に、さらに上のアニさんに質問したらいけないということになっています。
弁橋アニさんは、19でこの世界入りまして。だから、私より16年下なんですよ。
アニさんも、自分がいよいよ上になるというときに、こないなオッサンが入ってくるとは思わなかったでしょう。気の毒ですよ。
弁橋アニさんは今30ですから平成の少年です。私は昭和の少年ですけど。
彼は親が厳しくて、テレビのバラエティ番組一切見せてもらえなかったという人ですよ。その子の楽しみが、夜中布団の中にくるまって、ラジオで落語を聴くという。
ご両親の教育間違ってますよね。それでこういう変態が生まれたわけです。

それにしても、前座はやっぱり若いほうがいいですね。楽屋の雰囲気に慣れるとかいろいろ理由はありますけど、それだけじゃありません。
弁橋アニさん、若いので俊敏なんです。
前座は、なにもせずに座って待機している時間があるものです。そのときに呼ばれたら、さっと動くんです。
これが全然かないません。私もつま先で座ってすぐに動こうとしてるんですけど、かないません。アニさんの着物を引っ張ったりして妨害しても負けます。
それに彼は坊主頭でしたから、空気抵抗がないんですね。

指導係も大変なんです。後輩が間違っていたら、うんと年上でも厳しくしないといけません。
私のすぐ下がね、三遊亭遊七さんという人で。トシは言えませんけど、私より年上のひとですよ。
弁橋アニさんは、いきなりおじさんとおばさんの後輩を持つことになったんです。やりづらかったと思いますよ。
弁橋アニさんも、楽屋で言い過ぎたと思うこともあるわけです。そんなときは我々に声を掛けて、食事に連れてってくれるわけです。

「今日はごめんね。言い過ぎた」
「いいんですよ、アニさん」

とかやりとりしまして。
アニさん、てんやに連れてってくれました。

「今日は好きなもの食べてね。大盛でも、天ぷら追加でも」
「いえ、ちょっと胃がもたれますので」
「遊七さんもどうぞ」
「いえ、そんなに食べられませんよね、アニさん」

居酒屋に行くと、年齢確認をするところもあります。
その頃、弁橋アニさんはまだ20ですから。
全員が免許証を提示します。
遊七さんは、「ええー、私も? やだあ」とか言って喜んでました。

なんだか芸協の修業は本当に楽しそうでいいよなあと思う。
落語協会は、ひとつ上の前座が指導なんてルールもないと思うし、ここまで和気あいあいとしていない気がする。
まあ、それでも芸協でも、多少ははみ出る人は出てくる。はみ出る人にとっては、落語協会より居づらい組織ではあろう。

マクラの最後に茶光さん。
今日は弁橋さんの話ばっかりですが。ついでにもうひとつ。
弁橋さん、高校で柔道したかったんですって。でも柔道部がないんですね。
なので顧問の先生見つけて、ひとりで柔道部始めたそうです。
なにせ乱取りの相手がいません。なので、木に帯を巻き付けて、投げたりしてたそうですよ。
昭和のスポ根マンガですやん。もう古い中華そば屋さんにしか置いてないような。
その後2年生になって待望の後輩が入ってきました。初めて乱取りしたら、すぐ投げ飛ばされたそうです。

続きます。

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