梶原日曜寄席(上・三遊亭好志朗「野ざらし」)

東京の外れにある梶原いろは亭、最近やたら出向くようになった。近所でもなんでもないけど。
平日、土日問わずよく行く割に、寄席形式の席は初めてだ。梶原日曜寄席。
出演4組、私の大好きな人ばかり。
実力派の真打1人、二ツ目のホープ2人、人気の漫才1組。
所属は落語協会、落語芸術協会、円楽一門会とバラエティに富んでいる。
実際、期待どおりの素晴らしい席でした。
いろは亭は時としてスゴい。

やたら暑い日なので、少しでも近い上中里から。
選挙はすでに行った。
だいたい期日前に済ませてしまうが、一度やってみたい投票行動がある。
午後8時直前に投票所に行き、投票した瞬間、各局速報で当確を出すという。
なにが面白いのかわからない? ならいいです。

野ざらし 好志朗
あくび指南 小はだ
(仲入り)
宮田陽・昇
崇徳院 鯉橋

出歩いてはいけない日だが、それでもつ離れしている。
各演者とも暑さはネタにしていた。

香盤順らしく、トップバッターは三遊亭好志朗さん。
立派なおじさんだがキャリアは浅い。
浅いがさがみはらも獲った腕達者。
神田連雀亭にも加わったので、今後コンスタントに聴いていけそう。

マクラを8分。
時事を入れ込み、街で観察した人々のネタを入れ込み、ジワジワ盛り上げていく。
芸人時代のネタづくりが生きているのでしょう。末高斗夢こと錦笑亭満堂師と違い、芸人時代のネタは知らないのだが。

上中里から歩いてくる際に、自転車の中国人女性2人が口論しているのを見た。
ひとりはびっちり日除け対策。ひとりは何もしていない。
インチキ中国語で口論を再現。だが最後に相手に腕カバーをあげて、もらったほうが「謝謝」。
実は最初から喧嘩なんてしてなかったみたいと。
用意してるネタを場所にあてはめるのが見事。

本編は野ざらし。12分。
12分とは? NHK新人落語大賞の持ち時間である。
これは、狙ってるな。
トロフィーを受け取る好志朗さんの姿が目に浮かぶ。
ひとりキチ○イ噺の進化系だ。

寄席のトップバッターが野ざらしとは。でも、マクラが前座噺の役割を果たしている。

本当にちょっとしたところなのだが、腕を感じた部分が。
八っつぁんが先生に「後ろ向いてみな」。このとき、私も後ろ振り返りそうになった。

野ざらしは近年流行ってはいない。昭和元禄落語心中があってもなお。
なぜ流行らないか、妄想がキツ過ぎるから。そういうことになっている。
でも本当はちょっと違うのでは。
この噺の好きな私だが、流行らない理由を想像してみた。

  • 「コツを釣りにいく」行動そのものが、客にピンと来ない
  • 八っつぁんの行動原理の前に、行動自体腑に落ちない
  • 八っつぁんみたいな男が現実にいたらいやだな、とどこかで思ってしまう

お菊の皿との違いはこの部分ではなかろうか。
お菊さんの楽しいショーなら、みんな見たがるわけだ。それに、面倒な登場人物は出てこない。

ではどうするか。八っつぁんを調子のいい、軽い男として描けばいい。
好志朗さんの描く八っつぁんは、鬱陶しさがかけらもない。本当は壁に穴を平気で開け、先生の大事にしてる釣り竿勝手に持っていき、人の釣りを妨害する実に困った野郎なのだけど。
このあたり、だいぶ意識してるのではないかな。
ひどいことばかりする八っつぁんだが、被害側の描写がほとんどないのだ。

あとは、噺にアクセントをつけ過ぎないことか。
「つかつかつか」も軽くツッコむ。

八っつぁんは序盤から飛ばしていく。
脅かされて先生の財布をねじ込む場面はしっかり描写する。
一瞬たりとも、普通の人間として行動する部分がない。これも、実は珍しいと思う。
一般市民の行動パターンには一切降りてこないので、不快感が生まれる瞬間もないのだった。
テンション高いままの浮かれた八っつぁんが、だんだん心地よく映りだす。

このやり方には思わぬメリットがあった。
釣り竿持って妄想にふける八っつぁん、これがひとりキ○ガイの部分だが、ずっとテンション高かったのでまったく違和感がないのだった。
なるほど。八っつぁんを普通に描いてしまうと、ギアを上げた際に違和感を生むらしい。

序盤から緻密に計算して作り上げた八っつぁんのサイサイ節は、とても楽しい。

細かいクスグリも多く入れる。噺のアクセントをつけない代わりでは。
カラスを八っつぁんが「ボラの卵巣」とボケる。そりゃカラスミだ。
この手のものがいくつかあったが忘れた。
ウケ狙いだったら逆効果だろうけど、オリジナルギャグもなにしろ軽い。

自分の顔釣っちゃった後、オリジナルのサゲ。
NHKの審査だと、オリジナルクスグリやオリジナルサゲは効果高いだろう。

圧巻の野ざらし。

続きます。

 
 

作成者: でっち定吉

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