2023NHK新人落語大賞出場者決定

今年、2023年のNHK新人落語大賞の本選出場者が発表されている。
NHKではかたくなに西暦ではなく令和5年にしてるけど。

出場者の前に、今年は変更事項が非常に多い。

  • 生放送
  • 司会が林家たい平⇒桂吉弥
  • 出場者が6人(東西3人ずつ)⇒5人(東3人、西2人)
  • 東の審査員が金原亭馬生に

生放送はすごいな。やればできるじゃないかNHK。
背景としてはもちろん、「優勝した事実を公表できない問題」がある。
もっともこの問題も、極めて日が浅いもの。
2020年、笑福亭羽光さんの優勝時は、収録後すぐに報道されていた。
さらに時代をさかのぼると、優勝者は隠されはしなかったが、大きく報道されることも多くはなかった。
だからぼーっとしていると、事前の情報ないまま本放送を観るなんて年もあり。結果的に楽しめたりなんかして。
2019年の桂華紋さんなんかそう。もっとも、報道を知らないということは、すなわち西の噺家優勝だなとは思ったが。
2021年から、優勝者について報道統制が敷かれるようになった。いきなりである。
しかしその年から、緘口令を勝手に破ろうとする噺家が現れた。優勝した桂二葉さんの一門の先輩で、優勝者でもある桂雀太師である。
二葉さんに「天狗さし」を教えた人でもある。
当時ツイッターでもって、優勝者情報を公開しようとNHKまで交渉しに行く様子までアップしていた。
優勝者が誰であってもそうしたわけはなく、このツイートで二葉さんの優勝をフライングで知ってしまって残念に思った人もいるはず。
緘口令が不自然なのは事実だが、しかし何も知らない状態で本放送を観たい視聴者の気持ちをないがしろにしてまでする行為ではない。
これ以来、雀太師のことが大嫌いになった。
行政書士としても活動中の雀太師、東でも結構業界の行事に呼ばれていて講演もあるが、行く気にならぬ。

ともかく、優勝者を公表しないやり方は不自然ではあったようで、今年から抜本的な解消が図られることになったのだ。
これは喜ばしい。
今日やるキングオブコントだって、来月のM-1グランプリだって、みんな生でやっている。できないはずはない。

本放送は11月11日午後4時40分。予定空けておかないと。
と思ったら、同時間帯に行きたい会がある。
こちらに行って、個人的にスマホ情報をカットした上で帰ってきて、録画観ようか。ワールドカップのコントだな。
まあ、観覧希望を出しているので、当たったら現地(大阪)に行く。
とはいえ、いまだに応募を受け付けている。まず当たらぬ。

会場は東京大阪の毎年交代だが、司会がたい平師から吉弥師に替わった。
たい平師は毎年務めていたので、急遽の日程変更に伴い、売れっ子のたい平師がブッキングできなくなったなんて可能性もあると思う。
相方が女子アナ(牛田茉友)である点も、南沢奈央が確保できなかった事情があるのではないかなんて。まあ、以前はアナでしたけどね。
だから東に戻る来年、普通にたい平師が復活しているかもしれない。毎年吉弥師でも構いませんが。

人数が5人に減ったのは、生放送を確実にこなすためだろうか?
もともと、東の噺家は西の倍いるから、東3の西2でも別に不公平ではない。
昨年までの東3西3が不公平だとは言わないが。
それはそうと西の若手、二葉さんなど上が抜けて今レベルが下がっているのではないかという気がしている。
レベル低下による定数減が背景にある気がしてならない。
スターが西からも出て欲しいが。

審査員は、昨年のピンチヒッター、小遊三師がとてもよかったが、今年は金原亭馬生師。
馬生師、飄々と柔らかい口調で論評していくのでしょう。売れているとは言えない師匠だが、私はいいと思います。
権太楼師は正式に降板だ。あの出場者を詰めていく感じ、時代錯誤でちっともいいとは思わなかった。
文珍師は続投。
文珍師はいいのだけど、昨年みたいな上位4人同点なんて審査はやめて欲しい。あれじゃ審査放棄だ。

