橘家圓太郎独演会@棕櫚亭 その1(前座不足について)

ご無沙汰している巣鴨四の日寄席にでも行くか。
だが裏にもう一つ行きたい会が。
読売ランド前の生田寄席。橘家圓太郎師匠だ。さっそく予約。

圓太郎師、日本の話芸にも出て。実力は広く認められているのだが、あいにく人気のほうはそれほどでもないようで。
こんなに面白いのに。
別に爆笑派ではなく、おもしろ古典寄りの本格派。
そうだとして、やはりたまらなく面白い。
たまに噺家は、橘家圓太郎ひとりいればいい気すらしてくる。

この会、昨年の正月に馬石師の会に来て以来。
狭い棕櫚亭(しゅろてい)は満員。
次回9月3日は兼好師と知る。
会場に着くと、来春真打の決まった柳家小はぜさんのメクリが出ている。
得した気分。

馬の田楽 圓太郎
高砂や 小はぜ
(仲入り)
かんしゃく 圓太郎

小はぜさんかと思ったら、庭からやって来られたのは圓太郎師。
戸がガタついていて、開きが悪い。反対側を開けて登場。
スタッフさんが慌てていた。圓太郎師は「いいですよ、自分でします」と言うが、そうもいかない。
慌ててメクリを替え、そして「師匠、出囃子掛け直しますので」。
改めて圓太郎囃子が流れる。

私の会ですから、私が先に出てくるのですと圓太郎師。

人の縁というものはありがたいものでして。
ここ棕櫚亭のお席亭、池袋まで来てくださって、6月4日のこの会よろしくお願いしますと言ってくださいました。
メール1本で済む世の中、なかなか直接頼みにくるなんてできることではありません。
その際、訊いたんです。
「誰と一緒ですか?」
想定外の質問だったようです。そして、前座さんを連れてきてくださいませんかと頼まれました。
今、前座さんを基本的に外に連れ出さないことになってまして。
入門者が減ってるんですよ。上方も、芸術協会さんも、立川流も円楽党もです。
寄席が回らなくなっているので、今二ツ目が太鼓叩きに寄席に来てます。
われわれの入門時もそうでした。よびの制度で、二ツ目のアニさんがたが来てました。
なので外の会では前座でなく、二ツ目が開口一番を務めるようになってきています。

この会ではおなじみでしょう。市馬師匠の弟子で、市若さんというのがいまして。
近所に住んでるのでやたら勉強しに来るんです。勉強に来たら、せっかくだから一席やっていきなということになって、それで高座数を増やしています。
だから市若でいいかなと思ったら、今師匠について旅に出てるそうで。生意気に。
なので市若に、近所に住んでる二ツ目を順番に訊きました。

鈴々舎美馬なんてこれ(手のひら)ぐらいの可愛い子がいるんですよ。
彼女にしようかと思ったんですが、可愛い子を呼ぶとあることないこと言われそうで。
それに私、小さい子はあまり好きじゃなくて。東京オリンピック世代ですから、大きな人が好きなんです。横幅じゃないですよ。
それで小はぜさんになりました。
今日は午前中に用があったそうで重役出勤ですが。私が太鼓叩いてましたでしょ。
小はぜさん、真打が決まりまして(客、「おう」)。
乗りに乗ってます。お楽しみに。

圓太郎師からは、前座が減っていることについての危機感は語られなかった。
昔から増減を繰り返していたので、アタフタしても仕方ないということかもしれない。
今の中堅の人気の噺家など、みな前座の少ない頃の入門であるから、数と実力との間に明確な関連があるともいえない。
ただ、どんな業界も母数は大事であろう。危機感の強い噺家も多数いるとは思う。

入門志願者が減った理由はひとつではないだろうが、説明が付けやすいのはやはりパワハラではなかろうか。
まあ、ここで膿を出していくしかあるまい。
ちなみに、美馬さん絡みでどう考えてもセクハラになる発言があったので一部自粛。
圓太郎師はうっかり老害なんかではなく、それは2席目のマクラではっきりするのである。
自覚して言ってるセクハラ発言であり、私も大笑いしたのだが、SNSで好きな師匠の評判が落ちるのも嫌なので。
本当に嫌ならこんないいわけ書かずスルーすればいいのだが、それはなんだか卑怯な気がして。

今日はくつろいでいってください。笑いに来た方もいらっしゃるでしょうが、笑いよりも大事なのはくつろぎです。
人生、大事なのは腹を立てないことです。
だからおコメの問題でもね、そんなに腹を立てないほうがいいですよ。
末広亭でもね、おコメの話すると反応いいですよ。
2,500円のおコメが5,000円になって、皆さん怒ってらっしゃいます。
でもね、聴いて賛同してくださる方は、3,000円の木戸銭払ってるんですよ。余裕のある方たちですね。
本当に怒ってるなら、寄席来ないでおコメ買ったほうがいいんじゃないですか。

「落語は反体制であり、政府を批判するもの」だと勝手に認識している人は、こんなの聴いて怒るかもしれない。
噺家はコメの値段に怒るべきだし、万博には抵抗すべきだなんて。
ただ、圓太郎師がしているのは、思想の話なんかではない。
社会的な怒りの材料と、個人の状況を勝手にリンクさせて憤る、その不健康さをちょっとからかっているだけなのだ。
このあとも、さらに2席めのマクラでもこの態度は明らかである。

それにしても、毎回フリートークが面白く、そしてまったく被らないというのはすごいこと。

マクラもまだまだ続きます
忘れないように抜き書きしておくと、あんぱん、マーガレット、乗馬。

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