R-1ぐらんぷりの客と「演芸図鑑」

R-1ぐらんぷり、やってたのは知ってたが、視なかった。
M-1に比べると私の関心はぐっと低い。ちなみに、R-1のRはピン芸の代表、落語のことだそうな。
落語を普段聴いてると、それ以外のピン芸には関心がなくなってしまう。それをよしとしているわけでは全然ないけど。
講談にはもちろん関心ありますがね。あれは落語と兄弟関係。
あとは、当ブログでも取り上げてるが、寄席の漫談。ぴろきナオユキといった先生方。寄席の芸は好きなんです。
大好きだったイッセー尾形への関心すら、落語に通う頻度が上がってから、著しく減ってしまった。

視てないものにコメントするのは恐縮だが、R-1、客に対する苦情がプロからも多かったそうな。
「いちいち悲鳴とか上げるな、興醒めだ」ということでしょう。
この変な客の正体であるが、落語ファンの私はたぶん知っていると思う。日曜の早朝、NHKでやってる「演芸図鑑」と同じく、エキストラの客なんだろう。
つまり、お金をもらって演芸を聴く人たち。芸能事務所で、ドラマの背景に映る人たちと一緒に募集している。
演芸図鑑の落語、最大12分の短い尺内に綺麗にまとまっていて結構好きだ。「浅草お茶の間寄席」などよりレベルが安定しているところをみると、お蔵入りも結構あるはず。
当ブログでもたびたび取り上げているので、あまり番組の悪口言いたくない。
でも、客が変なのは確かだ。悲鳴までいかなくても、いちいち「エー」とか声を上げている。サゲで「エー」だもんな。
あんたたちの仕事は何だよ、素直に笑うことを求められてるんだろ、と思わずにはいられない。
この演芸図鑑の客の正体について、他局で堂々とバラしてしまったのが春風亭一之輔師。CSのTBSチャンネルで季節ごとに流している「毒炎会」の「かぼちゃ屋」のマクラで喋っている。
NHKとか、演芸図鑑という固有名詞は出さないのに、残らず内幕を語りきるテクニック。どんなテクだ。一之輔師だって今後も演芸図鑑に出続けるのに、よく話すよね。
演芸図鑑の客、わずかでもお金もらっているから、その分仕事しなきゃいけないと意識が過剰で、そのため変なリアクションをするようである。
そう考えると、R-1の客も同じ。世間に不快感を与えたのはよくなかったにしても、別に悪気はない。制作側の期待に応えようと一生懸命だったのだ。
すべての責任は、制作サイドにある。
自然な笑いが欲しければ、一般から募集したらいいわけで。
私も昨年、おかげさまで、そんな制作側の目的に呼んでもらった。公開番組である「笑点特大号」と、「らんまんラジオ寄席」に参加することができて、とても楽しい経験でした。

だからエキストラ客より一般客のほうがいいのか。でも、そうとも言えない。
一之輔師も毒炎会の別のマクラで話している。落語研究会の客は、自分で金を払って聴いているが、あまり笑わない。年寄りばかりで笑う体力・気力がないのだ。
NHK「日本の話芸」の東京収録である、東京落語会も同じようなものだと思う。
落語ファン、お笑いファンを集めりゃそれでいいってもんでもないらしい。これらの会、一応は一般の落語会なので、ADが指示して拍手するなんてのはないんだろう。
一之輔師、先ほどの演芸図鑑の客に続けて、年に一度のNHK新人落語大賞のことも話していた。あの客もまた、エキストラ。
テレビでは映らないが、このエキストラたちにはもうひとつ大事な仕事がある。
多くの演者が次々登場する予選会にも参加しなければならないのである。予選会の休憩時間で、おばちゃんの客の様子を覗くと、それは辛そうにしていたんだと。
私呼んでくれたら喜々として行くけどね。
それにしても一之輔師、その新人大賞もちゃんと優勝しているのに、その客について平気でコメントするというのもすごい。
その権威に頼って落語してるわけじゃないので、余裕があるんでしょうね。



作成者: でっち定吉

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