柳家小ゑん「ぐつぐつ」(日本の話芸)

なんでも検索で捉えるのを目論んでいるでっち定吉らくご日常であるが、あいにく「柳家小ゑん ぐつぐつ」ではヒットしない。結構聴いてるつもりだが。
狙ってみたい。日曜日の初回放送だから、すぐ書いてすぐ出したら再放送で検索に掛かる可能性が大なのだが、先ほどようやく聴いたのが難点。

ラッキーポッキーケンタッキーがなかった。
ラッキークッキー洗濯機だった。NHKだから気を使うのだろうけど、でもケンタッキーって地名だと思うけど。
それでも紀文は出ていた。佃權は出ない。
ライオンは出てたけどバンドエイドも出ない。
「新宿行くとオカマが喋る」もないが、これは当たり前でしょう。

ぐつぐつは名作中の名作。
冬場は寄席でかなりの頻度で掛かる。子供にも大ウケの噺。
オムニバス式の落語なので、時間は自由自在。ヒザ前でもトリでもできる。
各エピソードをつなぐジングルが、お鍋を持って「ぐつぐつ」の所作。

新作落語のパイオニア、三遊亭円丈も「悲しみは埼玉にむけて」とのネタ交換で積極的に掛けていた。
孫弟子である前座の三遊亭東村山さんも、末広亭でぐつぐつを聴いて噺家を志したという。
そして直弟子の三遊亭はらしょうさんもそうらしい。ぐつぐつ恐るべし。
ちなみに円丈師は頭の上で手を躍らせ、「ぐつぐつ」とやっていた。

小ゑん師のぐつぐつは、中学生のころ初めて聴いた。なんと笑点で。
長くやってるのでどんどん進化していて、エピソードもだいぶ変遷してきている。
今ではフランス野郎のロールキャベツが出たりして。

半世紀近く前からやっている擬人化の噺。
ぐつぐつが切り開いたおかげで、「母恋くらげ」や「鉄道戦国絵巻」も生まれている。
三遊亭白鳥師の「新・あたま山」なんて、人間の臓器が喋る。

ところが今回、オリジナルらしい。原点に戻ったのか。
西小山、という具体的な地名が出てくるものは、最近はやってなかったと思うのだ。
私の持ってるCD(ジャズジャケットのパロディ版ではない)は、西小山だけど。

西小山も地下化され、再開発もあってすっかり綺麗な駅になったけども。
巨大な武蔵小山と比べるとなんにもない街だが、「小さかった女」というカレー屋はおいしいです。
店内ではずっとハンバートハンバートが流れている。
それから駅前の東京浴場では、エルシャラカーニの山本しろう(ボケ)が働いてるはず。

「ふくろ」さんが売れないと嘆いているのは、お客の指名が掛からない女郎からきてるのだろう。
今だったらホステスさん。
そして田舎丸出しのイモはもちろん古典落語から来ている。

「こぶどこ行った。正蔵になった?」は寄席では鉄板のクスグリなのに、エキストラの女性客にはまるでウケてない。残念。
冒頭の「(品川)心中の多いところです。(目黒)サンマのおいしいところです」はちょびっとウケてた。

オリオン座小噺が入っていた。
「オリオンは立ってるか座ってるか」というクイズ。
これ、小ゑん師からは最近聴いてなかった。でも桂鷹治さんからは聴いた。
星座ネタだから当然小ゑんから教わったのだろうと思っていたのだが、原典が聴けて嬉しい。
新作落語も、オリジナルをまず教えるのだな。
あとは柳家わさび、笑福亭たまなどの噺家さんが教わってるはず。

あとぐつぐつのセルフパロディとして、回転寿司たちがレーンを回る「ぐるんぐるん」がある。
私は黒門亭で聴いたけど、小ゑん師もこちらはそうそうやるまいな。
そしてぐつぐつよりも前に、やはり笑点で「しんしん」という、回らない寿司屋のネタケースの噺を聴いた。
ぐるんぐるんに吸収されてしまったようだが、寿司もあまり回らなくなってきたことだし、「しんしん」やってくださらないでしょうか。

NHKでは昔アニメの「おでんくん」を流していた。今なおやってたら、ぐつぐつもやりにくいかもしれない。
ぐつぐつが元祖なのだけど、おでんくんの「箸が伸びてきて外の世界に連れていかれる」設定はパクったと言われても仕方ないかも。
あと煮詰まったガングロたまごちゃん。
おでんくん、決して嫌いじゃないのだけども。

日本の話芸、東京の放送分もすっかり新作落語が増えてきた。米丸、柳昇の昔からあると言われたら、そうかもしれないけど。
ラジオ深夜便で流れた古今亭今輔師の「雑学刑事」はいずれ掛かると見ています。

作成者: でっち定吉

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