木梨憲武大暴走おかわり

昨日の木梨憲武大暴走の記事は、おかげさまで多くの方にお読みいただいた。
この件、引き続きいろいろなことを考えさせられる。
そもそもこの対談、正蔵師の希望で実現したのか? 戸惑いっぱなしの師を見る限り、そうは思えない。
では誰の企画?
最近やたらと民放の要素を取り入れているNHKだが、作り手の中に、演芸図鑑の予定調和をぶち壊したい意識でもあったのか。
成功しているかどうかはまったくわからないけど。対談って、秩序を生み出していくものだと思うのだ。
何だか知らないがやたら片方がマウンティングし続ける、噺家同士の対談はあったけども。

ハイヒール・リンゴとの漫才、「梨とりんご」は、この演芸図鑑と笑点でともに収録済みらしい。木梨がそう言っている。
笑点はまあ、いかにもありそう。コラボ漫才とかよく出しているし、別にいいんじゃないか。
片方は漫才のプロだし。
ただ演芸図鑑のほうはデキ次第で、平気でお蔵入りにしそうなのだ。そもそもNHK、収録したなんて事実、どこにも発表していないのだから。
このたびの放送事故的暴走と、恐らく承諾のないフライング発表を内部的な理由に、放送しないということもあるかもしれない。ただそんな難しい話以前に演芸図鑑、もともとお蔵入りのネタが大量にあると私は睨んでいる。
浅草お茶の間寄席より内容が厳選されているのは、これが理由のひとつだと思うのだ。そもそもNHKに出られないレベルの人が、浅草お茶の間寄席に出ている事実とは別に。

漫才はともかく、木梨が落語で演芸図鑑に出るのは無理だろう。理由はプロじゃないから。
木梨を出すならその前に、すでに落語を仕事としてずいぶんやっている、風間杜夫が出なければならない。
風間氏だって、落語で収入を得ていてもプロじゃないから無理。
落語のプロっていったいなんなの? という、当ブログでも繰り返し取り上げる話になりそうだが、深入りする必要は別にない。
落語の世界、きちんと師匠について修業した人だけがプロ。
それ以外の道を通った、プロと同等の人が巷にいくらでも溢れていれば話は別。理論上は、この可能性は一応ある。
だが、途中で辞めず修業を終えた人だけをプロ扱いして、事実として誰も困らない。自称インディーズプロの三遊亭羊之助(司馬龍鳳)ひとりが困るだけ。
プロとアマチュアとを分ける基準が一応あるのだから、それに逆らって意味はない。
芸人上がりの噺家も非常に増えたが、みな噺家としての修業時代があって、落語のプロ扱いしてもらえるのである。

しかし、プロが疑問の余地なく確立している業界において、プロでないのにそこに出たいっていう木梨の要求、いったいなんなのか。
私がまったく理解できないのは、落語のフォーマットを持っていないのに、落語で出たいというおこがましさ。
漫談なら出られるかというと、そうもいかないだろうけど。
NHKに出られる漫談家って、ぴろき先生以外にいたか? ねづっちやナオユキなら、出てたかどうかわからないが、問題はないと思う。
漫談といっても、強いフォーマットが必要なのである。

もしかすると、演芸界のほうが閉鎖的なのか?
面白いネタを持った芸能人が誰でも出てきて、漫談を掛けてもいいのだろうか。
でも、これは「すべらない話」という、別種のフォーマットに載った芸だ。
フォーマットを持たない、本来の意味での「漫談」の需要は、現在恐らく、どこにも存在しない。

友近が最近、テレビで「ヒール講談」というのをやっている。
吉本の劇場でやっているのかどうかは知らない。
それほど面白いとは正直思わなかったが、やり続ければウケそうな気がする。理由は簡単で、強い、確立したフォーマットがそこにあるからだ。
フォーマットを持った芸は強い。

木梨にはフォーマットがない。
落語をフォーマットに使いたいのだけど、それは落語でも、噺家のやる漫談でもない。
どうしても人前でピンで語りたいのなら、フォーマット作りから始めないといけない。今から落語の修業をしたことにするよりも、このほうが現実的。
フォーマットがないなら、まずYou Tubeから始めるしかないと思う。新ジャンルができれば、ようやくテレビにも出られる。

しかしなあ、若者に対して年寄りが言う常套句を思い出す。若いもんは、すぐ投げ出す。続けない、努力しないって。
でも、老若男女は一切関係ないことがよくわかる。
軽く見られがちなYou Tubeでの努力すらしないで、還暦近いジジイが、よそのジャンルで即物的な成功を得ようとしてるんだものな。
いかにもバブル世代の発想だなと、もう少し下の私は痛感するのであります。

さらに続編:【木梨憲武と落語】丁稚定吉・予言的中

 

作成者: でっち定吉

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