笑点お悩み相談大喜利・春風亭一之輔編「キャラを作りたい」

「はい、笑点お悩み相談大喜利です。今日は新メンバー、春風亭一之輔さんのお悩みを解決しましょう。それでは一之輔さん、お悩みをどうぞ」

「このたび笑点に入れてもらいまして。ゆる~く頑張ってるんですけども、先輩方に及ばないものがまだまだありまして」

「はい、このいい加減なおじさんたちに及ばないものなんてないと思いますけど。いったいなんでしょう」

「笑点には欠かせない、キャラづくりですよ。まだ転校したての生徒みたいなもんで、キャラが手探りなんですよ。円楽師匠だったら、『腹黒』とか『やかんの先生』とか、『カネで学位を買った』とか、『落語しない息子を真打にした』とかいろいろあったわけですよね」

「腹黒と先生はわかるけど、あとの二つのキャラはあったかな。あなたも毒舌では負けてないですけどね」

「毒舌だけじゃあ長持ちしなそうですし、宮治とも被ります。それに娘が学校でいじめられるかもしれません。小市民のぼくとしてはもう少しなにか世間で評判のいいキャラが欲しいわけですよ」

「なるほど。確かにこの番組はみんなキャラがついてますよね。もともとは落語の登場人物から来てるみたいですけどね。与太郎がいて、田舎から出てきた権助がいて、キザな若旦那がいて、半ちゃんにご隠居に甚兵衛さんに泥棒ね」

「そう、ぼくは与太郎やれって談志さんに言われたの。50年続けたら本当のバカになっちゃった」

「よかったですね木久扇さん、持って生まれた資質が活かせて。歌丸師匠なんかは、若い頃から隠居でしたよね。ライバルは小圓遊師匠でキザな若旦那。小遊三師匠は泥棒で、半ちゃんで、スケベな若旦那で、キャラ多いよね」

「アラン・ドロンが抜けてるよ」

「落語にアラン・ドロンは出ません。はい、好楽さんなんでしょう」

「一之輔は、転失気の和尚じゃないの」

「それ見た目だけでしょ。そういえば好楽さんは落語の登場人物だとなんなのかな、やっぱり人のいい甚兵衛さんなのかな」

「私は親子酒の大旦那です」

「ああ、お酒大好きですもんね」

「ぼくもそこそこやってきたんですけど落語のキャラに当てはまらないんですよ。ぼくもなにか欲しいですね」

「たい平さんはそうかもね。師匠はわかりやすい権助だったけど、師匠との共通点は地方出身者ってぐらいだね。はい一之輔さん」

「たい平師匠って、こん平師匠に毒盛ったんだから、鰍沢の花魁じゃないですか」

「久々に言われたよ! 今コンプライアンス的に毒はダメ。こう見えてアーティストですからね、ぼくは」

「じゃ、左甚五郎じゃん。羨ましいね、ぼくだって別に落語の登場人物じゃないんだからさ」

「昇太さんは珍念じゃないの」

「それ、子供だろ。そこは本来山田さん担当なんだよ。ぼくはせめて、学校で教えてるんだから紅羅坊奈丸先生にしてよ。さてこんな笑点ですけど、一之輔さんご本人には、なにかキャラの希望はありますか?」

「子煩悩がいいですね」

「一之輔さん、子煩悩で有名だもんね。子煩悩なら子別れがあるけど、いったん離婚しなきゃいけませんよ」

「じゃあ、やめます」

「早いね」

「侍にします。侍は今までいなかったですよね。お旗本です」

「ああ、あなた『普段の袴』とかやるもんね。いいかもね。貫禄のある旗本?」

「そうです。旗本ですが、町人に交じって暮らしています。正義感に満ち溢れているので、隣のエロ侍を叩っ切ります」

「いいですねえ。最近エロ侍を止める人がいなかったんでね。ぜひやってください」

「ほかにもありますよ、一之輔アニさんのキャラ」

「なに宮治さん」

「大月と秩父もマンネリですから、清水と野田で地元対決なんてどうです?」

「清水ってぼくじゃないか! ぼく回答者じゃないよ」

「だから、昇太師匠はこちらに座っていただいて、そちらは私が」

「油断もスキもないな。清水はダメだから、きみたちで対決して。宮治くんの出身地だと東京か、面白くないな。なに小遊三さん」

「いま住んでるところで宮治と対決したらいいよ。一之輔は東長崎だからさ」

「なるほど、宮治くんの戸越銀座は有名になってきたから、戸越銀座対東長崎か。いいね」

「あの、東長崎だけじゃ戸越銀座に太刀打ちできないので、江古田もつけていいですか。大学があったので」

「いいね、じゃそれ行こう。はいたい平さん」

「一之輔さんに、もっといいのがあるよ」

「もっといいの、なんでしょう」

「歌丸師匠だよ」

「どういうこと?」

「だからね、歌丸師匠になって、昇太さんの背後から司会振りを見守るんだよ」

「気持ち悪いわ! だいたい、歌丸師匠は落語のキャラじゃないでしょ!」

「いいかもしれませんね、ぼく歌丸師匠やりますよ。2代目ハゲキャラで頑張ります」

「やるのか!」

「もともとぼく、笑点Jr.時代に歌丸師匠に下ろされたんですから。やる気がないって言われて。だから恩返しに。後輩のわさびが歌丸師匠の隠し子だという縁もありますし」

「恩返しの意味がよくわからないよ。まあとにかく、一之輔師匠のキャラがみっつできましたね。『エロ侍を成敗するお旗本』と、『戸越銀座と闘う東長崎江古田』と、それから『歌丸師匠』ですね。どうですか一之輔さん、キャラが決まって意気込みは」

「え、ほんとにやらなきゃいけないんですか。イヤですよこんなの」

「イヤなのか! なんだったんだ、この時間。まあ、視聴者のみなさんも一之輔さんのキャラ変貌にご注目を」

作成者: でっち定吉

落語好きのライターです。 ご連絡の際は、ツイッターからメッセージをお願いいたします。 https://twitter.com/detchi_sada 落語関係の仕事もお受けします。

2件のコメント

  1. これまでの大喜利ネタのなかでもピカイチです。笑わせていただきました。もしかして、定吉様は新作落語の台本も書かれていたりして。

    これからも空想架空大喜利、期待しております。

    1. ご感想ありがとうございます。

      新作落語書いてますが、ブログに載せてるのがすべてです。
      落語協会の台本募集も一度応募したきりです。
      笑点の力が大部分ですね。

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