落語客のマナー違反はどこまで我慢できるか(下)

「落語の悪いマナーを取り上げる」記事は多々あるが、その対策を悪マナー撲滅に求めるのではなく、「どうやって気にしないか」というノウハウの3回目。
正確には、私だってなお我慢できない悪マナーもある(特に今日取り上げるのに多い)。でも、一応は立ち向かってみる。
悪いマナーにただ怒るだけでは、何の生産性もない。自分が不快になり、せっかくの高座の思い出を破壊するだけ。
それどころか、単なる怒りを書き散らしたってマナーの悪い客の耳には入らない。
それなら悟りの境地に立ち、「気にしないようになる」のが理想。

だいたい、マナーをただそうと躍起になっている人間、本当にちゃんとしてるか?
スマホ鳴らしを糾弾してるごくらくらくごは、私のブログのスタイルに根拠ないケチをつけてきたやつである。
録音して記事書いてるんだとまで言って。
そのくせ人のブログのネタパクって。
マトモなのか?
マナー啓発がこうして、自称正義の味方により根拠なく暴走していく仕組みもお忘れなく。

ガサゴソ

音を立てて平気な人も多い。
「コンビニのポリ袋を揉む」という行為もあるが、そこまで極端な例でなくても、カバンの中を絶えずガサゴソしてる女性客は結構多い。
こういう人は、「雑音を自分が発している」という仕組みを理解していないのだと思う。
他の客にとって、「よそから聞こえてくる雑音は妨げになる」という一般論を知らないまま歳を取ってしまった。

これはもう、治りませんからね。
まわりが慣れるほうが得です。
この行為で腹を立てないためにはどうするか。スマホと一緒。

「ああ、高座楽しいな…ああ、変な音がするな」

これに限る。

  • 「楽しい高座」を妨げる「変な音がする」
  • 「変な音がする」おかげで「高座が楽しくなくなる」

このように理解してしまうとつらくなる。
あくまで別の事象。
外を救急車がサイレン鳴らして走っていくのに腹が立たない人なら、たぶんこうなれます。
なんでまともなこっちがそうならなきゃいけないんだ! と主張する人については、じゃ、怒り続けてくださいとしか言いようがない。

そういえば以前電車の中で、隣のおばさんがカバンをごそごそしていた。この際は、音を立てたところで問題はない。
ところがだ。カバンを動かす腕を、隣に座っている私に平気でぶつけてくるのだ。
今ならわかる。
「他人にぶつかったら失礼」という常識すらない人だったのだろう。

前かがみ

姿勢のやたらいい女性には文句は言えないが、前かがみになら文句言っていい。
落語よりも歌舞伎座でよく見る。段になってる会場だからこそ、むしろ前かがみに弱いのが歌舞伎座。
歌舞伎座も、スマホ鳴らしと同様、前傾姿勢へ注意は繰り返ししてるけど。

落語の場合、前かがみで見づらいということは少ない(むしろ頭が下がって、見やすくなることも)。
だが、客席のまったいらな上野広小路亭は、前かがみをされると非常に見づらい。
前かがみの人は、高座にのめりこんでいるのか?
たぶん、単なる癖でしょうな。

マナーに厳しい鈴本演芸場では、「脱帽」も告知してますね。
前に座った人が帽子を取ってくれなくて困ったという経験はまだしたことがない。
そういえば雷門助六師の「こり相撲」に、相撲の客が長い帽子をかぶっている前の客に文句を言うくだりがある。
前の客、帽子を取るが、長い帽子の下にそのまま長い頭があって、これは面白い。

ここらへんは、言動によるマナー違反とはかなり種類が違うものだ。
まあ、うっとうしいなとは思うが、怒り狂うほどでも。

100回後ろを振り返る客

私自身が経験したうち、最悪のものがこれ。
両国寄席で遭遇した。なんだったんだろう。一席の最中、10回後ろを向く客。1日では100回。
この時の経験が、今回の続き物を書くエンジンになっているのは間違いない。
つまり、他の客のおかげで不快にさせられた事実、これがたまらなく嫌で、解消したかったのだ。
スマホ鳴らしにあきらめがつくなら、こういうのもあきらめられるかもと。
でもどうかな。
後ろを振り返るという行為は、人のプライバシー空間への侵入である。
一方通行の視線に、わざわざ逆走するもの。人の視線に異物として割り込む行為。
われわれホモ・サピエンスの先祖だって、むやみやたらに人の視線を遮れば喧嘩になることは理解していたはずだ。
だからこそ、普通はこんなことしない(意識がセーブする)わけで。
まあ、かなりやばい人だったのだと思う。

ガラガラなのに隣に座られた

プライバシー空間に立ち入る行為として、合わせて思い出した。
ガラガラの席で、通路側に座ってる私の隣にいきなり腰を下ろしてきた人がいたのだ(年配の女性)。
トナラーというやつだ。
このときは、もう黙って後ろに席をずらした。
こういうのは許せるかどうかでなくて、ひたすら気味が悪い。
でもトナラーの人は、電車とか、他に席が空いてても平気で隣座っちゃうみたい。
感覚が違うのだ。治らないから、逃げるしかない。

不規則発言

高座と客席はつながっている。このことに気づかない(ピンと来ない)ことで生じる悲劇は多々ある。堂々と高座の前横切ったり。
だが、客が高座とつながっていることを過剰に意識しだすのも怖い。
だからクスグリひとつごとに手を叩いたりしてしまうのだ。
そんなのの究極が不規則発言。

たまに浅草に行くと、演者の発言を平気で訂正する客がいて呆れる。
歌武蔵師が、「3,500円ぐらいで笑わせてもらえると思ってたら大間違いです」と発言したら、「4,000円」と訂正したりして。
訂正したくなる気持ちまでわからないではないけど、訂正したって客になんら得はないよねとは思う。

酔っ払いの不規則発言は困りもの。いい気分になっちゃって、演者の言うことに過剰に反応してしまうという。
歌武蔵師は、こういう人を高座からたしなめたらしい。
そして扇辰師は、寄席から叩き出したらしい。

とはいえ、いい見ものでもあったろう。

こういうのとは違って、不規則発言がごく普通に紛れてきたときは、心底ビビった。
大岡山落語会で、さん花、花いち、はな平の3人がトークで、「さわやかハンバーグ」の話をしていた。
そこに自然に「さわやかのどこのお店が空いてるか」と割り込んできた客がいて、これはたまげた。
演者が、質問コーナーですと断ってるわけじゃない。
客のほうはまだ落語じゃなくて、トークだから全然問題ないと思ったのかもしれない。
そんなはずはない。
壇上のトークに勝手に参加できるわけないだろう? あんたの話なんて俺は聞きたくないし。
かなり驚愕した。
これはまあ、常識というものに対する勘違いかな。
平穏に社会人として活動していても、思わぬところで大変な逸脱行為をしでかしている。

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