三三と若手3(柳家三三「不孝者」)

らくごカフェで平日昼間にやってる「三三と若手」。
まだ三度目だが、検討はいつもしている。
なんだか居心地いい会で。
先月の会、予約しようとしたら満席でした。だいたい当日券あったんだけど。
今月はあった。

今回の若手は、三遊亭ときん、三遊亭兼太郎。
ときん師は若手なの? 三三師と同世代なんだが。
ときん師、真打になってから聴いた覚えがない。
兼太郎さんは昨年、私の中で赤マル急上昇(言わないねもう、こんな言葉)した人なのだが、ここ2席個人的にしくじり気味である。
でも楽しみにする。

雨のらくごカフェは、傘の扱いが嫌だなあ。

雛鍔 兼太郎
鼠穴 ときん
(仲入り)
不孝者 三三

兼太郎さん、軽い調子でよかった。
アサヒスーパードライもウケて、ガラ悪い姫路の学校寄席のマクラもウケて。
なんだけども、雛鍔の人情抜きバージョンで勝手にズッコケてしまう。
円楽党で(だけ)はこのバージョン、数回聴いている。
番頭さんがやってきて、たまには顔出してくれ、旦那が会いたがってるよというもの。
モヤモヤする。

ときん師は鼠穴。
兄さんが、3文しかやらなかったことを深く悔いているという、珍しい演出。
サゲも、地口がよくないと思うのか替えていた。
うーん、人情噺は難しい。

仲入り後の三三師は実によかった。
三三師、もちろん高いレベルで深く感服することが多い。
ただ、こちらとピタッと合うということは、正直それほどない。
今日はもう、ピタッと来た。

「もう満足しましたよね。あとはオマケです」

いやいや。
不孝者は小品だと認識していたが、トリネタになるのだな。

この時季は送別会の人たちが道端で大声出してて、よけてくれない。
私はただでさえ、日頃は声が小さいんです。高座ではムダに大声出してますが。
まったく気づいてくれないのでついに大声出して、突破する。「三遊亭白鳥です!」とか言って。
マクラ自体、喬太郎師のオマージュっぽい。

若旦那の噺。
主人に番頭さんが呼ぼれている。飯炊きの清造だけ帰ってきたみたいだがと旦那。

不孝者だ。柳家の人からは初めて聴く。
なにせ市馬師もやらないような噺なので。
当代円楽師の王楽時代に聴いたものとよく似ている。出どころは同じみたい。
小朝師か。

珍しい噺は、必ずどこかに流行らない理由が隠されてるのであるが、でもあまり出ない不孝者は好きだし、人気のない理由はよくわからない。
欠点はやはり、旦那と芸者の金づるによる関係性が現代人に合わない?
でも噺から学習すればいい。私だって学習したさ。

三三師の不孝者は、もう頭から尻尾まで色気が詰まっている。
どこを切っても色気が出てくる、色気の金太郎飴。
これも不思議な感想で。今まで三三師に感じていたのはこういう感覚ではない。
色気は女だけのものではない。
芸者の欣也はもちろんいい女。だが、欣也が出るまでも、色気が渦巻いている。
旦那と番頭、旦那と清造なのに。

ちなみに、チラッと出てくる仲居にだけ色気など感じないのが、三三師らしいのかもしれない。
たしか円楽師はこの人も色っぽかった。
こんなの欠点でもなんでもないけど。

清造はさして脚色しないのにいい感じ。
ぶっきらぼうなのが楽しいキャラだもの。
旦那に着物取られて、家の中で追い剥ぎに遭うとは思わなかっただ。

どこだったか、三三師の声が一瞬クレヨンしんちゃんに聴こえた。
アニメ「ザブトンミミちゃん」ってどうでしょう。

それにしても、スキがない。なくて驚きっぱなし。
ダレ場も楽しい。

飯炊きの清造の着物着てるのだから、当然下男扱いされる。
物置きに押し込められ、燗冷ましをあてがわれてくじける旦那。
でも、息子が親父の顔見たときを楽しみに耐えるのだ。
でもこの噺、その、最大の楽しみの場面まで行かないんだよね。

旦那のボヤキが面白いというより、旦那そのものが面白いのだ。
旦那は、唄を芸者から習うのではなく、ちゃんとお稽古に通って学んだ本格的趣味人である。
実のところ、遊びに目覚めて夢中になってる若旦那なんかよりずっとスケールでかい。
そして唄でも若旦那と違い、間がちゃんと取れる。
噺家の芸談まで隠されているのだった。
だから物置きでもくじけない。
自分の出してるカネでもって、ぺこぺこしながらちびちび燗冷ましを飲む。
これは旦那、かなり楽しんでるな。ボヤキも楽しみのうちなのだ。

落語には「災難を楽しむ」種類のものがあると思う。不孝者もきっとそうなのだ。

今回初めて気づいた噺の秘密がある。
間違えて物置きに入ってきた欣也は、旦那の落ちぶれた姿(コスプレ)を嘆いている。
だが、旦那がほんの手短に否定をしたあとは、一切状況に疑問を挟まない。
そりゃまあ、すべてを知ってる客のために繰り返す必要はないのだけど。
でも「一体どういうこと?」って思わない? 思うでしよ。
この部分、噺のご都合主義から読み解くのではなく、「欣也が旦那に全幅の信頼を置いている」ことに理由を求めたい。
欣也としては、旦那に久しぶりに会えて、思うところはあるにしても、嬉しくて仕方ないのだ。

旦那の口から、欣也を捨てた真相が語られる。
ああ、あのとき自分の言葉でそう言ってくれていたら。

サゲは恐ろしくウケてました。
散々「親不孝者め」ってフレーズが出てるので、ピタッとオチる。

このあと、若旦那はたまげてちょっと改心し、そして欣也は旦那のうちに入って後妻になると思います。
というか、人情噺としてそんな結末にしても不思議ではないな。
少々ヤボだけど。

来月の三三と若手は、初の夜開催だそうです。

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