世の中の落語を探す(飲食店編)

(2021/7/5まえがき)
かつて当ブログで、圧倒的な数のアクセスを集めていた記事です。
まちBBS等に張られて勝手にまとめ記事にされ、落語ファンでもなんでもない人が押し寄せたのでした。それで嫌になり、取り下げました。
新たなブログに移したことでもあるので、それを機にこっそり復活します。
さすがにもう、新たな流入はないでしょう。
落語とは、実のところさして関係ありませんが、わりと気に入っている記事なので。

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この世は落語である。たまにつくづくそう思うことがある。
品川区に戸越銀座という、大変長い商店街を持つ街がある。3つの商店街が珍しいことに仲良く一緒に運営されていて、ゆるキャラも「戸越銀次郎」ひとり。
池上線の戸越銀座と、地下鉄浅草線の戸越、2駅を抱えるこの街は、常に賑わっている。
商店街を貫く道路は、関東大震災の瓦礫を敷き詰めてできたものだ。それで、全国第1号の○○銀座になったのだという。その逸話が地元の自慢。
桂宮治さんはこちらにお住まいらしい。
新真打、東急池上線大好きの古今亭駒治師もこの街に思い入れがあるようで、この街が舞台の「お世継ぎ狂騒曲」なんて新作落語がある。
ご存じ「鉄道戦国絵巻」でも、「戸越銀座」は鉄板ウケを取るパワーワードだ。

好きなラーメン屋や銭湯があるこの街に、私はたまに出かける。
その好きな街で、嵐のように去っていったひとつの飲食店がある。
大きな商店街の通りに面しているわけではないので、閉店するまで不覚にも知らなかったのだが、「まちBBS」で後追いすると、これがつくづく落語。
落語といっても、オチなどどこにもないのだけど。

「ピッツェリア恭子」というイタリア料理店。ピザが売り物だが、ピザだけの注文は受け付けない。
これ自体すでに落語なのだが、他にもネタのような話が目白押しの店。
夫婦でやっていて、恭子は奥さんの名前。奥さんがピザ職人で、旦那はイタリアン全般。オープニングの挨拶で、妻のために店名を恭子にしましたと亭主。

  • 2017年の2月にオープン。ピザの無料配布で喜びをもって地元に迎えられる
  • 巨大ピザ窯を導入し、街の人の度肝を抜いての開店
  • 食べログ掲載禁止方針
  • オープン後、まもなく会員制に。だが、なぜか翌年には一般の予約を受け付けるようになる。
  • 予算は2~3万ぐらいと、地元価格からは大きく外れている。価格を書いたメニューも出ない。
  • まちBBSでの評価は、あっという間に低下。主たる理由はオーナーシェフの態度が偉そうだということ。ここをどこと勘違いしてるんだ。中目黒じゃないぞ、戸越銀座だぞと。
  • 地元の客の離反を尻目に、どう手を回したか、雑誌DANCHUに取り上げられる。テレビにも登場し芸能人が紹介。
  • 2018年8月、いきなり店が閉まっている
  • 予約をした客が店に来ると、やっていない。予約客への休業の連絡などなし。
  • その後店の前に貼り紙で、店を閉めているお詫び
  • 11月に旦那のみで復活するが、お知らせもないまま直ちにクローズ

夜逃げ同然の閉店は恥ずべきことだが、世間にないことではない。
だがこの店はとにかく、特に旦那が横柄だったので、そら見たことかというのが地元の反応。
旦那が恭子を殴って離婚になったのだと、まことしやかにまちBBSに書いてある。
それが事実かどうかは不明にしても、それくらいのこと、あったのだろうと想像はつく。

この店の真の姿は、閉店後に明かされることになる。ひどいのは偉そうな旦那だけではなかった。ピザ職人恭子もまた、相当痛い人だったのだ。

予約を取ろうとした客に、「予約するならボトルで、またはワインを最低4杯程度は注文すること。嫌なら結構」と高圧的な恭子。
店の写真を撮ろうとしたら、中から出てきて鬼の形相の恭子。
キャンセル客に、「キャンセルありがとうございます。そもそも会員制なのできていただかなくて結構です。何を勘違いしているんですか?あなたみたいな客がいるから会員制にしてるのに笑わせないでいただけますか?うちは毎日満席で、あなた方に来ていただかなくても痛くも痒くもないので」とメールを送る恭子。

GooGle Mapでの口コミは恐ろしい低評価で、まだ残っている。とにかく、接客に問題があったと多くのコメントがついている。
この一連の事件(?)に落語を感じてならないのは、私だけでしょうか。

作成者: でっち定吉

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