江戸家猫八襲名披露@国立演芸場(上・口上)

前の週、本八幡の会に行ってからは真面目に仕事に励んでいたが、ちょっと物足りなくなって出掛ける。
国立でぜひ1日行きたいと思っていた、江戸家猫八襲名披露。
10日の大千秋楽は売り切れだが、1日前ならまだ空きあり。
猫八襲名、公表前からそろそろなんじゃないかと勝手に予想し盛り上がっていたものだ。行かないと。
4月に出向いた上席、下席とともに、今回も国立演芸場、仲入りから入る。つまりいきなり披露目の口上から。

地下鉄の共通1日券を買ったので、用もないのに歌舞伎座を冷やかしに行く。
歌舞伎座はいつも通りの賑わいで、変わったところはなし。
6月からついに幕見が復活するので、観たいなと思っていたところだ。それがまさに澤瀉屋の芝居。

人形町でしばし仕事したのち、明治座も冷やかしに。
昼公演中止のため静かだが、テレビクルーが1社出ていた。
しかし梨園もなんというかなんだな本当に。ジャニーズもだが。
落語の世界だと、自ら命を絶ったのは、桂枝雀、春風亭一柳と先代桂三木助か。
意外といました。
披露目なのに、縁起でもないこと書いちゃった。
しかし、助かったとて最低でも自殺幇助には問われそうだ。

空席はあるが後ろのほうだけで、大盛況。
こんなに賑わう国立は久しぶりだ。
ロビーでは物販。
柳家小もん、柳家小はだの2人はわかるが、この2人とよく似た短髪メガネの人がもうひとり。誰だっけ。
お客に3人似てるわねと言われてた。

後半開幕時の、口上のアナウンスはその小もんさんだと思う。ナレーション実績のある、いい声の人。

幕が開くと、後ろ幕はゴリラが手にウグイスを止めている絵。
「あべ弘士」とある。「あらしのよるに」で高名な人だ。
口上のメンバーは下手より、こう。

  • 司会:古今亭志ん五
  • 林家彦いち(理事)
  • 古今亭圓菊
  • 五代目江戸家猫八
  • 林家正楽
  • 柳家権太楼(相談役)
  • 鈴々舎馬風(最高顧問)

馬風師だけ椅子に座っている。
この姿で高座も務めたのだろうか。

司会の志ん五師は、当代猫八には動物園でやる会に連れていってもらっていますと。
マレーバクの前で一席やります。新鮮でした。
お歴々を前に特にウケは狙わない。
芸協の口上ならもっと露骨に狙っていくだろうが。

彦いち師は、先代猫八との思い出。
あるとき先代と旅の仕事で、森に連れていってもらう。森に挨拶して入るといいよと。
ならばと思い、森に気取って挨拶すると、なんといらっしゃいと応答が。
なんのことはない、猫八先生が声を出していた。

圓菊師は、猫八さんはサラブレッドですが、私も一応そうですと。
猫八は祖父の印税と親の遺産でお金持ちです。祝儀は要りません。猫に小判です。

落語協会色物の重鎮と紹介された正楽師。
「私が重鎮です」
猫八さんと私、年はそんなに変わりませんけど、私もいつまでも高座に上がれない。あと30年がいいところ。後を委ねます。

次が、一番上手の馬風師。
猫八さんは偉い。なにしろ披露目の初日と中日は、お弁当が龜屋のうなぎだ。
女房の分までいただいてありがたい。
馬風師のほうに向き直って、頭を下げる猫八先生。
口上の主役で、横向いた人初めて見た。

椅子に座っていてもお約束の馬風ドミノ。
バタバタが鳴るのに乗せて権太楼師を突き飛ばし、一同見事にひっくり返る。
この先が初めて見るパターンで、権太楼師と正楽師が入れ替わって座っていて、周りからツッコまれる。
地味に進化してるんですね。

最後が権太楼師で、やはり先代の思い出。
ゴルフ仲間の先代が、「息子が難病になっちゃって、ずっと家にいる」と言う。
なら楽屋に入れちゃいなよと勧める権太楼師。
その当代に楽屋で、猫八継ぐ気はあるのかと問い掛けたところ、すぐに力強い返事が返ってきた。
ならばとすぐ一緒に市馬会長に相談に行った。

権太楼師の音頭で三本締め。
9日目なので、九の字に点を打って丸にしましょうと。なので、「いよー」を一緒にやってください。

いきなりここから参加しても、披露目の口上はやはり楽しい。

続きます。

作成者: でっち定吉

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2件のコメント

  1. 馬風師匠のくだりのところ、師匠の声を浮かべて読んでしまいました。
    披露目の口上楽しいですよね。
    馬風師匠は国立では去年秋の若手三人集の真打披露でも出ていましたが、このときも椅子で楽屋外伝を披露していました。
    歌舞伎座の幕見はまだ復活してないのですね。おもだかやも早まったことを。

    1. いらっしゃいませ。
      馬風師の声が浮かべば喜ばしい限りです。
      口上の人数が少なければジャイアンツのボヤキでも入るのでしょうが、今回は短めでした。

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