柳家花緑弟子の会9(上・柳家花いち「いいからいいから」)

年の瀬にもう一発現場へ。
27日もPayPay30%還元で北区のスーパーへ。都営地下鉄の1日券を買い、途中で落語も聴いていく。
なんてお得なんでしょう。
神保町らくごカフェ柳家花緑弟子の会、お旦がついているのでワンコイン。
知らずに行ったのだが、101回目の今回が最終回だった。道理で30人以上入って大盛況。
お旦が下りて、来月からは真打と二ツ目の二人会になるそうな。
木戸銭は倍の千円となる。
ということを、冒頭トークで語る。
いつもは3人の会だが今回だけ記念に4人。全員着流し。
勧之助、花いち、緑太、そしてひとり遅れて登場するのが圭花。
圭花さんは、演歌歌手が着るグラデーションの着物。
ウケましたねとご本人。ウケると残念なんです、大真面目に作ったんで。
トークではこの着物をひたすらいじる。
花いちアニさんには、いいと思うよ、ぼくは見る目がないからわからないけどと言われました、と圭花さん。
さらに顔付けにない緑也師が私服で登場し、花束を持ってくる。

すごい人数ですねと勧之助師。師匠にゲストで出てもらって以来ですね。
師匠は1周年記念で出てもらったんですけど、それ以来呼んでないというね。
今日の進行はなにも決めてませんと。
ジャンケンして出番を決める。着物持ってませんし出ませんよという緑也師までジャンケンに参加させられる。

 

トーク
浮世床(夢) 緑太
いいからいいから 花いち
(仲入り)
寝床 勧之助
おそばの食べ方 緑也
鬼の面 圭花

ジャンケンで勝った緑太さんがトップバッター。

先日、落語協会会長の市馬師に稽古付けていただいたんですね。
稽古の後、メシ食おうということで、中華料理店に連れていっていただきました。
そうしたら、会長の後ろに知った人がいるんです。柳亭小痴楽アニさんです。
アニさんと目が合うと、挨拶に来てくださいました。
今、テレビの打ち合わせで来てるんですよということでした。
アニさんは挨拶して戻っていきましたが、テレビのディレクターさんでしょうか、見てた関係者が言うんですよ。
「おー、すごいな。ここにもファンがいるんだな」。
市馬会長、「オレもまだまだだな」ということでした。

大きなネタも用意していたようだが、最初の出番なので浮世床(夢)。
小痴楽師の得意な噺だが、関連はあるのかないのか。

ちっとも悪くないのだが、普通ですね。
ちょっとサゲ付近ウトウトしてしまった。

続いて花いち師。
今年3席目だ。2席はいずれも爆笑新作だった。伝説の「ママチャリきょうこ」も聴けた。
寄席のトリ取って欲しい人です。いずれとは思う。
落語協会の真打香盤を見ると、若手の新作派が実に少ないなと思う。
和泉師ぐらいか。わさび師は古典のほうがいいし。
そこに入る貴重な人である。古典も面白いけど、今は新作のほうが多いのだろうな。
花いち師は、どちらかというと芸協にいそうなタイプだ。

師匠をしくじった話。
タクシーで無言だったので、師匠に稽古をお願いしてみる花いち師。

「師匠、稽古してください」
「いいけど、なにやるんだ」
「やかんです」
「俺、持ってねえよ!」

運転手さんも黙り込んでいましたとのこと。
どう持っていったのか、新作落語へ。嬉しいことに聴いたことのない噺だった。

学生時代からの友達4人で旅行に出かける女性グループ。登場人物はこのうち3人。
おばさんたちは旅先で一時立て替えたお金の精算が、ルーズなくせに恩着せがましい。
500円のお釣りを返そうとすると、「いいからいいから」と大げさに手を振って拒絶する。
しかし、その程度では立て替えた分に全然足りていないので、ついに出してるほうが爆発する。

いつも書いていることだが、東京の新作落語には必ず飛躍の要素が入っている。
上方はそうとも限らない。日常のスケッチの新作も多い。
花いち師の「いいからいいから」は、東京の新作には珍しく、日常のスケッチから生まれたらしい作品。
これが古今亭駒治師であれば、おばさんのスケッチ(例:ガールトーク)であっても、KGBを出してきたり、わざわざ飛躍を作ってくるのだが。

といっても、十分バカ噺で実に楽しい。こんな人いないという点は飛躍でもある。いそうなんだけど。
ちなみに飛躍なしで作る落語の場合、どこかに「悪意」が入りそうだ。客にフックを掛けるため。
だが花いち師は人がいいので、おばさんたちはみな天然。悪意はなさそうだ。
「全員が被害者」っぽい。
地に足の付かない演者にマッチして、実に楽しい。

怒りを爆発させたついでに、細かいジュースの代金も含めて精算することに。
だが、ささやかな抵抗として、小銭を一掃しようとする。
20円をわざわざ1円玉20枚で支払うが、結局また帰ってきたりなんかして。

演題は花いち師の公式で見つけた。

続きます。

 
 

作成者: でっち定吉

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