芸協を追放されてフリーで活動?立川幸弥って?

定期購読

世の中、一応のルールがあっても例外はしばしば発生するもの。
しかしながら中には、この例外はいいのか?と悩んでしまうものもある。
落語界もしかり。

たとえば真打昇進、といっても世にも珍しきペーパー真打になった三遊亭一太郎。
個人的にはどうかと思うが、でも「誰でも年功序列で真打になれる」という、東京落語界のルールを具現化しただけではあるのだ。
だから「落語なめんな」という苦情は言えても、「真打になるなんてダメ」とはなかなか言えない。
ひとつ言えるのは、よその二世噺家には批判を続けつつ、テメエの息子は活動実績なく真打にさせる円楽師に決していい感情は持てない。

ややこしい人は他にもいる。三遊亭はらしょう。
円丈門下であったが、落語協会は退会していてフリー。
それでも神田連雀亭に顔付けされている、二ツ目扱いのプロといえる。
だがそろそろ、現在の不安定な身分をなんとか解決しないといけない。
2009年入門なので、本来ならもう1〜2年で連雀亭は卒業しなければならない。真打格として。
だがそうなったら身分は?
二ツ目時代を協会で終えない人は、プロ扱いされないというのもルール。
司馬龍鳳を勝手に名乗った現・三遊亭羊之助という人が落語界から非難されたのはこれが理由。
このままだとはらしょう、同じことになってしまいかねない。
もちろん、色物芸人として生きていくのは勝手。東京演芸協会は辞めたそうだが。

ちなみに司馬龍鳳は、落語協会員である三遊亭歌笑師に、司馬龍鳳問題が世間に知られてから身内にしてもらっている。
ただ、それにより三遊亭をもらって、さらなる非難を受けている。
後ろ盾があればいいというものでもないのだった。

らぶ平というフリーの噺家がいる。
この人は真打になっているのでフリーでいいわけだ。落語界では快楽亭ブラック師と同じ扱い。
ただ、弟子を取っている。らむ音という女性。
今後この弟子が、キャリアを積んだときに現在のままプロとして認めてもらえるかというと、かなり怪しい。

はらしょうさんのWikipediaには、神田連雀亭唯一のフリーと書いてあるが、正確ではない。
桂優々さんもフリーだ。
この人は、師匠・雀々がフリーなのでフリーなわけである。
師匠は、上方落語協会も抜けているのだが、ごく普通に東京でプロとして活動している。
優々さんも今後、普通に活動していくだろう。なにしろ上方落語家だから、真打は関係ないのである。
はらしょうと同じく2009年の入門。いずれ連雀亭は抜けないとならないが、それだけのこと。
上方落語家だったら、フリーで問題ないのか?
実はそうなのだった。いささか釈然としない気もするが、成り立ちが違うんだからそういうものと考えるしかない。

さてこのたび、東京落語界にまたややこしい人が現れた。
名を立川幸弥という。
所属団体はないからフリー。しかし師匠はいる。芸協の立川談幸師。
東京かわら版7月号では高座が3件。8月号に名はないが。
7月は、日曜日のいろは亭に2回も顔付けされている。24と31。
寄席に顔付けされるのだから、プロとして扱われていることになる。
あとは30日、道楽亭で独演会だって。

どうも気に入らない。
この人は、楽屋での後輩いじめにより、前座のうちに芸協を追放されたという、実に珍しいキャリアの持ち主。
いじめっ子だからダメ、なんて言いたいのではない。いじめの中身は知らないし。
そうだとして、芸協の理事会でもって処分が決定されたという大掛かりなもの。中心となって動いたのは文治師。
その処分が間違っていた(妥当な判断でなかった)という可能性だってなくはないのだが、でも正式決定なら権威を持つ。

移籍組とはいえ芸協の正会員である談幸師が、芸協の意思決定をないがしろにしている気がしてならない。
フリーで活動させれば協会がどうこう言うことはできないだろうと。まあ、それはそう。
ちなみに春雨や雷蔵師も、協会の外に「落雷」という弟子を持っている。春雨やの亭号も与え。
別に外に弟子取ってもいいけど、「真打」認定してるんだって。
本業は医師だというから立川らく朝師を思い起こさせるが、故・らく朝はちゃんと立川流の真打だった。
雷蔵師、協会内の弟子、風子は真打にさせないのにね。

ともかく、幸弥という人の活動は、決して気持ちのいいものではない。
もともと二ツ目になっていなかったのだからなおさら。
別に、談幸師の古巣である立川流に口を利いてやり、そちらで復帰したというならいいけど。
いじめの件はさておくとして。
・・・まあ、そんな働きかけもあったが、首尾がよくなかったのではないか。そう想像する。

ちなみに私は、芸協の元前座時代(名は幸七)を一度だけ聴いている。3年前の鶴見。
記録は残っているが、記憶はない。
無理やりプロとして残す価値があるようには思えないけど。
なおこの席では、あの立川雲水にも出くわした。ツイッター活動以前のこと。

幸弥さんはもともと、談幸師の前に三遊亭歌橘師のもとにいたらしい。正式な師弟関係かどうかはわからない。
幸七が芸協をクビになった際に、歌橘師は自分のブログに罵詈雑言を載せたらしい。あいにく読んでないが。
まあ、歌橘師も今やなにしてるんだかよくわからない人だから、この件は考慮には入れない。

本日は、なんのこっちゃわからないという人も多いかと思うので、関連記事にリンク張っておきます。
幸七のいじめの件については、過去記事はありません。
今からさかのぼるとなると、5ちゃんねるだけでしょうかね。

三遊亭一太郎

司馬龍鳳

らむ音

春雨や風子

立川幸七

 

続編です。

 
 

作成者: でっち定吉

落語好きのライターです。 ご連絡の際は、ツイッターからメッセージをお願いいたします。 https://twitter.com/detchi_sada 落語関係の仕事もお受けします。