林家たい平の息子咲太朗二ツ目昇進し「平」の付かない名前になった衝撃

5月21日から落語協会は二ツ目昇進が2人。同じ一門であり、どちらも父と同職業。

  • 林家咲太朗(たい平門下。前座時はさく平)
  • 林家ぽん平(正蔵門下)

咲太朗さんは、知らなかったが本名である。田鹿咲太朗。
本名を名乗る噺家というと、三遊亭一太郎? 噺家と言えるかどうかは別にして。
あといたっけ? 「民謡」というジャンルの色物、立花家あまねさんも本名だが。

咲太朗さんの高座は聴いたことがない。きっとお父さんについて地方に出かけることが多かったのだろう。
ぽん平さんは前座に成り立ての頃二度聴いている。
当時、「ぽんぺい」なのか「ぽんへい」なのか、調べる手段すらなかった。
今だと落語協会の香盤、芸名のふりがなはおろか、本名まで書いてあるのだが。
ぽん平さんはぽんぺいです。火山灰に埋まった街に掛けてあるのだろう。
ぽん平さんは正蔵師の次男である。長男はたま平。ともに、世にも珍しい四代目の噺家。

咲太朗さんは本名だが、「朗」の字を使った噺家自体はいる。
三笑亭夢太朗師に、三遊亭好志朗さん。
SNSで書く際に間違えやすいので気を付けましょう。
あと「楼」もいます。これは格上の名前。

さて、咲太朗という、林家の一門なのに「平」が付かない名前が誕生した。結構衝撃を受けている。
林家といっても、二種類ある。
八代目正蔵(彦六)系と、初代三平系。
現在の正蔵師は、初代三平の息子であり、当然こちらの系統。
八代目が、「小さん」になりたかったのに小三治が五代目小さんとなったため、釣り合う名前を強引に海老名家から借りてきたのが発端である。
七代目正蔵は、初代三平の父であった。この人が、四代続く噺家一族の始祖となる。
爆笑王・初代三平が亡くなった後で正蔵はこの名前を海老名家に返して彦六になった。
彦六は海老名の林家に遠慮があったので、弟子には春風亭や橘家を付けていたのだが、しまいのほうの弟子はなぜか林家であった。
これが、「林家九蔵」事件の遠因でもある。

ともかく林家には二通りあって、初代三平系が本家。
彦六系の林家(木久扇・正雀・彦いち・きく麿等)は、本家の許しを得て名乗っているような格好になっている。

本家林家は、おおむね名前に「平」がつく。そして、前座の頃から、昇進しても名を変えないのが普通。
変わった方針ではあるが、名前は自分で大きくするものだといえば、確かにそう。
笑点の人気者、たい平師を見ればよくわかることだ。

この一門で、「平」が付かないのは次の人だけだった。

  • 正蔵
  • たこ蔵
  • つる子
  • なな子

正蔵師は襲名だから当たり前。元の名はこぶ平。
たこ蔵師は、正蔵襲名後に真打に昇進し、その際にたこ平からたこ蔵になった。
その後の弟子も蔵になるのかと思ったら、ならない。
つる子、なな子は女性なので平が付かないのは当たり前。

現在林家の真打は、源平、種平、かん平、鉄平、しん平、錦平、のん平、うん平、とんでん平、しゅう平、三平、たけ平、はな平、まめ平と並ぶ。
もちろんたい平師も。
それから、林家ペー先生もいる。

当然、さく平さんもそのままの名前だろうと思っていた。
ところが平を外した。
たい平師によれば、笑わせる芸風でないのでということである。
しかし、それしきの理由で、平を外したとするならむしろ衝撃なのだ。

ここには、たい平師とおかみさん海老名香葉子との静かなる対決があると見るのは私だけか。
もちろん、二ツ目昇進と、名を変える報告に、たい平師ともども出向いているのは間違いない。

たい平師がかつて、おかみさんと師匠こん平とに、笑点レギュラーを三平に譲り渡すよう詰められたというのは有名な話。もともと師匠のピンチヒッターだったので。
もっとも、ゴシップ的なニュースに出るぐらいの話であり、私も100%これが真実だと思ってはいない。
しかし現にそのあと、三平師は、ゴリ押しでレギュラーになった。
笑点史上最低のメンバーとして今に名を残しているのはご案内の通り。

三平が座布団に座った直後は、たい平師もパスを出していた。
しかし末期になると、昇太師と同様、まったく相手にしなくなった。
現代社会では正しい態度だと思う。六代目円楽(楽太郎)のように、心配している体でいじめるよりずっと理にかなっている。

ともかく、たい平師はおかみさんに対し非常に含むところがあるのは間違いない。
謝楽祭などでは、おかみさんをdisる歌を歌ったりしているようで。この一部は聴いたことがある。
そういう背景からして、「平」外しはうなずけるのである。
林家九蔵にケチをつけたおかみさんだけに、「平」が付かない名に不服を申し出たとしても、おかしくはない。
ただもう、たい平師に言っても仕方ないと諦めているのではないかと。

息子が真打になる際は、亭号も変えるんじゃないだろうか。
かつて「林家九蔵」が好楽一門に誕生するのを絶対に認めなかった海老名家が、「一門なのに林家を名乗らない」という策で復讐される日が来るかもしれない。

関係ない話で締める。
当ブログの「つまらない落語家ランキングだと?」という記事に多くのアクセスがあった。
どうやら、大相撲中継に正蔵師が出たのが原因らしい。
そこから「林家正蔵 実力」などのワードで検索したみたい。
こちらの記事では、私は正蔵師を悪く書いてはおりません。

(追記)

現・錦笑亭満堂の「三遊亭とむ」さんも本名ですね。末高斗夢。
あと灯台もと暗し。林家あずみ先生も本名。安曇。