三遊亭東村山勉強会(上・新作ネタおろし)

お盆のプーク新作落語寄席で遭遇した前座が、三遊亭東村山さん。
前座と思えぬ大物感に驚いた。
二ツ目の先輩たち、達者じゃなかったら食われていた。

高座で宣伝していた勉強会を予約して出掛ける。第1回。
予約千円。予約しなくても千円。
新宿Fu-(+)は初めて来る。新宿永谷ビルの8階にある貸会議室。

前座の立場上あまり宣伝できないようで、東京かわら版には載ってない。
前座の会に出向くのは初めてだ。そもそも前座との出逢いはすべてが運。
落語協会の前座で最近すごいと思った人は、ぐんま、きよひこ(現きよ彦)、り助(現小ふね)、ごはんつぶ。
すべて出逢いは運。
東村山さんには、先輩たちに負けない大物感がある。

職安通りのドトールにいたら、雨が。
雨雲レーダー確認するとまさにこれからゲリラ豪雨がやってくる。小降りのうちに急いで会場へ。

会場にはBGMとしてドリフターズ全集が流れている。
志村けんが参加してる曲は、東村山音頭だけだと思うが。
お客さんは女性ばかり。
別に男前目当てじゃない、と思う。

  • 新作ネタおろし(タイトルは「戦慄サプライズBP」)
  • 初天神
  • 三遊亭東村山のプロフィール紹介
  • (仲入り)
  • りんご亭アップル小噺
  • CM家族

東村山音頭まで流れたところで開演。
出囃子はドリフのビバノン音頭。登壇してから自分でリモコンを切る。

初めて一人でやるのでキンチョーしています、と楽屋を見せてしまう。
人の会に呼ばれて一席やって1万円もらうなんて、全然軽いもんですね。自分の会は全然違います。
今日の予定について。
最初に新作ネタおろしします。一番キツいのを先に片付けます。
次に、初心者の方もいらっしゃるので古典を一席。
そのあとコーナーを用意しました。
仲入り休憩の後は、「???」です。
最後に一席、新作落語で締めます。1時間半お付き合いください。

10分ほど喋り、「人の会ならもう降りてますね」。
なにせ1時間半も喋ったことがありませんから。

今朝まで作っていたという新作。
夏なので怪談にしてみたかったんですが、怪談にすると笑いが入らないんです。
と苦労を語って。
できたばかりなんで、抜けるところがあるかもしれません。

引っ越しの準備とのことで旧友に頼まれ、自宅に呼ばれる男。
もともと控えめな(本人いわく、暗い)男だが、なんだか痩せて影が薄い。
久し振りに会ったのだが、離婚して会社クビになって入院したのだそうだ。
この暗い男は、東村山さんの低くて通る声とは異なり、わかりやすくボソボソ喋る。
暗いのに、たまにボケるのだが、誰もボケたことに気づかない人生。唯一この友達だけツッコんでくれていた。

怪談だというのだから、この旧友がもう死んでるとか、そんなベタな噺かと思ったら、全然違った。
東村山さんの高座はプークで聴いただけだが、ストーリー作りが上手い人だなと。
このネタおろしも、「引っ越しの手伝い」ならともかく、「引っ越しに持っていくものをより分ける」ために友達呼ぶなんておかしいのだ。
だが、客が違和感を持つ前に、ビックリ事象をぶつけて違和感に気づかせない。

声を露骨に使い分けるのも、珍しいほうだ。
新作だって、師匠白鳥はすべての登場人物を同じ声で演じる。
だが、「このぐらい、別にいいんだよ」という空気が演者から発せられるので、違和感ゼロ。
ちなみに声の使い分けは、ギャグである場合に限りOKだというのが私の持論。

怪談らしいのは、日本人形。
日本人形は、絶対に捨てない。俺のさくらちゃんだから。
怖いよ。夜中に歩き出すんじゃないか。
歩いたりしないよ。髪の毛が伸びるだけだよ。
ボソボソ低いトーンの噺は、驚きが入って一気に盛り上がる。

手伝いに来た男は、お焚き上げしなよと勧める。
お前の運勢が悪いのはこの人形のせいだよ。
お焚き上げってお前、さくらちゃんを燃やすことだよ。
さらに人形が出てくる。さくらちゃん6号だ。

暗い男、ちょっと待って、包丁取ってくると。
これが怖さのピークで、あとは楽しい噺。
一席終えて東村山さん、制作秘話を。そんなの語るんだ。
昨日まではもうちょっと怖かったんですけど、今朝思いついて笑いを入れました。
怖がらせるのが目的じゃないですからね。

やはり大物だなと思う。
下手な新作落語家は、一生懸命驚いたりする。私はそう思っている。
上手い人は、客を驚かせるために驚いてみせる。
見事なネタおろしでした。

続きます。

作成者: でっち定吉

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