行き過ぎた10月の反動で、11月は外出を控えている。
現場に行かないとネタには苦労します。
明日土曜は、生放送になったNHK新人落語大賞のウラで、ざま昼席落語会に遠征しようかと思っていた。雲助・ひな太郎二人会。
帰りに電車でブログ書きながら帰り、WEBポータルを決して見ないよう気をつけて、家で録画を観ようかななんて。
どうやら、家で生放送観てそうだ。
放送終了後にアップすることになりそう。
外出しないで、家で古い録画を観なおすのもそれはそれでオツなもの。
ひとつ見つけました。浅草お茶の間寄席。
TVKでは10月1日に流れたもの。田代沙織さんのインタビュー付き。
芸術協会の最新真打のひとり吉好師であるが、同時昇進のふたりと違い、披露目の高座の放送はなかった。
改めての登場である。収録はお盆の、にゅうおいらんずの芝居で、吉好師は他の新真打ふたりと交互出演だった。
新真打3人の中では、私はもともとオタク落語の吉好さんに最も興味があった。
結局披露目には行けていないのだけども。実際の高座を聴いたことも、まだない。
吉好さんが注力している分野自体にはさして興味はないが、新作落語をずっと聴いてきたおかげで、ネタの方向性は問わなくなっている。
鉄道落語の会にだって女性がたくさん集まったりするのだ。なにも不思議なことではない。
オタク落語は、「七段目」「四段目」など芝居オタク落語の伝統を引いているものだという認識でもいる。
二階ぞめきは吉原オタクの噺だし、花筏は相撲オタクの噺。
そう思えば、聴けないジャンルなんてない。
吉好師、インタビューはなんだかベテランっぽく堂々としている。
小学生からずっと住んでいる流山の魅力を語る。
小学生の頃は不便な土地だったけども、いまやつくばエクスプレスで浅草演芸ホールに一本だと。
沙織さんが、秋葉原にも行けますしねと振る。
12月に流山おおたかの森でもって、真打披露の豪華な番組があるらしい。ゲストは昇太師で、松戸の小助六師も出るそうで。
結構興味ある。
さて本編。
出囃子は、スーダラ節。以前落語協会で小せん師が使っていたみたいだが。
出囃子のCDに入っているために、落語会に行くとしょっちゅうBGMとして流されている。
その曲を実際に使う人がいるんだなと。
当日の浅草は、二ツ目、山上兄弟と出て、最初の真打の出番である。
二ツ目は、三遊亭あら馬さんだったらしい。PTA会長ネタがあったようで、それもいじる。
出番的には当然、軽い噺をすることになる。
新作で「妄想家族」。
一言でいえば、メタ落語。落語の自由な可能性を拡大するジャンル。
声だけで描きわける性質から、喋っている人間が誰なのか、混乱を与えることも可能。
そして、客を欺くことも可能だ。
このジャンルは現在、笑福亭羽光師が強い。
NHK新人落語大賞を3年前に獲った「ペラペラ王国」が典型例で、他にも「俳優」などある。
だが、羽光師は客を混乱させるため、カオスな楽しみのためにやっている感がある。
それに比べて吉好師、ずいぶんと普通に語るなという印象。
あえてややこしい噺を、普通に喋るという。
マクラは、真打になって最初に「師匠」と呼んでくれるのはかわいい女の子の前座がいいと。
こんなルッキズムに基づく見解を、堂々と語って変な感じにならないのがまずすごい。
ただ、よく考えたらうちの協会にはかわいい前座がいなかったそうで。みんなあら馬みたいな。
結婚の許しを得るために、娘の父に挨拶にやってくる男。
学歴の低い奴に娘はやらんという父親。君はどこの大学を出ている。
東大です。襟裳岬のか。今どき浅草演芸ホールでも桃太郎や寿輔しかそんなギャグは言いませんよ。
男は東大と、さらにMITを出て、会社をみっつ経営しておまけに現役の警察官だと言う。
こち亀の中川かお前は。
噺は、ほぼ細かいギャグだけでできている。大部分がベタな(そして落語好きをニヤリとさせる)。
こういうギャグ、一生懸命語るとアッと言う間に噺はグズグズになるもんだ。たまにそんなできそこないの新作派がいるが。
もちろん吉好師はそんな轍は踏まない。並々ならぬ腕前。
噺の全編にわたって、すべて冗談ですよというフレーバーが掛かっているので、全然セーフ。
ただ、それだけでは下りられない。
中盤から、噺はどんどん変質していく。
羽光師のいうところの「マトリョーシカ方式」。だが、やはり羽光師と違って普通に語り続ける。
芸協にとどまらず、落語協会の新作派と一緒に出るととりわけ楽しそうな人だ。
必ずどこかで聴きたいものです。