2月16日日曜日はABCラジオで「上方落語をきく会」。
出かけていたので、戻って夜席の生放送を聴き、昼席をタイムフリーで聴き。
でも、べらぼうと御上先生見たいので、そんなには聴けず。
べらぼうは今週も実に面白かった。最近当ブログの「地口落ち」の記事に検索訪問があるのだけど、べらぼうからだと思う。ありがた山の寒からす。
ところでしくじった。上方落語をきく会の昼席を聴きながら寝てしまい、全部再生されて、時間オーバー。
タイムフリーの配信自体は今日月曜までなのに、昼席がもう聞けなくなってしまった。トリの米團治師聴いてない。
まあ、またなみはや亭で順次流れるでしょう。
先にひとつ触れておく。
昼の月亭方正師「御神酒徳利」は良かったと思う。バカっぽさが。
文珍師に教わっていながらやたら枝雀っぽいのはさておき。そしてご本人は米朝一門。
方正師に限らないが、落語の実力を知りたい検索で、私のブログにもアクセスがある。そして決して褒めてはいない記事にたどり着く。
しかしでっち定吉も、評価を常に悪いほうに固定しているわけではない。常に更新しているのだが、褒めたほうにたどり着く人は少ない、というかほぼいないのだった。
特定のブログひとつだけとっても、目に見える情報は非常に偏っているのでご注意あれ。
笑福亭松喬師は、「あんま炬燵」。
こんなのもラジオで流れる時代。
大好きな喬太郎師の「按摩の炬燵」もあまり好んで聴けなかった私だが、松喬師の描き方ならいいなと思った。
これはもう一度聴かないと。
昨日聴けた中でいちばんよかったのが夜席の桂南天師の「壺算」。これから聴き直して、明日取り上げようかと思っている。
さて今日の本題。
閉場中の国立劇場でファッションショーが物議 ネット賛否「伝統芸能が使えないのおかしい」「良いのでは」(スポニチ)
国立劇場そして演芸場、閉館したまま入札不調で建て替えもできないままである。
建設業界を取り巻く環境悪化が直接の原因であろう。
個人的には仕方ない気はするが、それでも現に劇場が塩漬けになっていることを批判する層はいて、それ自体はやむを得ないだろう。
だが今回の物議はいささか違う。
平常したはずの国立劇場で持ってファッションショーが開催されたというのが、古典芸能(主に歌舞伎)関係者に物議をかもしているのだ。
「ユニークベニュー」と銘打った企画で、この目的は国立劇場の公式サイトにも書かれている。
古典芸能関係者からは、我々の仕事を奪っておいて、何の関係もないファッションショーかよという怒りが聞こえてくる。
ちなみに同じ立場にあるはずの噺家は、今のところなにもこのニュースに関して述べてはいないようだ。
落語界だって、あったものがなくなって困ってはいる。
それでも本質的に違う点がある。都内には寄席四場があり、もともとそちらのほうが国立演芸場より格上の存在。
そして、従来の10日間興行が5日間になってしまったとはいえ、内幸町ホールその他で国立演芸場寄席は引き続き開催している。
仕事を奪われたままだと憤る歌舞伎の人とは立ち位置はだいぶ違うだろう。
しかし怒りが過ぎて、ファッションショーそのものまで非難しているとしたら、もはや尋常じゃないと思う。
我々の聖地をくだらん企画で汚しやがってという怒りが、同調する古典芸能ファンからも寄せられている。
そもそも、別の業界の人が一生懸命やっている舞台の価値から否定するようでは、どうかしていると言わざるを得ない。
こんな態度はあまりにも傲慢過ぎると思って。ファッション業界の人たちに失礼だし。
ここまで傲慢な発想は、伝統芸能とはいえ、落語好きにはそもそも生まれづらい気がする。
私も内幸町ホールに行ってきたばかり。ここは国立本場よりは小さいが、落語会の実績も多数あって、寄席として使っても違和感はほとんどない。
その会場だが、アイドルのライブにだって使っている。それに怒るのなら滑稽だ。
まあ東洋館の前身がストリップ小屋だったりして、大衆芸能というものはどこまでも卑俗さをまとっているのだ。
設備が古くなって、芝居ができなくなっているが、別の用途でなら使えるからそれを埋めた。
先行き不透明な中、国立劇場も努力しているんだなという感想を持ったって不思議ではないと思う。
いや、努力が足りないのだと声を上げるなら、決して間違ってはいないと思うが。
このまま非難は変な方向にまで伸びていくのだろうか。「ホテルなんかいらない」とか。
いや、国立劇場としてはホテルはもう諦めてると思うけど。
歌舞伎の関係者とファン全てが同じテンションで憤っているとは思わない。
大物役者が声を上げてもいないので、温度差はあるところでしょう。
ただ、本気で喧嘩したくなったら、エスコンフィールド方式でやって欲しい。
つまり国立劇場が、札幌市の持つ札幌ドームのようでなってないと感じ、愛想を尽かすのなら、自前で建てるしかない。
幸い歌舞伎は、文楽のごとく(悪く言う気はないのでご容赦)完全に国の庇護に置かれた芸能ではない。歌舞伎座という立派なハコも持っている立派な存在である。
国(独立行政法人だけど)に向かって、我々は日本の伝統を守る崇高な芸能だ、我々をないがしろにするな、今すぐ手厚く庇護せよと迫るのは、どうも分裂症状の気がしてならない。
基本的に歌舞伎ほどのものを民間でやっていること自体がスゴすぎるんですよ。
欧州は一般的にこのような芸術。しかも古典芸術は基本は国営で日本だけが特殊なのです。
文楽なんか客の半分は外人です。歌舞伎も実に外人が多い。客層が固定化している日本より外国人の方が日本文化に関心を持っているのではと思うほどです。
歌舞伎をよく見ていればとわかるのですが建物自体がセリ上がってくるなんて大仕掛けなんて代替劇場ではまず出来ない。その他にも歌舞伎を演ずる上で演出に必要なものも出来なかったりします。
日本は独自の文化を持つ文化大国なのにこういうものはじめ文化や施設に金を出さない不思議な国家です。
公的美術館や博物館も雇用人員が欧米の1/3以下です。勿論、人員不足なのですが予算を付けてくれないのでそうなるしかなくしかも年期期限付きの非正規雇用者ばかり。博物館の館長の半数が非正規雇用なんて日本くらいなものです。
実は情けないほど文化への理解のない国なのです。
話を戻すとまだ建て替えの予定が立たないのなら決まるまで通常通り再開させていればファッションショーやったところで文句はそう出なかったと思われます。
現実問題、例年の邦楽関係の大型の催し物は現在ジプシー状態で場所の確保に大変苦労しているのが実態なのにどういうわけだと。しかも悪いことに本来の使用目的の邦楽とは全く関係ないということで騒ぎになったのだと思われます。