そして出場者。

  • 桂慶治朗
  • 桂三実
  • 春風亭一花
  • 春風亭昇羊
  • 柳家吉緑

桂の2人が西。慶治朗さんは米團治師の弟子で、三実さんは文枝師の弟子。
米朝一門、文枝一門はともにこの大会に強い。
慶治朗さんはよく知らない。上方のラジオでも聴いたことない気がするが。

三実(さんみ)さんもそんなに知ってるわけではないのだが、今年の「上方落語をきく会」で出していた新作「あの人どこ行くの?」は面白かった。
この賞は新作が強いので、期待している。
上方落語家で名古屋出身は極めて珍しい。

女流の春風亭一花さんは、すでに実力者。さがみはらも獲っている。
桂二葉さんと比べても、まったく負けていない人だ。
基本本格派なのだが、独自のギャグを軽く入れてくるところが持ち味。
つい先日、マスク義務のなくなった神田連雀亭で聴いたばかり。
その際、「賞レース用の噺を、昨年NHK優勝の立川吉笑アニさんに聴いていただく」ということを勝手にしていた。
ああ、やっぱりなという。
もっとも当日、同じく賞レース用の噺を出していた三遊亭好二郎さんの名前は今回なかったが。
連雀亭で掛けていたのは「四段目」。上方で言う「蔵丁稚」。
悪くはなかったが、一花さんならではの軽いオリジナルギャグがなくて、ちょっと物足りなかった。
NHKが獲れるタイプの噺ではない気がした。
いっぽうで、6月に阿佐ヶ谷で聴いた「祇園会」(祇園祭)は、NHKが獲れる演目だと思った。
京都の人間を悪く描く噺だが、人のいい一花さんが演ずると、この京男もなんだかいい感じ。
もっとも、西の会場ではできないだろうけど。

春風亭昇羊さんは、昇々、昇吉、昇也と本選に出場している昇太一門。たまに笑点特大号にも出ている。
私は2018年に11席聴いて、当時の私の年間最多タイだった。
古典をよく動かす。そして新作も、擬古典落語もやっていた。
その後、2019年を最後に一度も聴いていない。最近の活動はよく知らない。
この人は、昇吉師が真打になる際の番頭を務めていた。上に昇吾さんがいるのに。
一門からもはぐれている昇吉師の唯一の仲間だと思っていたのだが、最近は全然そうでもないみたい。

柳家吉緑(きちろく)さんは、さがみはらと北とぴあの2冠である。すなわち、NHKに最も近い人。
来春、林家つる子、三遊亭わん丈の二人が真打に抜擢されるが、なぜこのWタイトルホルダーが一緒に抜擢されなかったのか、疑問に思っている。
師匠に力がないという結論に達した。
吉緑さんは明るい愉快な高座を務める人。
NHKを獲れば、自力で抜擢を受けられるかもしれない。というか、優勝していない2人を抜擢させた以上、そうしないわけにはいかなくなる。

ところで、つる子・わん丈は大会の常連。今年が最後のチャンスだったわけだが、出られなかったようである。

ともかく、生放送のNHK新人落語大賞、楽しみですね。

本番の記事はこちら

 
 

作成者: でっち定吉

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2件のコメント

  1. おじゃまします。いつも楽しく拝見しております。

    さて、今回、柳家吉緑が抜擢されなった理由・・・スピリチャルな師匠が星回りを調べたり霊視したりした結果、今回の昇進は見送ったほうが良いと判断したから・・・嘘です。ゴメンなさい。

    1. やはりそうでしたか!

      …いや、乗るな。
      吉緑さん、抜擢に値する華は備えている人だとは思います。
      正直、現状そこまで人気はないと思いますが。今回頑張ればと。

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