「おとっつぁん、落語のブログは最近どうなのさ」
「なんだ、落語好きが高じて親父をおとっつぁんと呼ぶ息子。おとっつぁんのブログな、引越し後もなかなか盛況だぞ」
「そりゃよかったね。でもなんで引っ越したんだよ。せっかく検索によく引っかかるようになってたんだろ」
「そりゃお前、Googleの広告収入で思いっきり儲けるためじゃないか。このためにわざわざデッチサダキチ・ドットコムのドメインも取ったんだぞ」
「名前がダサすぎだよ。それにだいたい、落語のブログなんかで儲かるわけないだろ。落語好きなんて、購買力の低い年金生活のジジイばっかりだぜ。シルバー料金で寄席に一日中いる社会の底辺層なんだから」
「うむ。実に痛いところを突くな。誰に似たんだおまえ」
「松ちゃんが言ってたけどテレビの視聴率だって、50歳超えた連中は相手にしてもらえないんだぜ。ジジババが興味持つのは夢グループのCMだけだ」
「うむむ。でもな、年寄りだって俺のブログのために役立ってくれるかもしれないぞ」
「そうだね。慣れないスマホで指が震えて、間違えて広告をタップしてくれるかもしれないもんね」
「いちいち図星だなお前は」
「おとっつぁんの考えなんてお見通しさ。いっそ、ブログ中広告で埋めたらいいんじゃねえの。次々誤タップで収入になる」
「さすがに、広告だらけにしたら鬱陶しがって誰も来なくなる。だいたい、広告が増えすぎると俺も面倒くさいんだよ。ログインするのに自分で広告を見せられる羽目になってるんだから」
「そうか、意外と大変なんだね」
「そうだよ。昨日から、出てくる広告の量を少なめに設定しなおしたところだぞ」
「減らしたら収入にならないんじゃないの」
「いいや、そうでないんだ。とにかく人が集まればまず、インプレッション収益が上がるんだ。それから、クリックしてくれる人も増える。要は、優秀なコンテンツを作れば人が集まるし、俺の懐も潤うって寸法だ」
「よ!スーパーニート!」
「そんな掛け声あるか。ちゃんと仕事してんだからな俺は」
「ともかく、人が来ればいいんだね。そうすれば、おとっつぁんが金持ちになって、俺も脛をかじれる」
「ちょっと違う気がするが、基本は確かにそうだ」
「よし、なら手っ取り早いのは迷惑系だな、おとっつぁん」
「またおかしなことを考えたな」
「迷惑系ブロガーになって、炎上させて客を呼ぼう。おっと円丈じゃねえぜ」
「へずまりゅうじゃねえんだぞ俺は」
「人を集めるためだったら、You Tubeもブログも同じことじゃないか。まずおとっつぁん、人の悪口書こう」
「うーん、すでにちょっと書いてる」
「立川流の悪い噺家の悪口なんか、世間に共感されるからダメだろ。人のいい噺家の悪口で炎上を狙おう」
「誰のことだよ」
「そうだね、五街道雲助師匠だね」
「師匠とか付けておきながらどの口で言うんだ。雲助師匠がなにか悪いことしたのかよ」
「もちろん、コロナに罹ったことだね。しかも、弟子の白酒師匠もやったんだぜ。師弟揃ってコロナなんて間抜けだろ」
「仕方ないだろ。雲助師匠はワクチン接種だってしてたんだぞ」
「ノンノン。おとっつぁん、そのぐらいで日和ってたら炎上系にゃあなれねえぞ。コロナに掛かった噺家を、次々槍玉に挙げていこうぜ。鈴本にパンデミックを起こしたのは馬風だって書くんだ」
「悪魔かお前は」
「噺家の悪口をどんどん続けるぞ。『ヨネスケ師匠は人望がない!』」
「それはラジオでナイツが言ってたよ。昇太師匠がゲストのときに」
「円楽師匠は昔カネで学位を買って笑点で自慢してたけども、笑点なつかし版ではカットされてる!」
「なんでお前は21世紀生まれのくせに古いこと知ってんだよ。シャレなんだから許してやれ」
「それで炎上したら、次はそうだな。寄席の悪口だ」
「だからお前はまだガキだってんだ。寄席の悪口とか客の悪口なんてな、噺家さんの常套句なんだよ。池袋なんてそんなのばっかりだ」
「ノンノン。そんな生易しいレベルじゃねえぞ。『池袋演芸場はクラスターの発生を隠蔽していた!地下2階の演芸場は換気がまったく利かない!』」
「どうでもいいけど、なんだよノンノンって」
「新宿末広亭の桟敷席に長時間座ってると体がツラい!」
「それは悪口じゃなくて、ただの事実だ」
「新宿末広亭の二階席は、デブが上がると底が抜ける!」
「中途半端にリアルなことを言うな」
「寄席に来るジジイは便所で手を洗わない!」
「今度は客の悪口か。まあ、これは1年前までほんとにそうだったけど」
「どうだい。これで炎上するかな」
「うーん」
「足りないかい。じゃあ、まだ入れようか。『5ちゃんねるにスレが立った!タイトルは、でっち定吉とかいう老害落語ファンのブログ!』」
「そりゃ、俺の悪口だ!」