神田連雀亭ワンコイン寄席 65(下・三遊亭楽八・橘家文吾)

吉原馬雀さんの「サポート詐欺」は大満足。
真打昇進後、暮れの池袋、新作まつりに顔付けされて欲しい。
さらに3月の台本まつりと、夏のプークに顔付けされれば完璧。

次は三遊亭楽八さん。なんと4年ぶりであった。
4年前に結構褒めてたのだけども。

馬雀アニさんは今年真打で。
私はまだ二ツ目でいたい気持ちはありますが、いずれ順番回ってくるんでしょうね。
最近アトピーがひどくて、夜寝るのもしんどいんです。
医者に相談してるんですけどいい薬が月6万円するそうなんですよ。
クラウドファンディングで募集しましょうか。
皮膚炎のせいで、枕も血だらけなんです。

…そんな話されてもなあ。
そういえば、顔の皮膚もなんだか赤い。

亡くなったお父さんが怖かった話。
怖かったが、今になってその言葉をよく思い出す。
親父に倣い、自分の娘は厳しく、ということはなく可愛がっている。

娘さんのことで、それほど聞きたくない情報をわざわざ言っていた。
マクラって、言いたいこと言えばいいもんなのかい?

怖いお父さんから、六尺棒でもやるのかと思ったら、干物箱。
お父さんの声をいきなり男前の作った声でやるので、違和感大。
落語というもの、基本的には声色は使わない。
とはいえ声色とまではいかないが、声自体をわかりやすく変えてくることはある。柳家喬太郎師など、かなり変える。
しかし喬太郎師であっても、声色まで使うとしたら、その際は必ずギャグである。
楽八さんのように声色をキャラ分けのためだけに使い分けてると、違和感なのだ。

20分で干物箱できるのかなと思ったが、中を抜いてある。
若旦那から本屋の善公に、親父に訊かれる内容のレクチャーする場面がない。紙切れを渡され、それで対応することになる。
紙切れにメモいつ書いたのか、展開を追うとやや疑問であるが、それはいい。
善公がひとり妄想に入ってしまって親父に呼びかけられる場面もなく、ラストで善公が女郎の手紙見つけてエキサイトしてる場面もない。それだけ削ると20分でできるのだ。

干物箱という噺は、五街道雲助師のものが私的にはスタンダード。それとはだいぶ違う。
どこから来ているのだろう。

善公のうちの戸は、うまく開けないと落ちていのちに関わるらしい。物騒だ。
身代わりに連れてこられた善公、親父に運座について訊かれた際は、紙を読んで乗り切る。
その後、無尽について親父が訊くが、なんと「むじん」をド忘れして言葉が出てこない。
親父が「なんだっけあの、お金を配るやつ」だったか、そんなことを言うが、誤魔化しきれはしない。
忘れることもあるでしょう。にんげんだもの。
私もブログにしょっちゅう演者のしくじりを書いている。悪いなあと思いつつ。
それはともかく、間違えたらしなきゃいけないことがある。客を救うこと。
間違えたら客に何かしらの心理的負担を与えるので、演者自身が救わないと。
今回演者はスルーしてしまったが、その場合トリの文吾さんが、「あれ、無尽って言いたかったんですね」って言って救って欲しかった。
白鳥師の音源でなんだったか、直前に上がった師匠円丈の出てこなかった言葉について、「あれ、税関って言いたかったんですね」と語っているのがある。
こう言うのは大事だと思いますよ。

決して内容悪かったわけでもないのだけども、ちょっといろいろなんだかなと思わされる高座であった。
今度無尽忘れたら、歌おう。
らららむじんくん。

トリは橘家文吾さん。
この人も3年ぶり。そしてやはり、最後に聴いた高座をかなり褒めている。
しばらく見ないうちに太ったんじゃないか。師匠に食べさせてもらってるのだろうか。

マクラなしでねずみ。
師匠に近い、扇辰師か小せん師に教わったのではないかとこの時点で思う。
両方聴いたことがある。

ずんごろう先生の彫り物を見せてもらった近在の客から、「おらまたかみさんにドロップキック食らうだよ」が出て、扇辰師からと判明。
妙なところで判明する。

いや、ねずみは難しい。本当に。
いい噺だけども、盛り上げる場面が少ない。
講談や浪曲のように、型があればもう少し作りやすいのだろうが。
だからといって落語らしくクスグリ入れようとしてもそうそう上手くいかないし。
ドロップキック以外入れてたわけじゃないが。
でもこの人情噺、やれたらカッコイイし、二ツ目さんがチャレンジしたくなるのもわかる。

でも今の今は、特に響かなかった。
どこが悪いじゃなく、そうなってしまう噺だということ。
ただ収穫はあって、今年聴いた扇辰師のねずみのよさが改めて響いてきた。
話芸は面白く、実に難しい。

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