芸協の2023年春新真打と、昇進しない風子、廃業する遊里

落語芸術協会のリリースで、令和5年(2023年)5月の新真打が発表だ。
桂翔丸、春風亭吉好、柳亭明楽の3人。

成金が残らず真打に昇進した後のこの谷間世代のこと、私はあまりよく知らないのだった。
翔丸さんは連雀亭で一度聴いた(遅刻して急遽トリ)。
吉好さんはユニークな新作をやるということしか知らない。ラジオで聴いたことはあったように思うが、詳しくは覚えていない。
この人は神田連雀亭に出ているから、昇進までに聴いておきたいものである。
明楽さんはそもそも連雀亭には出ておらず、そうそう巡り合う機会もないと思う。

日ごろ連雀亭の顔付けを見ても、私の視線に引っかかっていない人がたくさんいる。今さらながらそれを痛感した。
マークしていないと、顔付け見てもスルーしてしまうのだ。
もっとも、ロクな印象がなくて「避けている」人とはまるで違うので。今後はちゃんと意識していかないと。

芸協さんは、この次の次ぐらいから、芸協カデンツァメンバーが瀧川鯉津さんを筆頭に真打になっていく。カデンツァについては、桂竹千代さんや笑福亭希光さんなど、そこそこ知っている。
落語協会のほうも、ユニットがあるわけではないけど、この世代はやや谷間の印象。

さて今回の芸協の昇進、めでたいシーンだからこぞって祝いたいのが普通だろうが、二点波紋を呼び起こしている。

  1. 春雨や風子さんが昇進しない
  2. 翔丸、吉好の間にいた三遊亭遊里がひっそり廃業

風子さんは、今年昇進の柳雀、昇也に抜かれている。
またしても?
なんなのだろう。普通に考えると次のいずれか。

  • 本人が辞退した
  • 師匠が辞退させた
  • 技量不十分につきまだ修業が必要との理事たちの判断

師匠の指示は考えにくい。どんな師匠も弟子が一本立ちする日を望んでいる。
そうでなかった最後の人が圓生。
まあ春雨や雷蔵師も、桂伸衛門師の移籍を見るとひと癖ありそうではあるけど。
最後の理由も現代では到底考えられない。そんなことを言い出したら、真打になれない人、無数にいなければならない
真打は抜擢を除けば機械的に上げていくのが、立川流以外での運用。実力なんて関係ない。
だから上がらないというのは極めて不自然なのだ。
風子さんの高座は面白いが、その事実も関係ないことになる。抜擢されるほどのウデの人を除き。
風子さん、普通に活躍してるのだが、他協会の後輩たちから訊かれたらなんて答えてるんだろう。訊けないかな。

そして、三遊亭遊里。
しばらく休業していたようだが、香盤から名前が消えた。
休業理由は知らないが、廃業と関係がないはずはない。
落語協会の場合、香盤から消えても本人のページ自体は、直リンク先としてしばらく残っている(辞めたばかりの扇さんがいい例)のだが、芸協は仕事が早い。
すでに遊里さんのページは存在していない。
いつも思うのだけど、「退会しました」というお知らせぐらい出せないものかね。
なにせ芸協の場合、気づいたら三笑亭夢之助師が香盤から消えてたんだから。気が付いた人だけがザワつくという。
立川談幸師は正会員になった後もしばらく、真打香盤の一番下に破線を引かれてその次だった。あるとき普通に香盤に載るようになったが、これも唐突だった。

まあ、遊里さんについても、昇進の3人と同様、私が語れることはほとんどないのだけど。
もう5年前に一度連雀亭で聴いただけなもので。
奇しくも、落語協会で廃業したばかりの林家扇さんが抜いた席であった。
遊里さんは、A太郎さんの代演として入っていて、志ん八(現・志ん五)さんとともに二人で1時間を務めていた。
その後リニューアルに伴い連雀亭メンバーからは抜けたはずだ。扇さんと同様。

一度しか聴いてないからなんとも言えないものの、真打としてやっていけない人には見えなかったが。
でもまあ、残念と思うほど材料も持っておらず。
なんらかの理由で落語界に絶望したのであろうか。
師匠・小遊三との関係じゃないと思う。この一門で辞めた人は知らないから。
だいたい、落語協会を辞めた遊雀という、火中の栗を拾った師匠であるからして。

まあ、真打直前で廃業した人が出るとファンは感傷的な気持ちになる人が多い。
ただ、真打になってから食えない人も多々いるわけで。落語協会より人数が少なく、寄席に出やすい芸協にだってそんな人はいるのだ。
見切りをつけ、落語界から離れたいならそれも仕方ない。

プロ野球選手は次から次へ入ってきて、支配下登録数が決まっているから必然的に辞めなければならない人がいる。
落語界にはそういうものはない。
ただ、プロ野球選手と同様、イップスに悩まされて辞めざるを得ないなんて人も中にはいるかもしれませんね。別に今回辞めた人たちがそうだというのではなく。
すらすら喋れていたのに、ある日突然噺が出なくなる。
そして、噺が覚えられなくなる。どんどん忘れる。
そんな人もいるかも。
あ、これは新作落語のネタになるな。取っておこう。

作成者: でっち定吉

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4件のコメント

  1. 春雨風子さんについては、雷蔵師匠の意向とのことです。
    昇也さんが、自身の昇進記者会見で昇太会長よりその旨のコメントがあったと発言してました。
    (吉好さんのYou Tubeにて)

    1. 尾張さん、情報ありがとうございます。
      雷蔵師匠の落語は嫌いじゃないですが、偏屈なんですかね。
      名人でもないのに。
      名人だってシステム変革に敗れさったのに。

  2. 興味深く拝読しました。
    〈誤り〉
    桂新衛門師は、
    桂伸衛門師ですね。

    1. 加藤カチントさん、ご指摘ありがとうございます。
      「右」を入れたらいけないんだぞという意識ばかり強くて・・・
      伸衛門師匠、申しわけありませんでした。

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