丁稚の落語百科(「は」の巻2)

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母恋くらげ

柳家喬太郎作の新作落語。主人公は海のくらげ。
他にもタコ、ヒラメ、亀など海の楽しい生物がたくさん登場。
元は三題噺で、「みかん」「電気」「水たまり」で作ったらしい。

柳家喬太郎「母恋くらげ」

母心

漫才協会会員の漫才コンビ。歌舞伎ネタなど得意。
最近、落語芸術協会の寄席に出始めており、じき会員になるものと思われる。
ボケ担当の嶋川夫人は、所属事務所オフィスまめかな社長。オフィスまめかなは円楽党の噺家が多数所属している。

破門

師匠をしくじると、噺家は破門される。
すでに真打になっていれば、破門されても廃業しなければならないわけではなく、一門から独立するだけ。師匠から名前は返せと言われるかもしれない。
真打の破門は芸術協会で最近2件あったが、さして話題にもならない。
いっぽう、まだ二ツ目・前座が破門されると、他の師匠に拾ってもらえない限り、協会の香盤を抹消され廃業を余儀なくされる。
特に落語協会の場合、破門された弟子を申し合わせで拾わないことになったので、破門イコール廃業になってしまう。
柳家三三に破門された落語協会二ツ目柳家小かじは、芸術協会の春風亭柳橋門下に入門し直した。現在、春風亭かけ橋として二度目の前座を務めている。

春風一刀

春風(はるかぜ)の亭号を名乗る唯一の人。
元からあった亭号でなく、オリジナル。
春風亭一朝の7番弟子。クォーターらしい。

遥かなるたぬきうどん

三遊亭円丈作の新作落語。アウトドア派の林家彦いちが持ちネタにしている。
マッターホルン頂上に、足立区のうどん屋が、出前を届ける冒険譚。
シュールなバカ噺かと思っていると、意外な感動が待っている。

春雨や

「春雨や」の亭号を名乗るのは春雨や雷蔵の一門だけ。
春雨や自体は、「雷門」一門に「春雨家」として存在した亭号。

林家

笑点でも、3名のメンバーが名乗る「林家」は、ひとつの一門ではないのでややこしい。
本家は、海老名の林家。先代三平の弟子であるこん平が総帥だったが、逝去により当代(9代目)正蔵がこの地位にいるものと思われる。
その正蔵、三平をはじめ、こん平門下のたい平などがいる。
正蔵門下に弟子(たけ平、つる子等)が多い。息子たま平などもおり、今後さらに大きくなるものと思われる。

これに対し、先代(8代目)正蔵系統の林家もいる。木久扇、正雀などで、これらの一門は林家を名乗り続けている。
木久扇の弟子も多く、彦いち、きく麿、けい木等が林家を名乗っているが、海老名系に遠慮しながら名乗っているような恰好。
そしてさらにややこしいのだが、先代正蔵系統がすべて林家なのではないということ。先代は海老名家から正蔵の名を借りていたため、弟子に対しては林家は例外的にしか名乗らせなかった。
先代正蔵の系統では、「春風亭」のほうが本系統のようになっている。柳朝、一朝と来て、一之輔はこの系統。
また「橘家」もあり、当代文蔵がこの系統。春風亭小朝の弟子の圓太郎も橘家。
林家彦いちは、亭号の同じ林家正蔵よりも、圓太郎、文蔵、一之輔といった亭号の違う人とのほうが、ずっと関係性が強いのである。

さらに上方にも林家がある。もともと初代正蔵の孫弟子から出ているので、東京の系統につながるが、この系統は切れている。
現在の林家は、5代目笑福亭松喬が、2代目林家染丸になったところから始まる。
当代林家菊丸が襲名する際、海老名の林家にも断りを入れたとのこと。

林家九蔵

三遊亭好楽の前名。
師匠・彦六(八代目正蔵)死後に一門を去るまで付けていた名前。
好楽はこの名を自分で持っていると解釈していた。アマチュア落語家に名乗らせた後で名を返してもらい、これを三番弟子、好の助の真打昇進時に名乗らせることを考えた。
しかし、林家宗家の海老名家(実質は、先代三平未亡人の香葉子)からクレームが入り、断念した。このため好の助は名前を替えずに昇進した。
先代正蔵の名前を巡る因縁が、ずっと継続しているのである。
好楽は披露目にケチがついたため断念したのであり、九蔵の名前を持っていること自体が否定されたわけではないので注意。

反対俥

俥(くるま)は人力車のこと。
明治時代の人力車がテーマの噺のひとつ。
退院直後の死にそうな俥屋と、威勢のいい、どこまでも駆けていってしまう俥屋の対比がつまり「反対」。
威勢のいい俥屋は、上野駅を目指してくれという注文を受けて、どこまでも北に行ってしまう。
現在の反対俥では、福島とか青森とか平気で行ってしまうのだが、もともとはせいぜい大宮だったらしい。
座布団からジャンプしたりする所作が多く、トシを取るとできない。
クスグリ入れ放題なので、沈んだ客席を盛り上げたいときなど最適。

ハンバーグができるまで

柳家喬太郎作の新作落語。舞台にまでなった名作。喬太郎も役者として出演。
喬太郎得意の集団喜劇であり、舞台には向いている。
別れた元妻がいきなり訪ねてきて、ハンバーグを作るという。
いつも総菜しか買わない商店街で挽肉を買う主人公に、うろたえ心配する商店主たち。
笑いたっぷりでほろりとする、まさに人情噺。

柳家喬太郎「ハンバーグができるまで」

次回、いつかわかりませんが「に」の回をお楽しみに

作成者: でっち定吉

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2件のコメント

  1. 毎度のことながら丁寧な解説ありがとうございます

    こうやって見ると「は」から始まる演目は色々ありますね。他にも花見の仇討ち、浜野矩随、マニアックなところだと昔昔亭桃太郎師匠くらいしか演られない春雨宿というのもありましたね。あとは用語でハメモノなんかも…考え出すときりがないですね(苦笑)

    これからも更新楽しみにしています

    1. うゑ村さんも相当マニアックですよね。
      浜野矩随と春雨宿は、検討はしたのですが特に書くことがなくてカットしました。
      他に花見の仇討とか、あと花見酒が漏れてました。まあ、このあたりはたまに書いてるからいいとします。

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