加害芸人、スポーツ選手を赦すべきか?

松本人志御大のことはまだ書かない。
ひとつだけ触れておくと、あの人がテレビから消えても別にいいやと。
なにも、嫌悪感肥大による感想ではない。
松本は(相方だってそうだが)、現役の演芸プレイヤーではないので、消えたところで私の脳内演芸地図は書き換わらないのだ。
別にテレビバラエティを下に見てはいないが、あくまでも私の演芸好き感性からはそうなる。
また別の理由もある。
すでに新年この方、松本番組は観ていない。
これまた、嫌悪感をつのらせてではない。
すでにバラエティの王様は、死んでしまったからだ。
スポンサーが離れるかどうかに関係なく、もはや笑うことができない。

今日は以前から考えていたネタを重ね気味に出す。
きっかけは芸人でなく、バウアー、山川穂高。

鳴り物入りでDeNAにやってきたバウアーは、日本でも想定通りの活躍を見せた。
野球の実力で測るなら、実にグレイト。私だって、彼が投げるときには注目した。
日本では紳士であり、親日家であり、頭脳派投手として見られることに成功した。
直接目にしていない評判は取り上げにくいこともあるが、ともかくスキャンダルを無視または軽んじることで、ようやく精神的にこの選手を受け入れることができる。

比べると山川は、あまりにも赦してもらえなさすぎる気はする。
取材の際の対応がよくなかったのはある。
こういう失敗を見ると私は必ず、光市母子殺害事件を思い出す。
死刑制度の支持が高い日本では、特になにもなくても死刑判決は出ただろう。だが、結論を導いた決定的な要素は、犯人が外部に出した反省のかけらもない手紙が世に出たことだったと、私は信じているのだ。

話がそれ気味だが、それにしても山川は赦してもらえない。
不起訴になった以上、「彼は犯罪者ではない」という擁護があって不思議ないのに、出ない。
「再起のチャンスを与えよう」という王会長まで悪者になりかねない勢い。
私は山川を赦すべきだと主張するわけではないが、バウアーと評価が違いすぎ、バランスを欠く気はしている。
バウアーには誰も裏切られていないが、侍ジャパンの山川には裏切られた感が消えないのだろう。
私だって、選手としての山川に好感しか持っていなかったので、世間に同意はする。

そして芸人。
上方落語界ではセクハラ裁判があった。すでに和解で終わってるんだろう。
被害者はその後、一切表に出てきていない。
加害者は活動し、東京にも進出してきている。一度ツイッター(現X)でもって、世間の中傷に怒りを表明したと記憶する。
被害、加害は便宜上であるから念のため。
加害芸人にどう向き合うべきかというのが私の課題。まだ大きな存在ではないが。
裁判の原因を、私は知らない。世間もまた。
だが、同意のない行為があったという点で、山川穂高に似ているようだ。
知らない以上は、なかったものにするしかないのだろうか。
この芸人を聴きにいくと、性犯罪の間接的加害者だろうか。
といって被害者の心境を慮ろうにも、材料がなさすぎる。

性犯罪とはちょっと違うが、愛人をボコボコにしたのが、桂春蝶。
当ブログでも書いているが、普通に活動しているのが気にいらない。
そして、気に入らない人の落語は、聴いてもやっぱりダメ。
だが、これについても受け入れるべきだろうか。あくまでも、私の精神的な気持ちの問題。

桂雀太師はこのたび喜楽館アワードで優勝した。
この人はもう、赦さざるを得ない。
やらかした程度は比べようもなく軽いのだが(桂二葉さんのNHK優勝を、放送前に世間に広めようとした)。
この人は落語が半端なく上手いので、ちょっとイヤなモードで聴いていても、感服してしまった。

性犯罪ではなく、いじめの犯人が、立川幸弥。
いじめにより、芸術協会を追い出されたレアな噺家。
その後、梶原いろは亭のハウス前座という極めて異例な形から、二ツ目に昇進した。
やらかした具体的な中身など知らない。記録しておくものじゃないし。
この人を前座で聴いて、ああやっぱりダメなんだなと思った。
ところが日を置かずして二ツ目昇進後、ずいぶん上手くなっていたので驚いた。兄弟子たちより上手いんじゃないかと思ったぐらいだ。
本当に急に上手くなったわけではなく、こちらと合ったかどうかのほうが大きいだろう。それは理解しているが、でも印象としては急に上手くなった。
そもそも聴き手の「嫌い」のモードを突き破るのは、実に大変なのだ。

この人はもう、落語界の片隅で頑張っていることを許容せざるを得ない。
今でも芸人をしている被害者もいるわけだが(やめた人もいるようだ)、だからといって知らない事実に同情するのも難しい。

山川のごとく期待を裏切られたというと、やはり三遊亭圓歌か。
この人は芸風的に、再度好きになるのは難しそう。

まあ、結論なんてなんにも出ません。
春蝶についても、徐々にちゃんと聴くモードに替えていかねばならないかと思う。

固い話なので余談で締める。
テツである息子から聴いたが、山川の事件が報道された際、西武鉄道のライオンズラッピング電車が運用から離脱してしまったそうである。
まあ、そりゃそうだろうが、新シーズンに用意したばかりのラッピングだったのに。
しばし車庫で留め置かれたまま、山川を剥がし、今井に替えてようやく運用を再開したのだそうだ。
いろんなところに迷惑を掛けるのだなあ。

作成者: でっち定吉

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