「林家つる子」「三遊亭わん丈」抜擢真打昇進決定

基本的には護送船団方式、年功序列で真打を決めていた落語協会、久々の抜擢真打ですよ。
通常、こういうニュースはスポーツ新聞の報道を引用するのだが、まだどこにも出てない。
今日は1本上げちゃったので、4月2日の午前0時に出します。

小三治会長時代に抜擢が3人(一之輔、志ん陽、文菊)が出た際は、会長の独走だと思っていた。
だが、市馬会長は独走するような人ではなかろうから、協会の総意なんだと思う。
市馬会長も、抜擢決定を置き土産に勇退であろうか。

林家つる子と、三遊亭わん丈。
つる子さんは、11人抜き。
わん丈さんは、15人抜き。自分で数えてみました。
わん丈さんはひとり廃業していなければ16人抜きだった。
あんまり○人抜きという数字を独り歩きさせるのは、私は好きじゃない。抜かれる人がいての話だから。

年数は、つる子さんが13年で、わん丈さんが12年でということになる。
入門でなく、前座から数えました。

つる子さんの師匠・正蔵は副会長。
もちろん、師匠が推すわけにはいかない。周りが推挙してくれて、じゃあとなる。
つる子さんの場合、女流のスターを作りたいという意向も大きいだろう。それは悪いことではない。
正蔵師は現在、国立演芸場4月上席主任だ。そしてつる子さんは、今日2日と9日に出演。

わん丈さんは文句のない実力者だが、円丈の最後の弟子と思うと、角度が違って映る。

二人とも二ツ目の売れっ子であるから、不可解ということはない。
ただつる子さんは、さがみはらの受賞はあるが、優勝はこれひとつ。
わん丈さんも、輝かしい履歴だが、優勝は意外と少ない。
北とぴあと、今年から始まったばかりの全国若手落語家選手権大会だけ。
彩の国落語大賞を獲ったばかりらしいが、抜擢において考慮されているはずはなく。
やはり二人とも、NHK新人落語大賞に数回出ているのが大きいのでしょう。
二ツ目の大会は数あるが、やっぱり基準になるのはNHKみたい。優勝したからといって抜擢とも限らないけれど。
わん丈さんの場合、NHKで敗れた吉笑さんを、全国若手落語家選手権で退けたのもポイント高かった気がするな。

わん丈さんは、「滋賀県初の二ツ目」だった。先輩に上方落語家は多いのだけど。
今度は、「滋賀県初の真打」である。地元はさぞ盛り上がるだろうな。
つる子さんについても、「群馬県初の女性真打」というフレーズがはびこるのかと思ったが、実は古今亭駒子さんが初めてだった。
あらら。

ひとつ気になった。
抜かれる先輩たちの気持ちも考えるのだが、とはいえ皆、基本は平凡。
中には私の好きな人もいるが、輝きの度合いが抜擢の二人に劣るのは否めない。
だがただひとり、柳家吉緑という人だけは、無下にはできない。
なにしろこの人「さがみはら」「北とぴあ」の二冠である。
Zabu-1グランプリも獲っている。これはさほど考慮には入るまいが。
二ツ目の賞を二つも獲っておいて抜かれるのは、かなり気の毒な気はする。
渋谷らくご大賞を獲り、NHKで準優勝した芸協の春風亭昇々師よりもなお。この人も一緒に上げちゃえというのはなかったのかな。
師匠(花緑)にもしかして力がないのかしらなんて。理事じゃないし。

芸協のほうでは、桂竹千代さんの抜擢があるんじゃないかと私はずっと言ってるのだが、どうでしょうか。
さがみはらと、芸術祭新人賞を一之輔以来の二ツ目で獲ったという勲章がある。
抜擢されて不思議なキャリアではない。

4月1日付の他のニュース。
落語協会では今年の秋からの新二ツ目の発表。
春風亭いっ休、鈴々舎美馬、柳亭左ん坊の3人。
左ん坊さんには大きな期待をしております。
京大出のいっ休さんは、先日柳家小ふねの会で聴いた新作がやたら面白かった。
美馬(みーま)さんはつい先日、初めて聴いた。

芸協のほうでは、新宿カウボーイが会員になったとのこと。
準会員時代、つまり代演に目当てで私は出向きました。
寄席のクイツキにぴったりだと思う。今のところ、ヒザが務まるような芸ではありません。

(追記)

大事な情報を書き漏らしています。
2024年春の昇進です。
国立演芸場はもうやってないので代替開催ですね。

それから、抜かれる側に着目した記事も書きましたのでよかったら。

抜擢で香盤抜かれても腐っちゃいけない(上)

(2023/6/7追記)

また別の続編。

「林家つる子が抜擢にふさわしくない」と落語協会まで罵るブログを批判する

 
 

作成者: でっち定吉

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2件のコメント

  1. だがただひとり、柳家吉緑という人だけは、無下にはできない。
    なにしろこの人「さがみはら」「北とぴあ」の二冠である。

    つる子さん・わん丈さんの真打昇進記事に気付いた時、私も「吉緑さんは?」と思いました。
    吉緑さんの高座は、普段も「次も聴きにこよう」と思わせてくれます。長講にも積極的に取り組まれています。色々な角度から検討がなされた結果だと思いますが、不思議に思いました。

    1. いらっしゃいませ。ご賛同いただき幸いです。
      確かに、抜擢のふたりに比べたら華は落ちるかもしれません。
      ですが一緒に上げるほうが自然に感じます。
      「上げられなかった理由」を考えてしまいますね。

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