東村山土曜寄席 その3(笑福亭鶴光「紀州」)

 

前座のかけ橋さんが、高座に見台と膝隠しをセット。
東村山にはないだろうから、持ってきたのだろう。大変だな。講談はもっと大変か。
仲入りの笑福亭鶴光師は、ゲストという扱い。
別に他の若手が固定メンバーということでもなくて、ベテラン師匠はゲスト枠で出るということらしい。
この師匠も久々だ。
例によって「ほんまに高齢化社会でんな」から。

浅草の話。「今日は病気や言うて(演芸ホールを)休んできましたんや。これから行きまんねんけどな」。
当席の浅草は落語協会の席なので、ウソ丸出し。芸協の席だとしても、病気である必要はないし。
実に気軽にウソをつく。

寄席でも地方営業でも鉄板であろう、脱線がメインの楽しい地噺「紀州」。
マクラで語るような雑談を、脱線漫談として挟み込んでいく。

鈴本にはないだろうが、国立含む他の寄席にはすでに見台と膝隠しが入っている。なんでも瀧川鯉朝師が導入したそうで。
だが鶴光師、「寄席にはこの見台おまへんねん。そやから講釈師に借りまんねん。500円払て」。
いまだにこんなギャグを使っていた! いいけどさ。
「だから講釈師は偉そうでんねん。伯山とか」。ここは妙にウケていた。
見台が今度NHKで特集されますねん。クローズアップ見台。

「次の松鶴」ネタもいまだにやってる。ただ、仁鶴師が亡くなったので内容がちょっと変わっている。
「仁鶴が亡くなって、私が松鶴候補の筆頭ですねんけど、仁鶴の弟子に仁智ゆうのがおまんねん。上方落語協会の会長ですねん」。
人徳があってマジメな仁智が脅威で、松鶴を争うライバルだと。
仁智の趣味はディズニーランドぐらいですねん。私はソープランド。
実際には、弟弟子の松葉が追贈の松鶴になっているので、鶴光師が松鶴になることはないのだが。
仁智師のほうは絶対ないとは言えないけど、笑福亭では傍流の吉本所属だし、たぶんないでしょう。

脱線漫談には意外とおっちょこちょいな米朝の話も。中身はなんだったっけ。とにかく私は、こんなのがもっともっと聴きたい。

ちょっと気になったのは鶴光師、滑舌がずいぶん悪くなっている。
声はちゃんと出ているが、歯が悪いのではないかな。
「紀州」を知らない人には、内容ちょっとわかりにくかったんじゃないかと。
まだ74歳と落語界では若いほうだ。ラジオともども本業のほうも第一線で活躍し続けて欲しい。

仲入り休憩の際にロビーで、帰っていく鶴光師を眺めていた。
かけ橋さんがエレベーターまでお見送り。
もう前座の弟子はいないので、キャリーバッグを自分で持って。「ここでええから」と鶴光師。

休憩明けは三遊亭遊かりさん。若手といっても、熟女である。
遊かりさんのハズレの高座に遭遇したことはない。女流隆盛の落語界の中、アベレージのとても高い人。
私は個人的に、女性を笑点メンバーに抜擢するならこの人がいいと思ってました。予想のほうは宮治でしたがね。

今日は中止かと思ってましたが、やってくださった東村山市に感謝です。そしてこんなにお集まりいただいて。
そしていつものように、体をくねくねさせながら、小池百合子に似てるネタから、女流が多くなったといってもイリオモテヤマネコより少ないです。
私年齢隠しませんから言ってしまいますけど、この前年女だったんですよ。ざわつく客席に「還暦じゃないですよ」。
36と思ってくれた人は・・・いるかな。
そこそこの年齢で遊雀に入門しました。師匠に言われたのは、前座のときだけは、変な男と付き合って妊娠したりしたらダメだよと。
今は二ツ目なので、なにしても問題ありませんが、変な男と付き合うこともなく、相変わらずの生活です。
私の下にも女流がたくさん入ってきましたが、彼女たちはすでに結婚して、子供まで生んでるんですよ。
名は出さないが、三遊亭あら馬さんとかですね。
彼女たちに聞くと、一番大変なのはお姑さんとの関係らしいですね。
そんな噺をと語って本編へ。

最近、ヤフーポータルによく嫁姑関係のマンガが掲載されていて、私はいつも楽しく読んでいる。
ただ、これらのマンガはおおむね、嫁目線で書かれている。そのほうが一般的にはスカッとするのではないかな。
だが遊かりさんの噺は、主人公が姑のほうだった。
この点どうなのだろう。客席は婆さんのほうが多いから、このほうが共感するのかしらなんてちょっと思った。

遊かりさんの、改作ちりとてちんに続きます

(2022/4/11追記)

「酒を飲む噺は負けたくないですね」落語家・三遊亭遊かりが推す落語6選 (NEWSポストセブン)

こちらに「ちりとてちん」のことが載っていました。北とぴあ若手落語家競演会で奨励賞を獲った演目とのこと。

 

 

作成者: でっち定吉

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