落語協会前座・柳家小ごと破門(らしい)

あらゆる事象に対し恐れを知らない橘家文蔵師匠。
末廣亭の代演では、コロナに対して啖呵を切って大喝采だったとか。
いつも歯に衣着せぬツイートの数々だが、決して炎上することはない。強い信念を持って生きているからなのだろう。
信念と、そして自分の感性を人に押し付けないこと。他人には押し付けないが、自己の信じる道を突き進む。
最近炎上した噺家と比べればよくわかる。自分自身の暗い欲望を書き込みに秘めていると、読み手に見抜かれるのだ。
この強い信念、ちょうど春風亭一之輔師にも感じたばかりである。

その文蔵師が、なにやらつぶやいている。
大師匠に破門された? 大師匠は、師匠の師匠。師匠が父なら、大師匠は祖父である。
文蔵師が「よその一門」と述べていることから、これが落語協会内の話だとわかる。
さっそく落語協会の芸人紹介ページを見てみるが、廃業者はただ抜けるだけなので、誰がクビになったのかまったくわからない。
ただ、林家彦いち師の一番弟子と二番弟子の、「やまびこ」と「きよひこ」が隣り合っているのにオヤと思った。以前は、誰か挟まっていたように思う。
Wikipediaで古い版を見てみたら、この謎はすぐ解けた。前座の名前まで、まめに更新している人がいるものだ。
破門となったのは柳家小ごとさんである。一琴師の弟子。一琴師のWikipediaにも、元弟子小ごと廃業とすでに書かれている。
大師匠は、人間国宝柳家小三治。
またやったか小三治。自分の弟子を半分辞めさせた人だが、孫弟子までをも。
三三門下で二ツ目昇進直後に廃業した、小かじという人も、そういえば孫弟子だった。
文蔵師のツイート、これを踏まえているのだろう、たぶん。
小ごとさんも4年近くやって、もうすぐ二ツ目なのに。
じき消えると思うが落語協会の彼のページのリンク。トップからたどり着けない(協会内で検索しても出ない)のに、「廃業」とは書かれるのだな。

(2020/7/7追記 ※ リンク先はもう消えました)

もちろん、破門とか廃業というデリケートな問題、知らない人がとやかく言うものではない。これは協会員である文蔵師も含め。
師匠が、耐えに耐えてきてついに爆発したのかもしれない。あくまで可能性としてだが、犯罪行為でもあったのかもしれない。
だが、小ごとさん、落語界の内幕など知らない私から見ても、とても評判よさそうな前座さんだった。
一琴師は、この元弟子に関するツイートをたびたび投稿していたのだが、今回は知らぬ顔の半兵衛である。
しかし文蔵師は、先に書いたように根拠のない誹謗中傷をする人ではない。噺家の了見として考えたときに、やはり許せないなにかがそこにあるのだろう。
そして、小三治にはいくらでも前例があるのである。
若者の前途を摘んで平気でいる国宝なんて嫌だね。
一琴師も、残り短い師匠に逆らって若者の未来を守るというのはなかったのだろうか。このあたりになるともう、知らない以上なにも言えないけども。
ちなみに真打だと、破門になって噺家を辞めなければならないわけではない。一門から外れるだけ。

幸い、先に破門の憂き目にあった小かじさんは芸協で修業をやり直している。柳橋門下で春風亭かけ橋になっているのだ。
せっかく終えた前座期間をまた務めるとは大変であるが、でも噺家ではいられた。
小ごとさんも、芸協に行けるといいのだが。
あるいは、京都出身だそうなので、上方で修業をやり直すこともできるはずなんて思う。ノーコメントの一琴師が、上方の師匠にすでに口を利いてくれているなんていう裏話があればいいのだけど。

寄席の番組に顏付けされているわけではないから、前座の高座を聴くのは本当にたまたま。
小ごとさんは、そんな中では比較的よく遭遇していた。
聴きたくないのによく遭遇する人もいるが、小ごとさんの高座、私はかなり好きだったのだ。

2017/12/16 黒門亭「道灌
2018/4/21 黒門亭「道灌
2018/11/23 たから寄せ「道灌
2019/6/15 黒門亭「道具屋

道灌が3回だが、いずれも当ブログにいい感想を残している。
柳家喬太郎「道灌」という記事をかつて書いたが、これにも影響を間違いなく与えた高座だったのだ。
決して力を入れたりしない、噺の面白さをしっかり語り込む得難い前座だった。
このまま終わって欲しくないのだが。

作成者: でっち定吉

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