米團治喬太郎よこはま落語会 その2(柳家喬太郎「錦の袈裟」)

歌い終わって大きな拍手の中、「あほぼんです」とつぶやく米團治師。

米團治師が出た「花詩歌タカラヅカ」の演目は、「心中・恋の大和路」ですね。
役は八右衛門。
鹿芝居のミュージカル版ということでしょう。
ラジ関寄席など聴いていると「ハナシカタカラヅカ」の情報は耳にするが、こういう漢字を当てていたとは知らなかった。
そして米團治師、しっかり歌が上手い。
本物の芝居にもしばしば出てるだけはある。
そしてこういう多芸の積み重ねがトリの「はてなの茶碗」を分厚くしているのだ。

宝塚の噺は趣味、そして持ち芸につながるのであった。
本編は、甚兵衛さんを喜六が訪ねてきて、稽古屋。
喜六は色事の相談に来たわけではなくて、久々に遊びに来たらしい。
一見栄二男三金四芸のくだりはない。
宇治の名物ホタル踊りから、もっとええ芸を仕込んでもらえと、膝つき立て替えてもらって稽古屋へ。
稽古のくだりはハメモノ入り。
さすが米團治師の踊りの所作は美しい。
手ぬぐい広げ、踊る女の子と指導する師匠とを二重写しにする。

腰を折れ、という指導を聴いてバリバリと表の格子を折る、宇宙人喜六。
折った格子を両手に持って上がり込んでくるのが地味に楽しい画だ。
女の子の持ってきたイモは勝手に食うわ、濡れた草履を火鉢で乾かすわ、やりたい放題。

サゲが聴いたことのないものだった。
師匠が、「あんたに色事は無理や。もうこいでもよろし」。
恋と来いとを掛けている。
お師匠さんの呆れ具合がMAXになったところで、実に切れ味のいいサゲ。

前座の小きちさんが見台と膝隠し、それに座布団を折りたたんだあいびきを持参する。
いつもながら手数がかかる。

袖から、ゆっくり喬太郎師が登場し、大ウケ。
それもそのはず、頭が黒い。米團治師の仕込み爆発である。
大ウケが止まらない中ゆっくりあぐらで着座する。

まだなんにも喋ってないのになんでそんなに笑うの?
まあ頭のことでございましょう。
自分の顔鏡で見たら、場末のスナックのママみたいです。
楽屋の仲間に、「そういうスナックはお通しが手作りだね」と余計なことを言われました。
黄金町にありそうでしょ。
浅草演芸ホールの最寄り駅は田原町ですが、ここにはなし塚というものがあります。
戦時中、不謹慎な禁演落語を埋めたんですね。まあ落語じたい真っ先に埋められるべきものですけど。
先日まで、劇団ラッパ屋で、はなし塚をテーマにした芝居が掛けられてまして。
私も役いただきまして。噺家の役ですよ。
噺家が私と昇太師匠と、ラサール石井さんですよ。
ラサールさんに召集令状が届くという年齢設定ですから、髪の毛白いわけにはいかないんです。それで役のため染めまして。
もっと本当に若い人いなかったのかよと思いますけど。
芝居はおかげさまで東京と北九州で無事終わりまして、脱色してもいいんですが、まあ今後は自然に任せてこのままにしようかなと。
実はもうだいぶ、根元が白くなってきまして。
最終的にはブラックジャックになります。

今日は米團治師匠との会で。確かにふたり会、二人会は初めてみたいですね。
よくご一緒にはなるんですが。
ひとつ先輩の胸を借りまして。

インバウンド客がご当地も多いですね。
中にはなんでこんなところに? という場所まで来てますね。
私見たわけじゃないんですが、横浜でも「ここに観光客いたらびっくり」というのはありますね。
東戸塚駅とか、妙蓮寺とか。これは驚きます。

弟弟子の左龍が、大河ドラマべらぼうの言葉指導をしてまして。
なので私もべらぼう観てます。毎週じゃないですけど。
…録画はしてますが。
今日はせっかくですからはなし塚に埋められました禁演落語をやります。

花魁につねられた青痣と、噛み付かれた(実は自分で噛み付いた)歯形の小噺。
そして町内の若い衆の雑談。
こないだ隣町の奴らがナカでもって揃いの緋縮緬でかっぽれかなんか踊ったらしい。
それはいいが、隣町、つまり俺らだよ、隣町の奴らにはこんな粋な遊びはできねえだろうとそう抜かしやがったってんだ。悔しいじゃねえか。
他の若者にアイディア募るが、いずれも「ふんどしの揃い」のみ。
でも、質屋と付き合いのある奴が、錦10枚、貸してもらえるよと。
これで揃いのふんどしと洒落込もうじゃねえか。

おや、私の好きな錦の袈裟。
喬太郎師からは初めて聴く。
前座の道具屋と、与太郎がばっちりツいてる気はするけど。
本編のフリ(女が来ないこともある)からは、「首ったけ」に行くのかと思った。
喬太郎師、廓噺のレパートリーはたくさんあるわけではない。
あとは品川心中と居残り佐平次ぐらい?
禁演落語全般に広げても、宮戸川と紙入れぐらいではないか。
付き馬とか、突落しなんてやって欲しい。
付き馬の調子いい客(居残り佐平次と同じ造形)が時々奇声を上げたら楽しそう。

喬太郎師の錦の袈裟、与太郎大活躍で嬉しくなった。
続きます。

 
 

作成者: でっち定吉

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