落語客のマナー違反はどこまで我慢できるか(中)

現場レビューしたので「上」から間が空きました。続きです。
マナー糾弾もいいのだが、「悪い客のおかげで台無しだった」と振り返ることになると聴き手にとって不健康というのがテーマ。

オチを先に言う客

これはもう、人として終わっている。
ただ、終わった中での濃淡はある。

  • 演者に対しわかったと言いたい
  • お連れさんに教えたい

前者は相当にぶっ壊れている。木久扇師匠に「やーねー」と言って許される文化が背景にあるとはいうものの。
後者のほうはまだわからないでもない。
いや、本当はわからないけど。自分自身のまるで間違ったコミュニケーションの方法論を目的にして、周りを巻き添えにしようというのだから、テロ行為には違いない。
そもそも「おしゃべり」に該当してるしね。
白酒師が、「オチを教えてくれてありがとう」という人はいないですからというネタにしていた。

ただこれも、しょうがねえなとは思うものの、そんなに気にはならなくなってきた。
なぜなら、実害はない。
初心者が気づく程度のオチなど、知らないはずはないし。

逆に言うならこういうテロ行為へも、「ただちに実害になるか」で非難されているわけでないということ。
その精神の壊れ具合が他の客の気になるということなんでしょう。
子供の運動会ではしゃぐ痛い保護者を見るような。
スマホ鳴らす客に怒り狂ってしまうのも、その神経にいらだたされているわけだ。
ともかく、狂った人を修正するのは著しく困難。
ふざけるなと言ったところで理解できまい。

たっぷり!

「待ってました!」や「たっぷり!」は様式美として肯定されてはいる。
しかし歌舞伎の「音羽屋!」のような様式にまで到達しているかどうか?
様式に特化している人の掛け声はいい。
だが得てして落語においては、声を掛ける側の歪んだ作為が入る。
「待ってました!」なら、すべての演者に対してやったりする。自分自身大きな声を出せる機会が欲しいだけなのだ。
あと「たっぷり」というセリフは、成り立ってないと思う。
「客がたっぷりと声を掛けたのに応じてたっぷりやる」システムなど、現代の寄席には存在していない。
浅い出番や、ヒザ前で「たっぷり」と声を掛けられても。たっぷりできない。
まあ、「質をたっぷり」と解釈して、声掛けだけはよしとするか?

喬太郎師が「たっぷりやらないよ。1時間喋ってやろうか」と客に口応えしていた。
誰にでも言う「待ってました」に対しては、文蔵師が「待ってるわけねえんだよ、俺、代演だもん」。

ありもののクスグリに拍手

本編を振るための、マクラ小噺のちょっとした笑いにいちいち拍手する行為は、世間では別に悪マナーとまでされていない。でも、私は嫌いな風習である。
マナー講師みたいに、悪マナーを次々作っていって初心者をビビらせるのは本意じゃないが、嫌いなものは仕方ない。
単に、拍手をするのが好きな人が多い席でこうなりがち。
とはいえ、初心者が、ありもののクスグリと知らないで演者を賞賛することまで悪だとは言えないだろうが。
それでも実害はある。演者がこう困ってる。

「あたしが考えたんじゃないんですけど」

ただ、考えた。

ひとつ演者も、無粋な拍手に逆襲してみたらどうか。

「面白いでしょ。あたしが考えたんですよ!」

カウンターとしてはなかなかいいと思います。
安易に拍手してる客を立ち止まらせることはできる。

クスグリ一つずつに手を入れる

これも、世間でどうこう言われている悪習ではない。
ただ、決していい作法ではない。何しろ「ここでしっかり聴いてることを演者に届けたい」という自我が強すぎる。
困ったことに、これをやる人はだいたい、自分が浮いていることに気づかない。
むしろ演者に対し、それどころか他の客に対しても貢献しているとすら思っている。
認知の歪みで他人に迷惑を掛けているわけだ。

パラパラと鳴った拍手の質に対する、演者の逆襲というのは定番。

「そのかしわ手のような拍手がいいですね」

「叩くならしっかり叩く! 叩かないなら叩かない! 中途半端はいけない!」

いっぽう、クスグリ一個ずつの拍手は、演者も対応しようがないみたい。だいたい無視している。
うーん。してみると、やっぱりこれはよくないですね。
まだ寛容にはなれないし、こんな人いたら必ずブログに書いてしまう。

フライング拍手

サゲの最中、拍手を始める壊れた客がいるのだ。

「自分はここで噺が終わることを知っているから、早く叩いて他のお客さんに、その知識を感心してもらおう」

どクレイジーだ。
もちろん、これは絶対にダメで悪マナーの中でも筆頭だ。
ただ、死滅したかもしれない。ブログ10年やってて2回しか遭遇してないので、久しく怒っていない。

あと、フライングはしてないけどやたら早い拍手は、糾弾はしないが好きではない。
位置について、よーいドン。やったぜ、一番早かったぜ。
これも自意識のなせる悪癖。
糾弾はしないが、モヤモヤする。まあ、これに本気で怒るとなると、さすがに怒りすぎだろう。
たまに、客の全員がワンクッション置いてから拍手を始める席があり、そういう際は気分がいいです。

やたら姿勢のいい客

悪いマナーでもなんでもないものをひとつ。
女性に多いのだが、ピンと背筋を張って観ている人がいて。
国立演芸場で、このうしろに当たっちゃって往生しました。
もちろん怒れないけど。

「もっとしっかり、ちゃんと頭を下げて聴け!」

そんなこと言えるものか。
なかの芸能小劇場みたいな、段になってる会場は本当にいいですね。

いつになるかわかりませんが、あと1回続きます。

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