「御法度落語おなじはなし寄席!」スペシャル その5(雀々のアクセントについて)

もう2週間前にオンエアされた番組をようやく取り上げます。
1年前の同特番から連番でもって「その5」とします。

その1はこちらです。

6月5日が「落語の日」だからなんだと。ろくごね。
「落語の日」はまるで意識したことがないが、コロナの前までやっていた毎年6月第1月曜が「寄席の日」だったのは、これから来ていたらしい。
調べて初めて知った。
寄席の日、復活しないかな。

レギュラーでやってた頃からこの番組「御法度落語おなじはなし寄席!」を取り上げていた。
全回録画していたが、どうにも使えなかった2回を除き、番組の細かい部分にまで触れている。
愛あるツッコミもさせてもらった。いちゃもんだと言われるかもしれないけど。
当ブログ、上方落語を出すとだいたいアクセスが落ちるのだが(それもどうかと思うけど)、この番組だけはそんなことはない。
ではなぜ今回出すのが遅れたか。

  • 私の嫌いな桂三四郎が登場
  • 雨宮萌果アナはじめナレーションでも、「雀々師匠」を変なアクセントで発声している

三四郎師については、克服しました。
克服できなかったら、ブログ的にもお蔵入りになっていたかもしれない。

そして桂雀々師の「じゃくじゃく」の、番組での呼び方にズッコケてしまい。
雀々はフラットに読むもの。
番組内で実際そう発声している部分もある。「しゃぶしゃぶ」のアクセントと思えばいい。
だが、時としてパンダの「シャンシャン」のごときアクセントでなぜか呼ぶ。

「失礼だろ!」と私は怒っているのか。そう単純な話でもない。
番組に対し、知識マウントを取ろうというのではないのだ。
そもそも雀々を「しゃぶしゃぶ」のアクセントで読むのは理屈の問題ではない。初代の名である以上、ただの習慣に過ぎない。
そして私も最近、「噺家さんの名前のアクセントに絶対なんかない!」とつくづく思うようになったところでもあって。

そう思うようになる前に書いた記事はこちら。

「令和」に思う噺家名のアクセント

噺家の名前のアクセント(続)

その後、アクセントに絶対がないと思うようになった原因は、次のとおり。

  • 上方落語家で「圓朝」「志ん朝」を正しく発声する人が皆無
  • 金原亭馬太郎さんの「うまたろう」をプロが平板に読むのを聴いて

「志ん朝」に本来と違うアクセントなんてあるのか? でも上方落語家の口から出る追憶の志ん朝は、いまだに「し」にアクセントの来る冒頭高なのだ。
プロがそうとしか口に出せないのなら、もう、上方ではそうなんじゃないかと。
そして「うまたろう」。これ、「喬太郎」のごとく平板に読む。
「ひな太郎」「枝太郎」を平板に読むのもかなり違和感があったのだが、でもまあ、そういうものなんだろうと。
でも馬太郎についてはもう、違和感の極み。
これを機にもはや、シロウトとして、ギョーカイ人の発声に従う意欲を失ってしまったのだった。
だいたい、昔昔亭桃太郎師は平板じゃない。ルールなんてあるの?。
馬太郎さんはいい噺家です。念のため。

新真打・春風亭柳雀師の「りゅうじゃく」は柳若時代から平板だ。
だが、冒頭高で呼んでも違和感はなく、失礼には当たらないと思う。
でも同時昇進の「昇也」を冒頭高で呼んだら、これはヘンでは済まない。なぜ?

私のイチ押しのスーパー前座に、円楽党の三遊亭けろよんさんがいる。
デビュー直後に出くわしたときは、「けろよん」の「ろ」を高く発声していた。バハハーイ。
だがその後2回聴いたら、冒頭高に替わっていた。
こんなもの、正解はないのである。

おなじはなし寄席でも、古今亭文菊師の「ぶんぎく」をかつて冒頭高で呼んでいて、ちょっと違うなと思った。
だが、黒門町の「文楽」ならこのアクセントでいい。「かつらぶんらく」と、続けて読み「つら」を上げる発声も存在したりするのだけど。
文菊師は初代だから、別に冒頭高で呼んでもいいわけだ。理屈でそう理解する。
でも師匠の「圓菊」(平板)に合わせるのが普通なのだろう。

こうした前提を踏まえたとき、平板だと認識している「じゃくじゃく」を「シャンシャン」のアクセントで呼んだところで、怒ること自体おかしいわけである。
雀々師匠が気にしないなら、別にいいのだ。
むしろ師匠「枝雀」の冒頭高に合わせ、そちらが丁寧だと理屈で解釈したのかもしれない。

理屈ではもはや、雀々のアクセントなんかどうでもいいと理解できたのに、でも引き続き気持ち悪さが続いた。
そんなわけでなかなか折り合いが付かなかったのだが、ようやく収まったところ。
今日の内容全部どうでもいい? まあ、そうですね。

こんなどうでもいいこと書いてたら、1日分の分量ができちゃったよ。
本編は明日に回します。

続きます。

 
 

作成者: でっち定吉

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4件のコメント

  1. いつもながら、ハッとした気付きをいただき感謝です。
    噺家さんの芸名のアクセントって、まったく意識していませんでしたが、この記事で思い出したのが、知り合いの大阪の人が以前「志ん朝」や「圓生」を定吉さんがおっしゃるアクセントでしゃべっていたこと。これが大阪のデフォなのかも・・・と。
    といいつつ、記事を見ながら自分が「文菊」や「圓菊」って、どう発音してたのかわかんなくなってきてしまいました。

    1. いらっしゃいませ。
      毎週ラジオで上方落語聴いてますが、あちらのプロ、100%冒頭高で圓生、志ん朝を発音します。
      襲名前の「三喬」師のアクセントですね(さん喬と異なる)。
      プロが発声できないものをどうこう言っても仕方ないやと思ってます。
      ただ、関西の人には「ヤンキー」と同じアクセントですよと教えてあげればわかるのではないかと。
      個人的には、「馬太郎」はたとえ間違っていると言われても「甘太郎」のアクセントで呼び続けることを決意しました。

  2. 私的にはやはり鶴瓶師匠がダントツの違和感ですね。毎日のように聞く名前だけに、冒頭高のアクセントは関西人には耐え難い。

    1. いらっしゃいませ。
      関西独自の3音中上げのことですよね。田中さんは「な」が高いから、つるべ師匠も「る」に来るはずだと。
      地名で言うと、ほりえ、みのお、かどま、みたいな。
      でも「池田」「梅田」「難波」「船場」「阿倍野」、どれも中上げじゃないですよね。
      「池田の猪買い」は冒頭高です。

      鶴光師匠も、「つるこうでおま」と言ううちは、誰も違和感を持ちません。
      でも、「つるこうやない。つるこや」と言われると、「る」にアクセントが来ないとおかしいことになってしまいます。
      まあ、東も西も、お互い気にし過ぎない方がいいのではないですか。

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