落語協会マナー動画

落語協会の有志が、寄席のマナー動画を公開している。
実に面白い。本業でいつも面白さを追求している人たちの余技は楽しいですね。
表向きにはマナー啓発なのだが、本当の目的は別にあると睨んでいる。
いつも自分たちをひどい目に遭わせる悪い客を、ネタとして昇華し、すっきりしたかったのだと思う。

なぜわかるか。客の私もそうだもん。
悪い客によりいい高座が一席潰されることだってある。そのときに、ストレートに怒りを発散するだけでは芸がない。そんなご難も楽しもうと思う。
私も悪い客を繰り返し当ブログのネタにしているが、同じ心境。
まあ、先日の「100回後ろを振り返る男」には楽しむ要素はかけらもなかったけど。

動画の舞台は池袋演芸場。昼席の前に撮ったのだろうか。
おなじみの二ツ目さんの顔が勢ぞろい。

マナー動画で、悪い客を演じるのは重鎮の柳家さん喬師。
この人も、悪い客に散々苦しめられてきたのでしょう。妙にリアリティがある。
悪い客というのは、要は人間の欲望の開放についてリミットが利かない人なのだ。動物に近いこんな客を演じるのは楽しいに違いない。
「桃太郎師匠みたいなお客さま」と弟子の喬太郎師が言っているが、これはありネタ。
桃ちゃん(芸協だけどな)も、浮気して女房に現場を押さえられても、「私は柳家さん喬です」と言って認めないというネタを披露している。

クレジットによると、監督は林家はな平師。ああ、山田全自動先生と組んでいろいろやってるものね。

動画のテーマは次の通り。

  1. 座席確保
  2. 割り込み(高座の最中)
  3. 私語
  4. 電話
  5. 撮影
  6. 帽子
  7. ガサゴソ
  8. 酔っ払い

2だけ性質がちょっと違うかも。
これは、一般の客が当然にたどり着くマナーではない。最初に誰かが教えてあげないと、一生わからない。
寄席に初めて行く人にとっては、演者というものはスクリーンの向こう側みたいな感覚だと思うのだ。
始めて寄席に来たら、高座の最中だった。この際に割り込もうとするのは、無理もない。
高座の入れ替わりまで待ってくださいねと、これは入口でスタッフが教えてあげて欲しいものである。

池袋でも見たことがある。柳亭こみち師の高座の最中、悪気なく客を立たせて入ってきた客がいた。みんなそっちを見てしまうのでこみち師、「私を見てくださいね」って言ってた。
いっぽう、息子を連れていった池袋で、マナーとして当然後ろに控えてたら、そのときやってたホンキートンク(旧)に、よかったら座ってくださいって言われたので、他の客に立ってもらって座ったこともある。
演者がいいというのだからいいのだ。

2以外は、人間としてもうダメなパターン。
「私語」のくだりで喬太郎師が、「オチとか先に言ってるんじゃないの? このマクラを振ったらこの噺とは限らないんだけどね」と語っているのが妙におかしい。
どうせなら、「ネタ帳ドレミファドン」の好きなメモ魔もネタにすればよかったのに。

写真撮影はたまに、演者から声が掛かることがある。
毎回撮影会やってるのが、芸協の昔昔亭A太郎。落語は上手いのに、最近つくづく嫌いになっちゃったよ。
やたら出番の多い浅草お茶の間寄席の録画、全部消そうと思う。
A太郎ほどひどくはないが、披露目の席などで、特別に写真撮影が許可されることがある。こうしたときは撮って構わないが。
ただ、気になるのは、「写真いいですよ」と言ってから撮影を始まるまでの速さ。
電源落としていたら、こんなに速く写真は撮れません。
だから、動画の要望自体現実にあってないところもある。あ、私は電源落としてますよだいたい。
A太郎の「撮らない人はかたくなに撮らないですね」といういじりが非常に嫌なのは、本来落としているべき電源をつけていて当然、というトチ狂った決めつけがあるからでもある。

許可のあるプロの撮影でも混乱することがあるのは、まさに先週日本橋亭で経験したばかり。

「ガサゴソ」はさん喬師の隣で迷惑がっている一之輔師もネタにしていた。婆さんがよく、用もないのにビニール袋を揉んでいると。
寄席の入口でビニール袋配ってるんじゃないかと。
ちなみに私はガサゴソでなく、慎重に袋を開けての「カサ」で他の客から睨まれた。なにごとも極端はいけない。

「酔っ払い」については、池袋演芸場はコロナ前から飲酒禁止だ。
ただしすでに外でやってきた酔っ払いが入ってくるのまでは禁止されていない。
ご機嫌な酔っ払いが不規則発言をするので、入船亭扇辰師につまみ出され、それを客席で堀井憲一郎氏が観ていたというエピソードがある。

私は以前は鈴本や国立でよく飲んでた。最近はやらない。
飲んでると、寄席の流れと関係なく寝ちゃったりなんかしてね。
酒もいいけど、落語のほうがさらにいい。

私のネタもよろしく。まだ悪いマナーは多々あります。

落語のマナー「ヨセしぐさ」とは

ちなみに古今亭菊志ん師が動画に異論を唱えたという。

いや、違うだろう。
高座割り込み以外は、そもそも人としてネジの緩んだマナーばかりだからだ。
菊志ん師がそもそも、噺家共通のもやもやっとした感覚を持ち合わせていないのではないでしょうか?
それか、動画に出てる兄弟子にケチつけたかったんじゃないかなんて。

ちなみに私でっち定吉のブログも、「録音している」「寄席の模様を細かく書きすぎ」とまるで根拠のない非難を時として受けることがあります。
確立してもいないブログのマナーを勝手に決めた上で、勝手な基準をもとに人を非難するヤカラがいるんだ。
その失礼極まりない「ごくらくらくご」がこのマナー動画を拡散していた。なんなのかね。

ごくらくらくご、移籍した噺家の系図を作って、桂枝太郎師にそういうことはやめて欲しいと言われていたのをたまたま見つけた。
枝太郎師の高座を聴いてきたばかりだからだ。
そうしたら、噺家さんに忖度して消したみたい。
この人は、行動原理の全てが噺家さんのご機嫌伺い基準なんだ。
噺家に全忖度していたら、「演目掲載は営業妨害?」にも従わなきゃいけない。
立川雲水に忖度するのは嫌だなあ。

(続編です)
三遊亭歌る多、マナー悪い客をdisる

 

作成者: でっち定吉

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