タモリ倶楽部で「太神楽第7世代」という特集をしていた。
寄席の色物さんがこの番組に登場するのは珍しい。今日はこのネタ。
出てきたのは以下の若手4人。キャリア7年または8年。
- 鏡味仙成(24)
- 鏡味よし乃(27)
- 鏡味小時(34)
- 春本小助(28)
「春本」という屋号も、鏡味に伝わる名前だそうで。
番組ではこれ以外の情報に触れていないから、私のほうで補足しておく。
寄席芸人としては、仙成さんだけが落語協会。鏡味仙三郎社中。
あとの3人は芸術協会。よし乃さんは、ボンボンブラザース繁二郎(ヒゲの人)門下。
小助、小時のふたりはボンボンブラザース勇二郎門下。普段は丸一小助・小時というコンビを組んでいる。なんで鏡味なのに丸一なのかは私も知らぬが、丸一も屋号のひとつ。
仙成さんは寄席でしばしばお見掛けする。先日末広亭で、失敗したあとなにも自己フォローを入れなかったのを目撃した。「これは来年のお年玉」とでも言って欲しかったね。
丸一小助・小時は一度広小路亭で観た。悪いがあまり覚えていない。よし乃さんはお見掛けしたことがない。
お笑い第7世代がダウンタウンに憧れていないのと同様、太神楽第7世代は、故・海老一染之助・染太郎に憧れていない世代だそうで。無理やりもいいところだが。
染之助・染太郎は、正月よく仕事で一緒になったとタモリ。なにしろ毎年いいともに出ていたのだ。
楽屋ではとても暗い人たちだったとタモさん。
染之助・染太郎は、芸をやらないほうのお兄さん、染太郎師匠が亡くなってから、一気に露出が減った記憶があるのだが。
染之助師匠だけで芸をやっていても、なんだかもう、柔らかみが失われていたように思う。コンビって大事なのだなと思った。
さて太神楽第7世代の4人、番組で見事な芸を披露していたのはいいのだが、トークコーナーではあまりこれというネタがなかった様子。スパっとカットされていた(と番組で言っていた)。
合コンなど初対面で、職業が名乗りにくいという話は、オチもなく切れ味鈍い。
空港でよく止められるという話。製図ケースやバットケースで持ち運ぶ。色物芸人にはおなじみのネタでまあまあ膨らみそうだが、大して盛り上がらない。
その後のギャラの話もいま一つ。「寄席はお金にならないので、イベントなどの営業で生計を立てている」というところでおしまい。そんなの、噺家も一緒だけど。
トークが盛り上がらない点、寄席芸人としてどうなのさと思ったのだ。
太神楽だからトークによる笑いはいらない? そんなことはないでしょう。事実、染之助・染太郎はお笑いスターとして扱われていたのだし。
仙成さん以外の3人はボンボンブラザース門下。ボンボン先生といえば、現代の寄席の爆笑王。
鏡味仙三郎社中も、闘病中の仙三郎師匠が、必ず「寄席の吉右衛門」で盛り上げている。翁家社中も、毎度同じではあるものの笑いが多い。
寄席の色物にもいろいろ種類があるが、マジックの先生なんてほぼ漫談で笑わせてくれるものだ。太神楽にだってもっと笑いが必要だと私は思うがな。
もちろん、寄席初心者にとって太神楽はとても楽しい芸。だが、通う人にとってももっと楽しくする余地があるはず。
結局、今回の太神楽特集で一番面白かったのは、仙成さんの「鍬タピオカ」と、小助さんの「リングライト回し」でそれぞれ失敗したシーン。
鍬タピオカは、畑を耕す鍬にタピオカミルクティーを載せて回すもの。ジャグリングの人がやるやつの変形ですね。
リングライト回しは、スマホ自撮り用の小さなリングライトを傘で回すもの。まあ、新芸だから失敗したって不名誉ではない。
4人とも地味でもうひとつめでたい感じに欠けるので、登場からやり直させられるが、あまり盛り上がらず。
三四郎の二人が進行していたが、クールな芸人たちを相手にやりにくそうであった。まあ、なんとかできないところが三四郎の限界なのかもしれないが。
三四郎・相田に仙成さんがタピオカミルクティーをぶちまけた際、一生懸命これを膨らませようとしていたのだが。
ちなみに、三四郎・小宮はコロナ感染が発表されたが、タモリさんがやや心配。もちろん大丈夫だったろうけど。
今回のVTR、寄席関係だから保存はするが、タモリ倶楽部の中では決して面白い回ではなかったな。
小助さんの明るいキャラは今後楽しみだが、私の感想もそれくらい。
国立劇場の研修に入ると、技術は教えてくれるが、笑いは教えてくれないようだ。4人とも、寄席で1年間前座に入っていたのですがね。
といって、別にテレビで活躍する余地なんてそもそもないだろうから、本格的にバラエティ用の笑いを極めて欲しいわけではない。
それでも、せめて寄席では、寄席用のベタな笑いを取り入れて欲しいなと思ってやみません。
確立していれば、テレビバラエティが近寄ってきたときも、意外と化学反応が起きて盛り上がるものだと思う。