広告で儲けるいけすかない野郎にお仕置きを!

「気に食わねえだな」

「ああ、気に食わねえだ」

「痛い目に遭わせんべえ」

「ああ、痛い目に遭わせるだ」

「吠え面かかせてやんべえ」

「ああ、吠え面だ」

「なんだあの、江戸から来たサダちゅう野郎は」

「いけすかねえだな」

「またこれが、目元涼し気なええ男なのも気に食わねえ。おまけに筆が立ってゆうもあせんすも豊富だ。おなごどもがきゃあきゃあ言うとるだね」

「おめえ、誰かに言わされてねえだか」

「あいつの風呂具読んどるやつの半分がおなごだっちゅうでねえか」

「そりゃ、ほんまけ」

「ほんまじゃそうな。そんだけならまだええが、あいつの風呂具に載せとる寓久留の広告がもっと気に食わねえ。これで身入りが結構あるちゅう話だ」

「んだな。女だけならまだええだが、カネが絡むとおら許せねえだよ。サダの野郎、いくら儲けとるだね」

「なんでも、月に1両2朱から儲けとるっちゅう話だ」

「なぬ、1両2朱とな。ますます許せねえだな。その儲け、取り上げてやんべえ」

「そうだな。だいたい風呂具なんて時代遅れのめであ使いよってからな。わしらなんか最新の悦楠やっとるだが、まるで評判上がらんわ」

「やっぱり『人民の役に立たねえ幕府を滅ぼすべえ』というふれえずが世間で受け入れられてねえのかも知んねえな」

「おめえ、今の200年続く幕府をそのままにしてええと思うだか。わしらまともな思想のもんたちが戦わんでどうするだね」

「だから戦ったでねえか。体制派のサダの野郎の悪口書いたら、あいつの風呂具に吊るしあげられただ。わしら最先端の悦楠ゆうざあが、風呂具なんぞに吊るしあげられるとは到底納得いかねえだ」

「まあ、それはおめえが吊るしあげられるようなことを気軽に書くからじゃがな」

「ともかくわしらが生まれついてのまとも。わしらに逆らうやつはみなクソ。自明の理だね。なのにサダと来た日には、わしらを侮りおって、むむ。また怒りが込み上げてきたべえ」

「考えただ。あいつの風呂具は、寓久留の広告で成り立ってるだね。だから、寓久留の広告を載せられないようにしてやんべえ」

「そげなことできるだかね」

「できるだね。寓久留の広告は、たっぷしたら儲けが上がる仕組みだ。わかるか」

「うんうん。わしなんかサダの風呂具ちぇっくするときは、最新の注意を払って広告さわらんようにしとるがね」

「違うだな。わかるか」

「なんだね。サダの風呂具でもって、広告をわざわざさわるっちゅうことかね」

「んだ。さわれるだけさわってやんべえ。おさわり大サービスだ」

「んだなことしたら、サダのふところガッポガッポになんべえ」

「それでええだ」

「ええわけねえだね。どういうこんだ」

「広告さわるのは、自然でねえといけねえんだ。わかるか。なちゅらるちゅうことだな」

「ん。わしらは不自然にさわるっちゅうことか」

「そうだな。さわれるだけさわりまくってやるだ。いやじゃちゅうのを無理やりさわる。不自然の極みだね」

「不自然になると、どうなるだね」

「寓久留の広告が止まるだよ」

「ほんまけ」

「ほんまじゃ。寓久留狩りっちゅう秘伝じゃ。寓久留はいつもちぇっくしてるだから、不自然に多いさわりまくりがあれば、いったん広告止めるわけじゃ。サダがさわろうが、わしらがさわろうが関係ねえ」

「そうなんじゃな。よし手分けしてやんべえ。これも全部社会正義の実現のためじゃ」

二人が悪い相談を続けております。

いっぽう、こちらは当のサダさん。

「あれえ、今月の風呂具の広告、絶好調だな。1日だけで、1か月の売上を超える1両2分が計上されちゃったよ。やっぱり俺の風呂具はいつも大人気だね。最新の江戸の落語事情がウケたかな。それともあのネタ記事の、『三遊派と柳派の違い』がウケたかな。マジメに調べに来た人は怒ったろうけどな」

サダさん、広告収入が増えて喜んでおります。

また別の日。

「あれえ、今月霜月はついに3両の売上を突破しちゃったよ。それだけじゃないよ。晦日の今日だけで1分1朱の売上だよ。これを入れたら今月3両と1分1朱か。ちょっと悪い予感もしてたけど、こりゃもう、俺の風呂具の力みたいだな」

うはうは言っております。また別の日。

「月が替わって師走になっても昨日だけで1分の売上だ。すごいね」

ヒュン。

「あれ、寓久留さまからの矢文が届いた。なになに。商品の広告配信は、無効なとらふぃっくの問題により現在制限されています。あ、ほんとだ。俺の風呂具に寓久留の広告が出なくなってる!

ああ、やられた。寓久留狩りに遭っちまった。俺の人気と売上げを妬む界隈の人間が仕掛けたな。クッソー。人気のおかげじゃなかったんだな。情けねえぜ。

寓久留からのお仕置きは長いと1か月だ。1か月の売上1両1分と1朱が消えちまったぜ。

いや、待てよ。よく考えたら、寓久留狩りのおかげでもって、先月の霜月の売上が3両と1分1朱。嫌がらせで増えた売上が、1両3分と3朱か。

てことは、今後1か月まるまる制限が掛かったとしても、売上増えたわけか。なんだ。くりすますぷれぜんとだな。

といっても、広告が復活してもう一度やられたら致命的には違いない。今のうちにぷらぐいん入れて対策講じておこう。まあ、今回は儲かったな」

 

※ 犯人は想像ですが、ほぼ実話です。

 
 

作成者: でっち定吉

落語好きのライターです。 ご連絡の際は、ツイッターからメッセージをお願いいたします。 https://twitter.com/detchi_sada 落語関係の仕事もお受けします。

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