一之輔と円楽の違いを軽く語る

帯状疱疹を発症するわ、くしゃみがとまらないわ、満身創痍です。
帯状疱疹は、薬飲んでるからいいとして、くしゃみが続くようだと落語には行きづらい。
息子に「くしゃみ講釈かよ」と言われた。ヘークション。
「くしゃみ伯爵」という新作落語のタイトルを思いつきました。書かないと思うけど。

ちょっと「現場で拾った珍しい古典落語」は中断しまして。

毎週金曜日は、ニッポン放送のラジオ「あなたとハッピー」。
笑点メンバー決定後、初の一之輔師の生放送だ。
放送の途中だが、さっそくネット記事が4本出ている。すごい注目度であるな。

リスナーから寄せられた「チーバくん」の話題で、「富津市は(チーバくんの)チ○○ンです」と語る一之輔師。
国民的番組に選ばれたからって、決して日和らないぞという強い意志。
こんなものは記事化されない。

やはり記事化されないのが、「オバちゃんマン」コーナー。普段聴いてないと意味が分からない。
今回の電話ゲスト、レジェンドオバちゃんマン、鎌倉の「よしえさん」は一之輔予想をあちこちで言いまくっていたそうな。
よしえさんはサウナの(音の出ない)テレビで発表を見ていたそうで。その後友人知人から、「おめでとう」が殺到したとか。
ラジオのアシスタント増山さやかアナも、月曜に会社でやはりおめでとうを言われたそうだが。

平和だね。

ところで、思い立って笑点を取り巻く落語好きの認識を図にしてみました。

笑点は、この世をあまねく覆っているという仮説。
ただし、落語好きの最も大事な領域(ドーナツの中心)においてのみ、やや影が薄い。

笑点なんて、という落語好き、実は耳が肥えてくる中で、ドーナツの中心に潜り込んでしまったのではないか。
実はこの先において、再度笑点のすごさに出逢う日がくる(かもしれない)のである。
笑点なんてくだらないもの観てるんじゃない、と叫んでるあなた、あなたはまだ突き抜けていないだけかもしれませんよ。
ドーナツの周辺には、「チームプレイ」とか「話術」であるとか「コミュニケーション」などすべてが詰まっているのだ。

それから、中堅噺家も一緒に盛り込んでみた。
好事家からは好まれるが、一生目立つポジションには行かない噺家。もちろん、落語を底支えするためには大事な人たちだ。
この人たちは、二度目の笑点遭遇はなしえないのではなかろうか。
初心者領域のみに存在する笑点領域を抜け、その先を知らずに死んでいくのである。

スーパースター一之輔になると、笑点が落語界においてどこにあるか、先刻承知なのです。きっと。
だから、空洞の先が見えた。ならば断る理由はない。

さて、一連の一之輔ニュースの、ヤフコメなど見てちょっと気になっていることがある。
「一之輔は皮肉屋で、円楽の後継者として最適だ」みたいな。

そうかあ? と思った次第。
私に言わせるとまったく違うんだけどな。立ち位置も。

円楽師はとにかく、上に立つ人だった。
悪い言葉だと、マウンティングである。
お前は番組のシャレに物申すのかって? いやいや、シャレに人間の本音が現れるし、その人の欠点も見えてくる。
上に立つ円楽師のギャグは、おおむねこんなのだった。

  • 一番面白いメンバーが司会をする。当然オレ。
  • 好楽は落語がヘタクソで人気もない
  • 三平はどうしようもない

いずれも、シャレの中からしばしばどす黒いものが顔を出していたなあと。
落語が特に上手いわけでもなかったこの人、いったいどこがいいのだろうと思うことも多々あり。
司会の昇太下ろしは背景にパワハラがある。
好楽disなど、いまだに真に受ける視聴者も多い。もちろんこのネタで、好楽師は計り知れない恩恵を受けている。だが、問題にしたいのは態度の話。
最後のなど、まっすぐに三平降板後の、ラジオでのパワハラにつながった。
つまり実のところひとつもシャレでないのだった。

それに比べると、一之輔師は全然違う。
ラジオを聴いていればわかるが、この人はどんなネタでも必ず最後に自分のことを笑う。
無理に卑下して笑わせるなんて、嫌らしいやり方ではない。
「本来はみなさんと同じ立ち位置です。でも、他人を笑うときだけちょっと背伸びします。でも、ニンにないのですぐ元のポジションに帰ります」である。
ホームポジションから上下すれば、客は笑う。無理に自虐に入り込む必要もない。
ナチュラルな自分笑いが常にできている人なのだ。

円楽師は自分のことは笑わなかったなあ。わずかにあったのが、「腹黒(と呼ばれている)」と、「友達いない」だけだったもの。
それどころか、常に権威を求めていた。
天上にいる歌丸翁の権威までも。
落語の団体統一という理想も、ここに権威への渇望を嗅ぎ取ってしまう。

一之輔師は笑点でも、「あ、オレごときがこんなこと言っちゃってるよ。調子乗ってんじゃねえよ」という、ギャップの笑いを得にいくだろう。
高い立ち位置の必要な政治批判など、そんなにやらないと思っているが、下手にやるとケガをすること請け合い。

今週以降も楽しみですね。

作成者: でっち定吉

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