鈴本演芸場12 その2(春風亭百栄「今どきの作文」)

続いて古今亭菊太楼師。この師匠を最後に聴いたのは、ブログ始める前である。
10年前かな。
池袋下席は若手の抜擢をする寄席だが、そこでトリを聴いた。残念ながら、大工調べの啖呵でつまづいちゃった。

プログラムチェックしてもムダですよ。今日は代演で、私菊太楼です。
龍玉さんは今日は出ません。

演目は長短。駒治師の激しい噺の後にはよろしかろう。
さん喬師から来てるのだろう。さん喬師は先代圓菊に噺をかなり教わったそうで、お返しに圓菊一門に噺を伝えるのは全然不思議なことではない。
たださん喬師と大きく違うのは、気の長い長さんが、本当にゆっくり。
二つに割った饅頭のどちらを食うか、さん喬師の3倍ぐらいたっぷりやっている。
これだけたっぷりやって客についてこさせるのは大したものだ。客もいいのだと思う。

ただし、長さんのセリフ回しはさん喬師よりスピーディ。いかにもゆっくりに喋るが、本当はゆっくりではないのだ。
ちなみに先代小さんの芸談だが、長短の長さんは、セリフと所作とをズラすと、必要以上にゆっくり喋らなくてもスローモーに見えるんだそうで。

続いては「民謡」というジャンルで、橘之助師の弟子、立花家あまねさん。
私は初めてだ。
「あまね」は本名だそうで。本名もひらがな。名字は非公開だけど。
高卒で入門して6年、独り立ちして2年だそうで。
なんと23歳。光輝いている。

ビジュアルもいいが、唄が上手くてびっくりした。
お母さんも民謡をやっていたのだと語るが、それにしても上手い。
現在の芸も寄席で引っ張りだこだしいいのだけど、あまねさんに浪曲やって欲しいと思うのは私だけだろうか。
浪曲界を救える逸材だと思った。
というか、噺家でも講談師でも、23歳というのはほとんどまだデビューもしてない年齢であるから、今からなんだってできるでしょうけども。

仲入りのひとつ前という重要なポジションに、春風亭百栄師が入っている。
古今亭の芝居なのに。一門以外を代表して顔付けされているのがももちゃんとは、実に不思議だ。
私は大好きな師匠だが、鈴本だと手を抜くことがあるのが心配。
いや、本当に手を抜いてる意識なんかないだろうし、そんな人は寄席の最高峰である鈴本にたびたび入れてもらえたりしない。
とはいうものの、実際に完パケ漫談に遭遇するとガックリする。
現に昨秋、喬太郎師の芝居だったのに完パケ漫談で、満足度が大いに下がってしまった。
お願いしますよ。

最初の3分、いつもの「日本一汚いモモエ」をやるのもわからない。
池袋だったらやらないことも多いわけで。
ヒザ前の馬石師が、毎日来ている方もいると語っていたが、その人たちは毎日日本一汚いモモエを聴かされてるのだろうか? さすがに仲入り後(幕見券が出てる)からか。
ももちゃんとしては、いろいろ探ってるのだろうけども。

いつも「ももえの上に屋号亭号というものがありまして」。
以前から、噺家につくのは亭号だろうよと思っていたのだが、「あたしは亭号のほうで」と言うところを見ると、「柳家」や「林家」は屋号なんだということみたい。

「名人の噺は脳に良くない。アタシの噺が脳にいい」もやる。
その後完パケ漫談でなくてよかった。ごく軽い噺ではあるが、満足度は高い。
「今どきの作文」である。現場では聴いたことはないが、浅草お茶の間寄席で聴いた。
もともと芸協新作だと思う「生徒の作文」の中身をそっくり入れ替えた作品。
先に出た駒治師も、同じ方法論で生徒の作文をやっている。

扇子を作文として読み、しばしば放り投げる所作の繰り返しがたまらない。

生徒たちの作文を、先生の友達が読ませてもらう。
作文は4種類。こんな内容。

  • お誕生会
  • 黒板消し係
  • 給食
  • 肉(バカの作文)

お誕生会に招かれた際の、お宅の料理をレポートする女の子。名前は岸朝子。
「ご相伴に預かる」などみやびな言い回しを多数使うが、料理と飲み物のマリアージュに気を遣わない友達のお母さんを糾弾する内容は辛辣。

黒板消し係「薄井ひろし」は影が薄くて、先生からもしばしば忘れられている。
先生の筆圧の強い字が消せないので、休み時間遊びに行けないかわいそうな生徒。
自分の存在も消してしまいたいと締めくくる。

3人目が最大のウケどころで、妄想癖の強いドSの生徒。
給食係の女子に対し、「もっとよそえ」と命じ、睨まれながらも屈服させて満足な少年。
お腹が痛くなって保健室に行き、今度は保健の一之瀬ゆうこ先生に対し妄想を膨らます。
作文読ませてもらう友達が、先を読みたくなってくるのがたまらない。
作文の作者は千草忠夫。お茶の間寄席では笑いが上がってたが、今日のお客はスルー。

4人目は肉大好きだというバカ生徒。
作文の話題がどんどん変わる。
サゲが新しくなっていて、「この子の父親、林家木久扇なんだ」。
たまらなく面白いし、この噺をアクセントを付けず淡々と読み進めるももちゃんも好き。
講談師が釈台叩きながらやったら、アクセント付くけど面白そう。

1人目の「岸朝子」も面白いのだけど、料理の鉄人にも出てた岸朝子さん、亡くなってもう10年だって。
そろそろ替えないといけないのだろうな。

雲助師の芝居なのに、2日続けて新作落語をブログのタイトルに持ってきました。
もちろん古典も面白いのです。

続きます。