新真打の師匠、好楽師の漫談については、珍しいので明日別途取り上げたいと思います。
主役である、三遊亭とむ改め錦笑亭満堂師のトリの高座を。
ちなみに、好太郎師の高座はつい寝てしまいました。
以前も聴いた、厚かましい男の酒の小噺を聴いたのは覚えている。
満堂師のトリの高座の前に、前座のけろよんさんが写真らしいパネルを大量に運んできて、高座の横に置く。
満堂師、「ちゃんと足袋履いてきました」と客に見せる。
「服のことではよくしくじります」とのことだが、赤い靴下を披露目の席でもってうっかり履いてしまう人なんていないでしょう。
服に話を強引に寄せて、亀戸梅屋敷の3軒隣にあるブティック、「M Story」の話。
仕事で梅屋敷に来るたび、この婦人服の店が気になっていたとむさん。
ある日、犬のイラストを書いたTシャツがやたら気になる。一点物でレアということで、つい買ってしまう。
犬のTシャツ着た写真を客に見せる。
また梅屋敷に来ると、一点物だったはずの犬のTシャツ、増えている。
店主に抗議すると、なんだかケムに巻かれ、結局また買ってしまう。
その後梅屋敷に来るたび、店頭のPOPで「三遊亭とむさん予約済み」とかなんとか、勝手なことが書いてある。
両国寄席に来ていた三遊亭わん丈さんのためにも服を買い、両国で一緒に撮った写真も見せる。
ここで買ったわけじゃなく、BEAMSで買った個性的な服が、見知らぬ外国人、そしてヨネスケ師匠と奇跡的に被った話。
そしてブティックの店長であるおばさまを呼んで、高座に上げる。
店長からおもしろ感謝状が読み上げられる。やりたい放題だな。
15分使って、「以上、フリップ洋服漫談でございました」。
残り時間はそんなにないので、必然的に軽い噺になる。
古典落語の「手水廻し」だった。この人の「都々逸親子」以外の古典落語聴くのは初めてだ。
大坂から来た宿屋のお客さんが、いつもの調子で女中に「手水廻して」と頼むが、女中は意味がわからない。
番頭さんも主人もわからないので、ズクネン寺の和尚に聴きにいくと、ちょうずとは「長頭」だと教わる。
全体的には、最近聴いた萬橘師のものに似ていた。
ただ、「長い頭の権助」が、頭を振り回すシーンを徹底してフィーチャーする。
自分の顔の上に長い頭を表現し、徹底的に振り回す。
「昨日好楽と飲んでたから、振り回すと辛いな」とか言って。
この型、日本の話芸で三遊亭圓歌師(当代)がやってなかったか?
とはいえ、あの師匠に教わるとは思えない。不祥事があったからではなくて、噺を教わる人がいるとは考えにくい。
権助は自分の長い頭が芸になると聞き、勇んでやってきたのだ。
なのに大坂の客は怒ってしまう。
権助のまま満堂師、「せっかくここまでやってるのに拍手もないだ」と催促。
主人と番頭が大坂に出向いてからはそれほどはいじらない。
ただ、サゲを変えていた。
なんというか、一言でいうと「スターの高座」だ。
錦笑亭満堂は円楽党の期待のスターであり、ご本人もスターとして振る舞う必要がある。
私が連想したのは、笑点のスター、林家たい平師の落語である。
たい平師、私はタレントとして非常に敬愛していて、落語協会の会長をやって欲しいと思っているぐらい。
だが本業は決して好きじゃない。
とはいえあの師匠の高座は、まさにスターのものだと理解している。
好き嫌いを当てはめるものではない、とにかくキラキラした高座なのだ。
ちなみに、日曜の演芸図鑑に出てた蝶花楼桃花師の高座もそんな感じでしたね。
新真打錦笑亭満堂師、まさにこういった意味でスターであり、その高座もスターのもの。
私は師の新作落語は今まで普通に面白いと思っていたのだが、スターとは、こういう古典落語をするものなのだ、きっと。
披露目の席で、極めてスターらしい一席を聴いた、そう思う。
わからないのは、この日のヒザ・好の助師もだし、番頭の好二郎さん、前座のけろよんさんまで、好楽一門に流れる「本格派」を強く感じさせる高座だったということだ。
なお、本格派と言っても一切ふざけていないということではなくて。
スターが誕生する披露目において、ワキを固める若手がみな本格派。
これをどう理解していいのかわからなくなってしまった。
ちなみにスターがどういう存在かわかり尽くした好楽師の落語は、スターの落語ではないと思う。
兼好師はスターっぽいが、本業の見事さがスターっぽさを生み出しているのであり、「スターの落語」ではない。
とにかく錦笑亭満堂師は、今後もキラキラした高座を務めてスターとして君臨するであろう。
たい平師と同様、大阪でもウケるんでしょう。