春風亭柳枝復活、柳亭小燕枝改名、そして談洲楼燕枝

落語界は、ニュースが立て続けにある。
当ブログも、つい先日ついにコロナでネタが切れ、毎日掲載を断念したのだが。現在、出すネタが順番待ちの状態です。

落語協会は、来年3月、5人の真打昇進を発表。

  • 三遊亭粋歌  改メ 弁財亭和泉
  • 柳亭市江  (改名未定)
  • 柳家小太郎  改メ 柳家㐂三郎
  • 春風亭正太郎 改メ 九代目春風亭柳枝
  • 三遊亭めぐろ(改名未定)

現在の二ツ目としての名前、真打にふさわしいものはひとつもない。どうするか決まっていない二人も、改名すると思う。
粋歌さんは弁天さまゆかりの名前になるのですかね。
さて正太郎さんがなんと、令和の時代になお残っていた大きな名前、春風亭柳枝を継ぐのだそうな。
でかい名前なのはわかるが、間が空き過ぎて、まったくピンと来ない。

八代目の弟子であった故・三遊亭圓彌が、遺族と調整がつかず襲名を断念した名前。
直系でもない正太郎さん、よく手に入れたものだ。
いやらしい話だが、調整とはつまり価格の問題なのであろう。
がんばって稼いでください。嫌味じゃないです。

参考記事「襲名と空き名跡

そんな中で、ひっそりと柳亭小燕枝師が改名。柳家さん遊となる。
過去になかった名前なので、襲名とは言わない。今後そう言う人もいるだろうが、言う場合、ほぼ興行絡みである。
柳家なのにさんゆう。これは市馬会長が言っていたが。
柔らかい名前で、あの師匠の芸風的にはお似合いだとは思う。
しかし、なぜ改名? 隠居名ならいざ知らず、あまり聞かない例である。
改名で自由に名前を作っていいとなると、亭号が柳家に戻るのは面白い。まあ、柳亭を名乗る人、超ベテランの左楽師と、芸協にある名前(小痴楽等)を除くと、現在はみな柳家である。

この改名は、もう一つ残ったでかい名前、談洲楼燕枝(柳亭燕枝)復活の伏線なのだろう。
「柳亭小燕枝」という名跡も、歴史的にはともかく、最近においては軽いものではない。
先代小さんも小きんから小三治になる際、いったん小燕枝を名乗ることが決まりかけていたというし。
だが、燕枝ができると小燕枝は名乗りにくいということなのだろうか。燕枝を名乗りたい人に気を遣わせないようにという配慮なのかと想像する。
もっとも、今回新たに柳枝が生まれるからといって、芸術協会の春風亭小柳枝師が名前を変えるなんてことは別にないわけだ。義務ということはない。

ともかく、談洲楼を(5年ぐらいのうちに)継ぐのはいったい誰?
柳家燕弥師が、かつて真打昇進の際に喬太郎師の番組で語っていたのを思い出した。
燕枝ではないが、談洲楼の亭号を名乗ったらどうかと、師匠・権太楼に勧められたエピソードを。だが、難しかったようなことを言っていた。
もし権利者が不明なのであれば、勝手に名乗っても別に構わない。なによりも、お金が動かなくていい。
ただ、よほどメジャーな人でない限り、そんなことはできないと思う。小燕枝師が後進に、被る名を譲る気になった相手でないと。
それに、権利者がいなかったとしても、柳家の人が名乗るべき名前。
なら三三師なのか?
これはいかにもありそうですな。

「柳家つばめ」という名前がある。
柳亭燕路師が弟子、こみち師のためにもらいたいと、手紙で六代目の息子、小きん師に依頼したのだが、自分で継ぎたい小きん師が激怒して果たせなかった。
これを念頭に置いたとき、燕路師の師である小三治御大が、弟弟子の小燕枝師に頭を下げにいったというのは、ありそうに思える。
しかし談洲楼も含め、「燕」という字が落語界でいかに大事に扱われているか、よくわかりますね。

(2020/7/6追記)

この記事のアップ前日の4日に、春風亭正朝師のブログに、柳枝襲名の経緯がすでに書いてありました。
柳枝の名は、ご遺族の意向により落語協会預かりになっていたそうで。
正朝師が動き出したら、後押ししてくれる先輩がいて決まったそうです。
オカネは問題なかったようです。正太郎さん、適当なこと書いてすみません。
ちなみに、後押ししてくれた先輩とは、たぶん明学オチケンの先輩、権太楼師だと思う。

 

作成者: でっち定吉

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4件のコメント

  1. ご無沙汰しています。うゑ村です

    ペヤングでお馴染みの9代目桂文楽師匠の著書で5代目柳家小さん師匠から「桂文楽の名前を継ぐことを打診されたもののその名前の重さから一度は断った」「しかし小さん師匠から「大名跡をいつまでも継がず塩漬けにするのは先人に対して失礼になる」と言われて継ぐことを決意した」といった感じの内容のことがあったことを思い出しました

    今回柳枝を継ぐ正太郎さんにしてもいつか談洲楼燕枝を継ぐかも知れない落語家さんにしても安易に先代と比較して名前負けと言いたくなるかもしれませんがそこは我慢して新しい色を出してくれたらという姿勢でいたいですよね

    1. うゑ村さん、いらっしゃいませ。
      いただいたコメントがヒントになり、一つネタを思いつきました。
      題して「襲名のプレッシャー」(仮)。
      今度お出ししますので、乞うご期待。

  2. お初のコメント失礼します。
    小生も落語ファンで、寄席に通い始めて45年になるオヤジです。小燕枝の名前でこちらの記事を拝見しました。すでに定吉さまにはご案内のことと存じますが、今秋市弥が真打昇進とともに小燕枝を襲名するとのこと。さん遊師の改名との関係がどんな経緯なのかというのがちょっと気になるところです。
    また、これを機に時々でも立ち寄らせていただきますのでよろしくお願いします。

    1. いらっしゃいませ。
      ご案内どころか、小燕枝襲名の記事書いてますからね・・・
      https://detchisadakichi.com/?p=14761

      古めの記事にコメントする際は、その後必ず動きがあるので、いったん当ブログ内見てからにしてくださると幸いです。
      まさにこの状態について、苦言を発したばかりでもありましてね。
      https://detchisadakichi.com/?p=15615

      当ブログの記事、検索によく引っかかるようになったのは嬉しいのですが、たまたま見つけた方の記事だけがすべてじゃないので。
      厳しめですみませんが。

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