圓太郎一花二人会 その1(橘家圓太郎「ご婦人二態」※マクラです)

土曜日は、一年前に訪れた芝落語会へ。白金高輪。
前回は、扇遊・蝠丸二人会だった。今回は、圓太郎・一花二人会。
「港区落語地図」というタイトルが付いている。
春風亭一花さんは披露目の真っ最中。夜は末広亭で披露目である。
そんなときにある裏の会。私はこういうのに惹かれてしまうのだった。

元々の顔付けは正朝師だが、体調不良で圓太郎師の代演らしい。
橘家圓太郎師はここ数年、ずっと高頻度で聴いている人だが、珍しく1年以上空いた。
今年も拝鈍亭や、棕櫚亭などチャンスがあったのだけど。
お二人は同じ一門である。春風亭であり、彦六の正蔵の林家ということになる。

前日にメールしたらまだ予約できた。
ご丁寧に、確認の電話をいただいた。

からぬけ 柳吉
親子酒 圓太郎
厩火事 一花
(仲入り)
黄金の大黒 一花
化け物使い 圓太郎

 

前座は初めて遭遇の春風亭柳吉さん。
前座香盤に名がないので見習いらしい。
柳枝師の弟子。
歩いてきたもので、開演前から引き続き寝てしまった。
馬鹿親子の小噺と、与太郎のクイズだけかすかに覚えてるので、からぬけだったのだと思う。

寝てスッキリ。
圓太郎師から登場。

歴史ある芝落語会に呼んでいただきまして。歴史はありますが、私は初めてでございます。
本来は正朝師匠でしたが、体調不良ということで私が呼ばれました。
体調不良と言いましても、行けたら行けるぐらいのものです。
歴史ある会ですが、代演です。
昔、真打成り立ての頃、パーティで「芝落語会でございます」と声を掛けられました。
ビールを注いでくださったんですが、ビールがこぼれて袖に掛かりまして。
その人「申しわけありません、師匠、必ず芝落語会にお呼びしますので」。
その人すぐいなくなって、それ以来です。
まあ、そのときの借金をようやく返してもらったことになります。

一杯揃った関係者の前で、ヒザ立ちになって会を非難する圓太郎師。
拝鈍亭でも、毎回そこで聴いてる住職をdisっているのがたまらない。
これも一種のヨイショであろう。

私はこのあたりに住んでおりました。師匠、小朝が三の橋にいましたから近所で一人暮らしをしまして。
師匠のお母さんが天現寺にいまして、このあたりをうろうろしておりました。
昔は陸の孤島でしたね。麻布十番なんか行くのが大変でした。恵比寿か田町から歩かないとならないんです。
今日は都営三田線で来ました。
一本で来ました。私は、このあたりの高級住宅街ほどではありません。ここにはかないませんが、高級住宅地に住んでいます。板橋区役所前という。
一本で来まして、ああ便利だなと。当時はここに駅なかったんですからね。

三田線に乗りますとね、大手町あたりで人が入れ替わりますね。板橋のほうから来た人が、大手町あたりで全員いなくなります。
今日は電車の中に、板橋の住民としてはちょっと珍しい感じの女性が乗っていました。バリバリ働いている感じの方です。
板橋のスーパーでパートをしている感じの方ではありません。
西台あたりで土地を動かして、5000万ほど儲けたという感じです。着ているものも違います。
その女性が前に座っていました。この方、やおら化粧を始めたんですね。
都営三田線は、大手町で乗務員が入れ替わりますが、北のほうは運転が荒っぽいです。そのよく揺れる電車の中、見事に細い眉を引きます。それはもう、見事な腕です。
その女性と目が合ってしまいました。
男だったら、すっと目をそらします。喧嘩になりますから。世界は男同士でこうやって戦争が始まるのです。
しかし女性が相手なので、急に眼をそらさず目礼をします。
その女性が口を開きました。「やりにくいのよね」。

噺家は高座の前は、ひと駅手前で降りて、ぶつぶつ喋りながら歩いたりします。
私も鈴本演芸場に行く際、本郷三丁目で降りて歩いて行ったりします。下り坂になるので、ちょうどいいんですね。
文京区の住民らしきご婦人が、ジャージと言ったら失礼です、ランニングウェアを着て軽く走っていました。
東京マラソンに出るような、眉間にしわの酔った人とは違います。「私、汗かきたいの」そんな感じです。
年配のご婦人で、恐らく、ご主人は脳神経外科部長です。なぜわかったかというと、このご婦人、信号待ちでポケットからアボカドを出したんですね。
水分補給と栄養補給をアボカドでする、これはもう、脳神経外科部長のご夫人でしょう。
ご主人は忙しくて、そしておそらく看護師とデキているのです。奥さんは、年齢も年齢なので今さらなにもいいませんが、しかし常に不満を抱えていて、ちょっと汗をかきたいのです。
奥さん、誰も見ていないと思ったのでしょう。皮に歯を当て、こう、らせん状に皮をむいていきます。上の皮をむいて、アボカドの上半分を食べます。そして、真ん中の大きい種に歯を当てて、ポコッと種を外します。
そしてその種を勢いよく植栽に吐き出しまして。大きな音が発生しました。
私と目が合いました。男なら目を背けて喧嘩になります。しかし女性なので、軽く目礼をします。
奥さんいわく。

「やだ、種がね」

久し振りに圓太郎節のマクラを聴いて、感激。しかも新作だ。
そもそも圓太郎師、豊富なマクラがほぼ被ったことがない。
客席、それはウケてました。

ところで師匠、板橋の熊野町に住んでると以前聴いた覚えがあるのだが、三田線に引っ越したのでしょうか?

続きます。

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