「ああ、困った困った」
「どうしたのさ、おとっつぁん、コカンに皺寄せて」
「冒頭から小ボケを一発ありがとう、落語好きが高じて親父をおとっつぁんと呼ぶ息子よ。何が困ったかというとな、ブログのネタがなくてな」
「ブログなんか書いてないで、本業に励んだほうがいいんじゃないかい」
「それがそうでもないんだ。ここ数日お客さんが多くてな。広告収入も日増しに上がってるんだ。せっかくのチャンスだからなにか書かないとな」
「そうか、そりゃ大変だね。でも、待ってればそのうち誰か噺家死ぬんじゃないか。そうすりゃ追悼記事が書けるだろ」
「俺のネタのために死んでもらわなくてもいい。いろいろニュース探したり、録画してる落語チェックしたりしてるんだけどな」
「いろいろと、ネタのストックしてたんじゃないの」
「うーん、『オチの分類』とか『百科事典』とかかな。まあ、どっちも大して人気ないからな」
「人気ないもの書いても広告収入は上がらないね。資本主義は厳しいや」
「そうだな今日は、新作落語台本に見せかけ、仕上がってないネタ出しでもしてみるか」
「そんなの出して、不評だったらどうするの。まあ、こっそり消せばいいか」
「消さないよ。アクセスの低いまま、生き恥をさらし続けるのさ」
「おとっつぁん意外と自分に厳しいんだね、まあいいや、どんなネタがあるの」
「モテようとして、落語本編が始まったらすぐネタをメモしてる男がいたんですよ」
「人のネタじゃないかよ。まあ、いいや。面白ければ。続きどうぞ」
「なあにいー、やっちまったな」
「男は黙って」
「録音」
「男は黙って」
「録音」
「出禁になっちゃうよー」
「アシストありがとう、息子。さらに行くぞ。『モテようとして、噺家さんがサゲを言う途中で拍手してる男がいたんですよ』『なあにいー、やっちまったな』」
「男は黙って」
「10秒後」
「男は黙って」
「10秒後」
「噺家さんもう袖引っ込んじゃったよー」
「うむ、またアシストありがとう。もうひとつ。『モテようとして、圓朝ものを掛けてる若手がいたんですよ』『なあにいー、やっちまったな』」
「男は黙って」
「露出さん」
「男は黙って」
「露出さん」
「むきだしだよー」
「実に見事なテンプレートなんだが、オチがなかなか難しいな。二段構えだしな」
「クールポコはミルクボーイぐらい偉大だってことだね。あとはなんかあるの」
「コウメ太夫も考えた」
「また人のネタか」
「地味に書きためていたものを放出するぞ。
小三治かと思ったら、小三太でした。チックショー!
志の輔かと思ったら、志ん輔でした。チックショー!
喬太郎かと思ったら、喬志郎でした。チックショー!
圓生かと思ったら、ボヤでした。チックショー!
金原亭かと思ったら、金限定でした。チックショー!
目黒のさんまかと思ったら、マグロとサンマでした。チックショー!
大山詣りかと思ったら、『坊や、ママいる?』でした。チックショー!
猫の皿かと思ったら、猫の血でした。チックショー!
鼠穴かと思ったら、安住アナでした。チックショー!
牛ほめかと思ったら、牛込でした。チックショー!
道灌かと思ったら、反論でした。チックショー!
鰍沢かと思ったら、所沢でした。チックショー!
花見酒かと思ったら、絡み酒でした。チックショー!
死神かと思ったら、池上でした。チックショー!
芝浜かと思ったら、高輪ゲートウェイでした。チックショー!
孝行糖かと思ったら、高校等でした。チックショー!
池袋かと思ったら、玉袋でした。チックショー!
御徒町かと思ったら、おかま父でした。チックショー!
本牧亭かと思ったら、かず味家でした。チックショー!」
「最後のはよくわからないね」
「上野の落語協会に向かう途中に本牧亭があったんだけど、潰れて今はかず味家という料理屋になってるんだ」
「読者の皆さんにも、今日は数で許してもらおう」