れん児改メ桂歌近二ツ目昇進記念落語会 その1(桂枝ぴょん「平林」)

7月最終日、余一会で賑わう寄席を尻目に私は本八幡へ。
落語で本八幡へ来るのは三度め。都営地下鉄の1日券が使えるのが、市川駅にはない本八幡のメリット。
本八幡というか、京成八幡。
名刹・葛飾八幡宮の敷地内にある全日警ホール。全日警はネーミングライツですかね。
静かないいロケーション。

先日横浜で披露目を観た、新二ツ目の桂歌近さんを聴きにまたも。
市川は地元らしい。菊之丞師もそうですね。

歌近さん、将来には大きな期待をしている。
とはいえ、現状すでにやたら上手い、と別にそういう評価をしているわけではない。
ただ、「こういう人こそ上手くなるのだ」と私は考えている。
なので成長を見守りたい。
ゲストで柳亭小痴楽師も顔付けされている。

終演後、踏切渡った場所にある新しい建物、市川市役所のフリースペースで書いています。
涼しくて広々としてて快適。コンセントもあって、古いドトールよりいい。
3時40分にハネて、4時15分に書けた。

平林 枝ぴょん
真田小僧 歌近
替り目 歌助
(仲入り)
松山鏡 小痴楽
小すみ
竹の水仙 歌近

 

開演前ロビーにいたら、見たことのある顔が。
小痴楽師の弟子のいっちさんが働いていた。
お客は100人以上入っているようだ。

前座が出る。今月初めて聴いた枝ぴょんさん。
いっちさんは出ないらしい。
出てまいりました私が桂枝ぴょん(首を右に振る)と申します。
名前でウケるが、別に引っ張らない。

昔は字の読み書きができない人がいたそうで、と無筆小噺(アニイも読めねえんだから)。
そこから平林。

これは演出も演技も、語り口もかなり良かったと思う。
前回聴いたたらちねは、言い立てのあとダレる場面があった。
だが高めのトーンのままずっと進む。
半月でいきなり上手くなった? あるいはそうかも。

小僧の定吉が、平河町の平林さんにハガキを届ける。
うちを出て右に向かい、2つ目の路地を左に曲がって橋を渡った平河町なんだそうだ。
…平河町に川流れてたかな、なんてどうでもいいことを思いました。まあ、昔は用水ぐらい流れてたかもしれない。

出がけの場面が面白い。
定吉、出かけるのは嫌がってないのだが、風呂を沸かす用を言いつけられてるのが気になる。
お風呂も難しいんですよ。薪をくべすぎると熱くなりすぎまして、水でうめないといけません。薪ももったいないです。
ここまで語って、「どこへ行くんでしたっけ」。

上方(というか、枝雀型かな)では、旦那をなぶって遊ぶのであるが、そういう演出ではない。
また、風呂の用事があるから行きたくないという型もあるが、それでもない。天然なのだ。
再度教わって、今度は「風呂は上が熱くなってますけど下が水のままのことがあります。知らないで入ると冷たくて、風邪をひいてしまいます。薪ももったいないですし、風邪薬ももったいないです」

そして、「どこへ行くんでしたっけ」。
もう1回これをやる。

自分で作ったのならすごいが。
芸協の平林を熟知してるわけではないが、師匠が新作派だから作ってても驚かないけど。

どうでもいいけど、内風呂って上方落語の名残りだよね。
江戸で商家の内風呂なんて、ほぼあり得ないんだから。まあ、そんなことはいい。

旦那に教わり、ひとり言のすべてに「平林さん」とつけて歩いていく。
ねずみの平林さんが猫の平林さんに追われている。
いい女を見つけて「きれいなお姉さんだね平林さん」。
この女が男と連れ立って歩き出し、ひとりエキサイトしていたら、信号無視して警官に注意され、全部忘れてしまう定吉。

仕方ないから人に訊く。
学生さんは「たいらばやし」。
中華料理店から出てきた出前の中国人は、「ひらりん」。
手が震えて手紙が読めない(でも一緒に震えたら読めた)お爺さんは、「いちはちじゅうのもくもく」。
タバコ屋のおじいさんは「ひとつとやっつでとっきっき」。

中国人とか、センスいいな。
お爺さんのいちはちじゅうのもくもくは、解説なしでびっくり。
「震えてるから、字をバラバラにしただけじゃないか」と定吉。

このあたり、「なんで町の人たちはこんな変な読みかたをするのか」という理由付けに悩んでしまう若手は多いようである。
噺の中で、疑問を解消できた人だけが二ツ目になってもやり続けるのではないだろうか。
解消できなかった人は、封印してしまうのでは。
枝ぴょんさんは、強く自分を納得させようとはせず、しかしながら話の中では最も合理的にそうなることを考える。
タバコ屋は、「違う読み方で」と定吉のリクエストを受けたので、違うように読んでやったのだ。

仕方ないから定吉、教わった名前をつぶやく。
たいらばやしかひらりんか、いちはちーじゅうのもーくもく、ひとつとやっつでとっきっき

ここで「なんで最初のひとつを忘れて、あとのだけ覚えてるんだ! この噺無理がある!」。

いいですね、前座のメタ。
サゲは「祭りばやしの稽古か」「いえ平林です」。

というわけで枝ぴょんさん、いいですね。
全般のトーンが高いのだが、「決してやりすぎない」意識は強い様子。

主役の歌近さんに続きます

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