亀戸梅屋敷寄席22(上・粗忽の丁稚)

毎日オリンピックを観ているが、そろそろ出かけることにする。
読者の方も、オリンピックはもういいよと思っているかもしれません。でもせっかく落語の記事が出たのに、「なんだ円楽党かよ!」と吐き捨て、読まない人が3分の1ぐらいいる予想。
読者を欺くため、架空の落語をタイトルに付けてみました。
騙された人も、ひとつおつきあいください。

この木曜は珍しく、午前中のメダル獲得もない。別に、私の留守に日本の金メダルが出たからって、困るわけじゃないけども。
今月は、鈴本に次いで2席目。
最近では、実に少ない。ただ本来、このぐらいが適量なんじゃないかと思います。

一応緊急事態宣言下。だが電車は混んでいる。

それにしても、地武太治部右衛門なみの、生来の粗忽でいけません。誰に迷惑掛けるわけじゃないが。
この日、亀戸梅屋敷寄席のトリが萬橘師で、兼好師も出るものと認識していたのだ。
円楽党の誇る両巨頭。
でも、よく見たらこの番組、金曜じゃないか。スケジュールにも正しく金曜で入れているのに、勘違い。
まあいい。行先は他にもある。
両国・江戸東京博物館の三遊亭遊馬師、ツキイチ寄席に行くとしよう。
国技館がオリンピックのボクシング会場のため、表口を封鎖しているという情報もちゃんと仕入れる。
だが朝になって再度確認したら、これは水曜日。すでに終わってます。

改めて1日スライドしようかと思ったが、結局は行くつもりでいた木曜の亀戸へ。
主任の三遊亭道楽師は、一度トリで聴きたいものと思っていたのだ。それに、仲入りが私の一オシ、鳳志師。
地味な寄席にも行きましょう。
クラファンと関係ない、円楽党にもお金を落としましょう。わずか1,000円だけど。

地味なのはわかっていたが、結果は、うーん。普通でした。
悪いわけじゃない。
それに、期待の鳳志師はすばらしいデキだった。

 

寄合酒 楽太
悋気の独楽 好二郎
小言幸兵衛 鳳志
(仲入り)
ちりとてちん 好太郎
鮑のし 道楽

 

お客はつ離れしていた。思ったよりは多い。
テケツにいるのは、毎度おなじみ前座の三遊亭楽太さん。
番組には「しゅりけん」と書いてあったのだが、前座は何の断りもなくよく替わる。
そして、円楽党は前座不足(現在、二人だけ)のためいつ行っても二ツ目がヘルプに入っている。この日は三遊亭好志朗さんがいた。前座名・西村。
好志朗さんは開演前にお帰りでした。

楽太さんが開口一番で、師匠・円楽ゆずりであろう「寄合酒」。
まだ未成年らしいが、酒の噺。以前、らっ好さんにこの件で突っ込まれていた。
前座噺のイメージはまるでないけど。

大きな声を張る楽太さん。
やたら眠くなって、ほぼ寝てしまった。始まる前に缶コーヒー飲んだのに。
前座なんか聴かなくていいんだ、寝ていいんだと思っているわけじゃない。でも気持ちよくて。
味噌の検分は夢の中。
客を寝かすのは、いい噺家の証拠。

二人目は、三遊亭好二郎さん。
昨年、コロナが本格化する前に、ここ亀戸で二ツ目昇進の披露目にやってきた。それ以来。
オリンピックのマクラ。バッハ会長の前の橋本聖子は、前座なんだから長くスピーチしちゃダメだって。

オリンピック期間、落語協会の寄席では、「皆さんオリンピックは観なくていいんですか?」って客に訊いてる気がする。
立川流だと、「オリンピックに興味のないまともな皆さんがお集まりで」って言ってる。いや、知らないけど言ってそう。
(※ 読み返してみたら、好二郎さんがこう喋ったみたいになってました。すみません。私の脳内ツイートなので)

嫉妬は女のものだけではないと、悋気小噺。
弟が生まれた兄が、嫉妬のあまり弟の毒殺を狙い、母親の乳首に毒を塗る。
若い噺家が艶笑マクラを振るのは珍しいと思う。

本編は悋気の独楽。どこかで聴いたスタイルだなあと思う。
帰ってきてから気づいたのだが、この後出る鳳志師が、5月にここ亀戸で披露していたものである。
鳳志師に教わったのだろうか。
芝居好きらしい、鳳志師っぽいもの。定吉がお妾さんに挨拶する際に、男前の声を出す。
定吉は奉公人のくせに、遠慮というものを一切しない。
そして独楽をもらう理由付けがある。旦那が帰ってくるのかどうか、お店で占うためだという。

若々しくて軽快で、いいと思うのだが、もうちょっと好二郎さん独自のフレーバーが欲しいな。
なんだフレーバーって?

続きます。

 
 

作成者: でっち定吉

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