野方グリーンホール寄席の柳家花いち2(上・鰻屋)

新しい仕事をめぐりムシャクシャ。
ストレスは落語で解消しにいかねばなるまい。
木曜日のカレンダーには、亀戸で兼好主任とある。
兼好師に不満などない。七代目圓生が(決まってないけど)1,200円で聴けるのだからありがたい席。
でも、ストレスリカバリーの点ではもっと緩い、ぬるい人がいい。
東京かわら版をめくったら、ノーマークの会発見。
環七沿いの野方グリーンホールで、柳家花いち師。
コロナ禍においてはまるでなかった、葬祭場の落語会だ。

もう5年前に一度来た。当時は花いち師も二ツ目。
客の婆さんたちがそれは賑やかで、おしゃべりもやめないので閉口し、二度と来ないと決めていた会。
でも、この日の気分に花いち師こそピッタリ。
日曜に赤羽岩淵で花いち・志ん橋(志ん松改メ)・遊京の会があり、そちらに行くつもりだったが繰り上げる。

高円寺で仕事してから歩く。午後4時からの会。
おかげさまでまあまあ涼しい。5年前は8月で、へとへとになった記憶がある。
情報はかわら版にしか載っていない。月曜の阿佐ヶ谷みたいに、行ってみたらなかったらどうしよう。
でもちゃんと建物正面に、落語会の告知もあった。
木戸銭1,300円。以前は1,000円だったと思うが、今でも二ツ目の会は1,000円なのだ。真打価格みたい。
客は5人だった。5年前は30人ぐらいいたのに。
多分浸透しきってないのだろう。開演後ひとり来て、6人。

ちなみに嫌なことのあった仕事のほうだが、仲入り休憩時にメールが届いていた。
トライアルの仕事に批判的なコメントを散々付けられた上に切られた、と認識していたが、採用だった。
なんだツンデレかよ。
ともかく、仲入りまでは強くストレス解消を望んでいたのだった。
このあと既存の仕事のほうでちょっといいことがあった。
花いち師のおかげだ。勝手にそう思っている。

鰻屋
いいからいいから
(仲入り)
茶の湯

花いち師は本当に粗忽エピソードの多い人だが、さっそくメクリを返すのを忘れる。
「野方グリーンホール寄席」のメクリのまま始めてしまう。
こういうの親近感を覚える。
お客さん、前回も5人でしたとのこと。
いつもの方ばかりですねと。いつもの方に、でっち定吉も入っているのだろう。

お客さんひとりのときもありました。
最初は聴いてくださるんですけど、なにせ1対1だと疲れてくるみたいで。

私24日が誕生日でした。42になりまして。
びっくりしますね。バカボンのパパよりひとつ上ですよ。
それからわからないと思いますけどスラムダンクの〇〇監督よりも上ですよ。
兄弟弟子のグループLINEがあるんですが。
勧之助アニさんが、今日は花いちの誕生日だ。みんなお祝い言おうって書いてくださって。嬉しいですね。
ところがその後丸一日、メッセージが付きませんでした。既読なのに。
翌日になってようやく緑助くんがおめでとうございますって書いてくれました。

誕生日みたいな話のときは拍手が礼儀だが、ご本人があまりにもさらっと話すので、他の客含め叩きそびれた。

私は浜松出身です。
二ツ目のときは、地元の会ってそんなになかったんですよ。
真打になると、真打がなんなのかはよくわからないみたいですが、なんだか増えました。
浜松来てください。駅前でうなぎの匂いがしますよ。

少ない客になんとかアジャストして、鰻屋へ。
だがこの噺は正直ピンとこなかった。
職人がいないとうなぎが裂けず右往左往する鰻屋を見て楽しもう、といういかにも江戸っ子のシャレの利いた骨格が、演者に合わないのかもしれないなと思った。
花いちさんのは、悪いシャレより先日タダで酒飲ませてもらった埋め合わせの感が強いけども。

私は花いち古典が好きなのだが、まず世界を支配する語り手がユニークである点が楽しいのだと思う。
語り手が若干ズレていて、登場人物のズレが膨らむのが花いち古典。
だが鰻屋に関していうと、ズレとズレとが相殺し合ってしまっているかも。ちょっとしたズレが埋め込まれている噺だから。

それでも地に足のついていない登場人物たちが楽しいし、クスグリもユニークでだんだんと盛り上がってきた。

一席終えて、脱いでいた水色の羽織をなぜか着なおす花いち師。ちゃんと羽織の紐も結んで。
鰻屋という噺でした。このにゅるにゅるする手の仕種が好きで。
二席目は新作。マクラはなに振ってたかな。おごることだったっけ。

一度聴いたことのある「いいからいいから」。
被るのはまったくイヤじゃない。
この噺のために、羽織を着なおす必要があるのだった。

続きます。

投稿日:
カテゴリー: 日記

作成者: でっち定吉

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